日本に住んでいる方であれば、誰しもが人生で一度はお賽銭を投げたことがありますよね。

【動画】専門家が解説「なぜ自然の水場に硬貨を投げてはいけないのか」

お賽銭と同じように、「ここに投げ込めばご利益がある」とされている池や水槽を観光地で見かけたことがある方も多いのでは無いでしょうか。

しかし、自然の水場にコインを投げ込むことは、生態系に大きな悪影響を及ぼすといいます。

硬貨を自然の水場に投げる行為の問題点

京都女子大学名誉教授を務める小波秀雄教授は、自身のXアカウント(@konamih)にて「自然の水場でこれはやめて欲しい!」とコインの投入をやめるように促す投稿をしました。

ご家族との旅行で岩手を訪れた小波教授は、日本有数の鍾乳洞である龍泉洞にて写真の光景を目の当たりにしました。

龍泉洞はいくつもの深い地底湖を持つ珍しい鍾乳洞で、人気観光スポットでもあります。

コインが投げられていたのは、観光客が集まる入口付近に位置する「亀石」と呼ばれる大きな石です。

付近には、コインの投入をやめるよう呼びかける看板も設置されていました。

ではなぜ、自然の水場にコインを投げ入れてはいけないのでしょうか。

小波教授の説明によると、コインから溶けだした金属が周辺の生態系に影響する危険があるからだといいます。

金や白金以外の金属は水に反応し、水中に溶けだします。

これは電気を帯びた粒子として金属のイオンが流れ出ている状態で、いわゆる「錆び」が発生します。

日本の硬貨は1円玉がアルミ、5円玉が銅と亜鉛、10円玉が銅、100円玉が銅とニッケルで出来ているので、水に溶け出しやすい性質を持ちます。

特に銅は生物にとって影響が大きく、錆がナメクジ予防に使われることも。

したがって、自然の水場にコインが投入され長い年月をかけて金属イオンが水中に溶けだすと、その周辺に住む生物に悪影響を及ぼす可能性があるのです。

一口に「生態系への影響」といっても、そこには様々な視点からの問題が考えられます。

今回、小波教授が重点的に言及したのが「固有性の保護」です。

生態系はそれぞれの環境に合わせた異なる成り立ちをしているため、地域ごとの特性があります。

しかし、異なる地域に生息する生物の持ち込みや、金属の投入・放置等、人工的な変化が起きると、その生態系の固有性が失われてしまいます。

生態系の固有性はそれ自体に価値があるだけではなく、地理学の研究にも寄与しているため、積極的に保護しなければならない、という考えがここ10年で研究者界で広まったそうです。

実際、龍泉洞の事例は亀石が入口付近にあるため、洞窟に流入する水に及ぼす影響は極めて小さいといいます。

しかし、洞窟の奥深くの地底湖にて動揺の投入が行われている可能性や、他鍾乳洞での同様の事例も考慮し、小波教授は警鐘を鳴らすために投稿をしたといいます。

「ポストしたのは、「何故投入してはいけないのか」を合理的な説明の元に理解させ、行動の変容を促すためです。

立て札としても、投入してはいけない理由を書いた方が効果あると思います」とコメントしました。

夏休みもいよいよ幕開け、山や海など自然を楽しみに行く方も増えると思います。

むやみにコインや金属等の人工物を自然界に投入しないよう、くれぐれもご注意ください。

出典:@konamih