皆さんは「ポリアモリー」という考え方をご存知だろうか。複数の人と同時進行で恋愛関係を築くことを指すこの言葉。一夫一妻を基本とする日本では様々な形で議論を呼んだものの、当事者がメディアに露出する機会も増え、最近では徐々に浸透しつつある印象がある。シェアハウスに住む岡田健太さん(仮名・34歳)は自らをポリアモリーであると打ち明ける。
◆常に他人と一緒にいたい…「一人の時間はなくていい」
「僕の場合、恋愛対象が一人だけではないんです。『一人に対する愛情』と『複数に対する愛情』に優劣はなく、みんな同じように愛しています」
新たに出会う女性には、自分がポリアモリーであることを伝えた上で付き合うのが本人なりの誠実さだという。
「たくさんの人と付き合ったら疲れないですか?」と尋ねると「人間が好きなので疲れません。自分は常に人といても大丈夫なタイプなので、一人の時間はなくていいんです」と彼は爽やかに微笑んだ。
◆3人で川の字になって寝ることも
岡田さんは、最近までシェアハウスでポリアモリー生活を謳歌していたようだ。
「遠距離恋愛の彼女と付き合っていたのですが、別れた後はその友達のA子さんと付き合うことに。その時は自分が住んでいるシェアハウスにも、B子さんとC子さんという2人の彼女がいたんです。ちなみにB子さんとC子さんは友達同士でした。お互いがどう思っていたのか、本当のところは気になるところですが、同じ部屋で3人で川の字になって寝ることもありましたね」
筆者の感覚でいうと、彼女の友達に手を出すのは御法度のようにも思える。しかし、岡田さんはあくまでも「相手と自分」の関係性を重視しているため、友達同士だからといって遠慮することはないのだと、持論を述べる。
「一時は同時に3人と付き合っていましたが、仕事が多忙で余裕がなくなってしまい全員と別れました。それから時が経ち、A子さんが都内に上京してきたタイミングで再び付き合うことになって今に至ります」
A子さんは岡田さんがポリアモリーであることを了承しているが、他の誰と恋愛をしているのかまでは耳に入れたくないのだという。
一方、B子さんはその後シェアハウス内の別の男性と付き合ったとのこと。「異性と出会うきっかけが見つからない」と悩んでいる人は、男女がひとつ屋根の下で暮らす空間に勇気を出して飛び込んでみるべきなのかもしれない。
◆外国人女性と婚姻関係にあった時期も
実は岡田さんは結婚していた時期がある。
「学生の時に出会った外国人の女性と26歳で結婚しました。幸せを感じていましたが、『残りの人生、一人との関係だけでいいのかな』とどこかで思っていました。当時は『他の人との可能性を期待している自分はおかしいのだ……』と悩んでいて。自分がポリアモリーであることに気づいたのは28歳。ある時、話のはずみで友達が存在を教えてくれて、しっくりきました」
隠し事をするのはよくないと、岡田さんは離婚されても仕方ないという覚悟で当時の奥さんに自分の思いを打ち明けたそう。すると、時間はかかりつつも奥さんは岡田さんの意向を理解してくれたようだ。その後、岡田さん夫婦は数年間海外を放浪していたが、旅の途中に奥さんが母国でやりたいことを発見。離婚してそれぞれの道を歩むことに。
2人は今でも日常的に連絡をとっているという。距離は離れていても、お互いを大切に思う関係性は変わらない。
◆口説き方は「普通の恋愛と変わらない」
それにしても、事情を伝えた上で複数の女性と一度に付き合えるなんて大したものだ。なぜそんなに相手を惚れさせることができるのか。岡田さんは一体どういう女性を口説くのだろうか。
「普通の恋愛と変わらないですよ。可愛いなとか、性格がいいなと惹かれたら『あなたの時間をください』と自分からグイグイ行きます。その方が話が早いので。でも『結婚したいから』とか、『他の人に嫉妬しちゃうから』といった理由で振られることもありますね」
最後にこれから結婚の可能性はあるのかと質問してみた。
「今は結婚自体に必要性を感じていないのでピンときませんが、付き合う時は全員と結婚してもいいと思って付き合っています。なるべく長く付き合いたいですし。特に結婚しないことに固執しているわけではありません」
ありのままの自分をストレートに伝えて、それを受け入れてくれる人を探すというストロングスタイルを貫く岡田さん。
型にとらわれない恋愛を謳歌する者もいれば、枯渇した非リア人生を闊歩する筆者のような者もいる。この違いは一体何なのだろうか。一人分くらい出会いを分けてもらいたいものだ、としみじみ考えた次第だ。
<TEXT/おせりさん>
―[奇妙な男女関係]―
【おせりさん】
下北沢に住む32歳。趣味はポーカーとサウナ、ホラー映画鑑賞。広告代理店・制作会社を経てフリーランスのブロガー兼ライターに。婚活ブログ『アラサー女の婚活談義』と生きることをテーマにした『IKIRU.』を運営中。体験談の執筆を得意としている。X(旧Twitter):@IKIRUwithfun