過酷な夏を迎え、日々の水やりに苦労していたり、植物が健やかに育つのか心配を抱えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。そこで今回は、土の保水性を高め、水やりの労力を軽減しくれる素材「吸収ポリマー」を活用した水やりの新情報をご紹介。解説者は、分類の垣根を取り去った植物セレクトで話題のボタニカルショップのオーナーで園芸家の太田敦雄さん。植物と人にもやさしく、サステナブルな水やりについて解説していただきます。

温暖化する酷暑の水やりを軽減させる救世主「吸水ポリマー」

温暖化と熱帯化が年々深刻な問題となっている近年、今年も夏がやってきました。この時期、私たち植物に関わる人々にとって日々の心配事にあがるのが”水やり“。そこで今回は、土の保水性を高め、特に真夏のガーデニングにおける健やかな植物の育成と水やりの労力を軽減しくれるソリューション素材! 吸水ポリマーの特性や使い方などについて解説します。


水を含ませた状態の吸水ポリマー。

地球規模の気候変動や温暖化が進み、日本でも2024年の真夏の尋常ではない酷暑が続いていますね。

また、夏に限らず、関東地方の冬など季節によっては全く雨が降らない時期が長く続くこともあり、庭の土壌も乾きやすく、園芸植物がかつてよりもロングライフには生き難い環境になってきているのを、園芸家・植栽家である私も近年強く感じています。


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特に酷暑期の庭の水やりは重労働でもあり、園芸家のみなさんも庭の植物を枯らさないように、夏場のお出かけが制限されたり、以前にも増して水やりの頻度や水量が増えているのではないでしょうか。


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水やりが少なくてもよい植物選びとして、アガベやユッカなどの乾燥地系素材を多く植えるというのも一つの解決策ですが、その場合、植物の選択肢が狭まって、植栽にオリジナリティを出すのが難しくなったり、自分が育てたい植物を植えていないというデザイン的に消極的な状況に陥りやすいです。


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自分では工夫したつもりでも、どこかで見たような「ドライガーデン的」な庭になってしまった、なんてことはありませんか?

そうした庭が好きならもちろんいいのですが、もっと自由で幅広い選択肢の中から植物を選んで、楽しく創造的に、そして植物にも環境にもやさしいガーデニングライフを謳歌したいものですよね。

そこで、今回は、私の店「ACID NATURE 乙庭」でもポット苗の用土や植栽工事などで実際に活用している吸水ポリマーについて紹介します。


吸水させる前の有機ポリマー粒材。

私が植栽設計を担当させていただいた現場などでも、長く雨が降らない期間には、普通なら枯れるとは考えにくい性質の強い庭木などでさえも渇水で枯れたり弱ることもあります。そうした経験から試行錯誤した末のソリューションとして、生分解性の有機吸水ポリマーに辿り着きました。

上写真は私が2024年に植栽設計を担当した、西部池袋線 石神井公園~大泉学園駅間の鉄道高架下に開園した「PLAY! 高架下広場」の植栽です(建築設計:武田清明建築設計事務所)。

雨の降らない鉄道高架下という植栽難度の高い場所の土壌保水改善策として、吸水ポリマーを使用しました。暑さも厳しくなってきた6月の施工時に播いたダイコンドラの種子なども、小さい芽からスクスクと成長してグラウンドカバーになっています。

吸水ポリマーは、気候変動下の日本のガーデニングや植栽にとても有益な素材だなと手応えを実感しています。ガーデニング好きな方々の夏の庭づくりの参考になれば幸いです。

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砂漠の緑化や乾燥地の土壌改良にも使われるお助け素材「吸水ポリマー」

吸水ポリマーは、土が乾燥し過ぎて植物を植えても定着しにくい砂漠を緑化するためにも使用される、土壌保水力を高める素材です。


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主に高分子化合物で構成され、非常に高い吸水性を持つ素材。自重の数十倍から数百倍の水を吸収して溜め込む能力があります。これにより、乾燥した土壌でも水分を長期間保持することができるのです。


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農業や園芸苗の生産分野でも使用されており、家庭園芸でも使用できる少量ロットの製品もあります。石油原料の合成ポリマーだけでなく、植物原料由来で生分解されて土に還る有機ポリマー製品もあります。


AnEduard/Shutterstock.com

ネットショップなどでも手に入るので、ぜひ検索してみてください。