11日に閉幕となるパリオリンピックでは、意外なあるスポットが人気を誇っている。それは、聖火台だ。
◆気球に乗った聖火台
気球に乗った形でデザインされた聖火台は、現在チュイルリー公園の噴水の中心に据え置かれている。直径7メートル、高さ30メートルという大きなものだが、そのデザインはシンプルで、その分聖火の炎が引き立つ。といっても、実際にはこの聖火台には本物の聖火は乗っていない。炎のように見えるのは、強力なLED照明と霧状の細かな水の粒子がなせる業だ。考案者のマチュー・ルアナーは、この解決策にたどり着くまで3年を要したと語っている。(TF1、7/29)
聖火台は、気象条件が整っていれば、毎晩日没と同時に地上60メートルの高さまで宙に浮く。そのさまは、1783年にモンゴルフィエ兄弟が、フランスで有人飛行に成功した熱気球を彷彿させるようでもある。空に浮かぶ光る気球とパリの各種モニュメントの組み合わせは写真映えすることもあり、開幕以来多くの画像がSNSに投稿されている。
◆11万人分の見学枠が24時間で埋まる
日中にチュイルリー公園に安置された聖火台を間近に見るにはネット予約(無料)が必要だ。15分間に300人と定められた見学枠は11万人分あったが、希望者が殺到し、24時間ですべて埋まってしまった(レクスプレス誌、8/6)。
あまりの人気ぶりに、新たな見学枠が設けられ、パラリンピックの終わりまで据え置かれることが決まった。
◆保存を希望する声の高まり
オリンピック後は通常撤去される聖火台だが、考案者のルアナー氏は早い段階からその保存を希望していた。パリ市長や文化大臣宛の嘆願キャンペーンサイトも開かれた。これを受け、パリ市長イダルゴ氏、イル・ド・フランス地域評議会会長のヴァレリー・ペクレス氏、アタル首相らも保存の希望を口にし、マクロン大統領も8月2日になって「検討してみる」と発言した(ル・ポワン誌、8/6)。
保存のための安全策など検討すべき点は多く、まだ確定していないものの、現在メディア上の議論は保存場所を「どこにするか?」という点に移ってきている。今置かれているチュイルリー公園に残したいという声は大きいが、ペクレス氏は5日、代替案として北方19区のラ・ヴィレット地区を挙げたところだ。(フランス3、8/5)
◆パリのモニュメントへの仲間入り?
実はこういった大きなイベント用に建設された後、そのまま保存されたモニュメントはパリに複数ある。よく知られるように、エッフェル塔はフランス革命100周年にあたる1889年にパリで催された万博博覧会のために建設されたものだ。また、今回オリンピックでフェンシングやテコンドーの会場となったグラン・パレや、自転車ロードレースのゴール地点となったアレクサンドル3世橋は、1900年のパリ万博博覧会のために建てられたものだ。
気球に乗った聖火台がこれらパリの定番モニュメントに仲間入りするかどうか、楽しみなところだ。