夏休みに“小学校の先生”は何してる?「8月はずっと休みでOK」知られざる実態とは

 教員のブラック過ぎる労働環境が問題になっていますが、教員の服務については、何も悪いことだけではありません。そのうちの一つが夏休み。教員は夏休みがめちゃくちゃ長いです!

 子どもたちが学校に来ないので、授業をする必要がないからです。だからといって、仕事がゼロなわけではありません。今回は、小学校で10年間働いていた私が、小学校の先生の夏休み事情についてお話していきます。

※小学校の場合です。中学校は部活指導などがありますので、結構違うと思います。

◆教員は夏休みとボーナスを楽しみに働いている

 労働環境やストレスなど、様々な問題がある教員ですが、それでも多くの人が辞めない理由。私は、夏休みとボーナスが魅力的だからだと思っています。首都圏の多くの小学校では、2024年度の夏休みは7月20日(土)~8月25日(日)です。

 土日含めて37連休!この期間、ずっと休めるわけではないですが、少ない人でも16連休はできる環境です。夏季休暇と年次休暇を取得して休むので、給料は満額出ます。

 仕事をせずに給料がもらえる、大変うれしい期間なのです!逆に、普段は熱が出てもおなかが痛くても休めない職業なので、ここでバランスをとっているのかも知れませんね…

◆先生は夏休みに何してる?教員の夏休み中の業務

 おおまかなイメージですが、7月中はフル出勤、8月に入るとみんな一斉に休暇に入ります。お盆の閉庁期間以外は、日直が一人いますが、ほとんどの教員は長期の休暇を楽しんでいます。7月の業務は以下の通りです。

・職員作業

・水泳指導

・夏祭り地域巡回

・研修

・成績所見

 次ページから、詳細に説明していきます。

◆職員作業は灼熱に耐えながらの力仕事


 職員作業では、大型荷物の整理などを行います。たとえば図工準備室や社会科準備室の片付け。普段からこまめに片づけておくべきなのですが、なかなかできないのが現状なので、夏休み中にみんなで片付けます。

 数年前に卒業した誰かの作品や、二度と使わないだろうなっていう大型地図、平屋建ての家の模型…全部捨てます。毎年捨てているのに、まだ出てくる…不思議です。体育倉庫は特に大型のものが多く、男性職員が担当することが多いです。

 さらに、職員作業は暑さとの戦い。準備室は普段は使わない上の階にあることが多く、とにかく暑いので、みんな汗だらだらで重いものを4階から1階のゴミ捨て場まで運びます。何往復もするので、職員作業が終わったらヘトヘト…気が利く校長の場合、アイスのご褒美があります!

◆それ、本当に必要?学校主催の水泳大会

 7月の最後に、近隣の数校が集まって水泳大会が行われます。そのための準備や指導も一苦労。泳ぎの指導はもちろん、タイムを計ってレース順を考えたりリレーのメンバーを選出したり、事務作業が結構多いです。

 泳ぎの苦手な子が泳げるようになって、大会で完泳したときはこちらも感動しますが、タイムを競うのが大会なので、当然ながら入賞するのはスポーツクラブに所属している子。

 大会があれば1日つぶれるし、大会のための指導なら半日つぶれ、午後から疲れて仕事になりません。学校主催の水泳大会の意義は何なのか、分からないまま指導している先生も多い気がします。

◆夜も仕事です…夏祭りパトロール


「これって教員の仕事なの?ランキング」常に上位なのは、夏祭りの地域巡回。

 学校の周りで開かれるお祭りがいくつかあり、そのどれかに必ず参加しなければなりません。目的は地域の安全確認と、地域の偉い人へのご挨拶。

 お祭りで気が大きくなっている子どもたちも、先生の目があれば悪いことはできませんから、結構効果的みたいです。1時間くらい過ごした後、同僚と飲みに行くのが毎年のルーティンでした。話題は「お祭りパトロール、絶対私たちの仕事じゃないよね」でしたね(笑)。

◆用意される200以上の研修。参加はマストではないが…

 夏休みは研究会や研修が多いです。7月に入ると、いろんな研究会から案内が来ます。学校の研究会が主体で、学校に講師を招いて行われる研修もあれば、自分の得意分野や勉強したい内容に合わせて選ぶ研修もあります。

 私も毎年4つ以上は参加していました。授業に直接役立つものから、教養を高めるものまで、本当に様々な研修があります。今でも心に残っているのが、視覚障がい者の方が通う施設での研修でした。

 4年生の国語の教科書に「点字」がテーマの単元があるからです。その教材の指導法ではなく、視覚障がい者の生活そのものについて直接話を聞くというものでした。

 このように、つながりがあれば何でも研修のテーマになるので、夏休みには200以上の研修が用意されています。やはり、熱心な人が多いからですかね…。

◆普段はできないから…成績表を作っておく


 夏休みのうちに、子どもたちに渡す成績表の所見(コメント)を仕上げる先生もいます。

 夏休みが一番落ち着いて、自分の仕事を進められるからです。多くの学校では2学期制を取り入れていて、成績表を渡すのは10月上旬。逆算すると9月上旬までに所見を仕上げておきたいところです。

 4月から7月までの記録があるので、それを見ながら書けばよいのですが、40人学級の担任になると所見を書くのも大仕事です。そのわりに保護者って、先生の所見ってあんまり気にしていないんですよね。大事なのはAの数…がんばって書いたのに…と思うこともありました。

◆日々の激務を乗り越えられるのは夏休みのおかげ

 7月の仕事をなんとかこなせば、教員の夏休みが始まります!長期で旅行に行く人もいれば、普段できない「何も考えずに一日ぼーっと過ごす」に徹する人もいます。

 夏休みに思いっきりリフレッシュできるからこそ、日常の激務をなんとか乗り越えられるのだと思います。他の公務員ともかなり違う教員の夏休み。その実態が少しでも伝われば嬉しいです。

【あや】

勤続10年の元小学校教員で、現在は民間企業人事部に勤める。会社員・副業ブロガー・Webライターの三刀流で働きながら、教員の転職・副業・働き方改革について発信中。「がんばる先生を幸せにする」のがモットー。X(旧Twitter):@teach_happiness