中華の力強く多様な味わいは、少し複雑みのあるお酒の方が柔軟に受け止めてくれるもの。
いま、工夫を凝らした創作中華にナチュラルワインを合わせるというのがスタンダードとなっている。
ワイン好きの大人デートにもおすすめしたい、ラフでお洒落なイマドキ中華をご紹介!
1.大人な“恵比2”で早くも存在感。ワイン×中華の新しき聖地となるか
『岡飯』@恵比寿
クラシックを飲みなれていても満足な、フランス銘醸地の綺麗なナチュール
恵比寿と広尾の中間地点にオープンしてわずか4ヶ月。早くもナチュラルワイン好きの間で噂を呼んでいる店がある。
「料理に化学調味料を使わないのでワインもナチュラルなものにしました」と『岡飯』の店主兼ソムリエ・岡本さん。
オーダーを受けてから包む焼売、台湾や香港を思わせる優しい料理はナチュラルワインと深く寄り添う。
上から時計回りに人気の「焼売」¥400。手でたたいてミンチにする粗挽きの豚肉にしいたけ、パクチーなどが入っている。
みんな大好きなエビチリを春巻きに包んだ「エビチリ春巻き」(¥500)は、この手があったかと膝を打つ楽しいアイデア。ロゼやオレンジワインとの相性抜群。
名物メニューの「中華風クレープ」¥500。ノスタルジックな台湾の味をイメージしたという点心風のクレープ包み。
中華バーガー風の「スペアリブのパオ包み」¥700。とろとろに煮込んだスペアリブとねぎやパクチーをふかふかの蒸しパンと一緒に味わう。
「油脂に負けないアルザスのオレンジ、シェリーや紹興酒のニュアンスがあるジュラの白は中華と相性がいいんです」と白やオレンジ推し。
クラシックからワインに入ったこともあり、ナチュラルワイン特有のクセは控えめ、透明感のあるワインが主力だ。
ナチュラルワインはまだ勉強中と謙遜するが、セラーには通がそそられるボトルも並ぶ。そのセレクトに手を貸しているのはナチュラルワイン界でちょっと知られた友人のソムリエという。
ボトルワインはセラーからゲストが自由に選べるのも魅力。絶品つまみのあるワインバーとして使うのも贅沢だ。
【STAFF’S VOICE】
「『渋谷のんべい横丁』で店をやっていたこともあり、一体感のある店を目指しています。お客さん同士の繋がりも楽しいですよ」
2.飲茶とワインを小粋に楽しむ、気張らない空気が洒落ている
『Winolog』@広尾
クセの少ないイタリアのナチュールを合わせるこなれ感
今年3月に広尾商店街の脇道にオープンした『Winolog』は、香港で暮らしていたオーナーと共同経営者が、現地の飲茶カルチャーとナチュラルワインを合わせたいと作った店。
料理長は広東料理歴30年、本場香港で腕を磨いた皆川浩正さんだ。その経験と“ワインの良さを引き出す中華”というテーマが出合って生まれる料理が新しい。
例えば樽感あるシャルドネに合わせる点心は、珍しい「魚の小籠包」。バターでソテーした鯛とカマンベールを皮に包めば、ぐっとリッチになった鯛がワインの華やかな香りを際立たせる。
上から時計回りに、ズワイ蟹の足の周りに海老のすり身をつけて揚げた「海老のカダイフ」¥1,540、蓮根の上にのせた「帆立の豆鼓ソース」、腸詰や筍が入った「黒もち米の広東風おこわ」。
奥は鯛を使った「魚の小籠包」、南瓜の皮で包んだ「ラム肉餃子」、金華ハム入りの「豚肉の焼売」、皮の透け感が秀逸な「海老蒸し餃子」。すべて¥660。
その他の料理はすべて¥9,900のコースより。単品でもオーダー可。
そんな驚きが続くから、初見はコースを頼んでワインはソムリエに任せたい。
「ナチュラルワインの中でもみんなに親しみやすいワインを」とソムリエが提案するのは、イタリアを中心とした自然派らしい優しさや風味が生きる銘柄だ。
その味わいが繊細で品のある広東料理にぴったり寄り添う。
すべてがカジュアルかつハイセンスゆえ、気張らないデートに最適だ。
【STAFF’S VOICE】
「気軽に楽しんでほしいので、料理とワインはいずれも手頃な価格で!がモットーです。デートの会話も弾む雰囲気ですよ」
3.代官山で中華とワインなんて、感度高き夜になるに決まってる
『ダイカンヤマパンダ』@代官山
繊細さを追求するシェフによる料理には、そっと寄り添う自然派が合う
ナチュラルワインと中華の代表格といえる店がある。
場所は八幡通りの裏手にある複合商業施設「sarugaku」。感度の高いワイン好きな大人たちで賑わう『ダイカンヤマパンダ』だ。
入店すると目に飛び込んでくるのは、壁一面のワインセラー。
中を覗けば、人気の造り手や入手困難なボトルのナチュラルワインがずらりと並ぶ。
実はこちら、神泉のイタリアン『エンリコ』の姉妹店。そうと聞けば、ナチュラルワイン好きの心をときめかせるラインナップにも頷ける。
合わせる料理は、仏料理の名店『レフェルヴェソンス』出身の店主・北村卓也さんによる、フレンチの要素を取り入れた創作中華。
旬の食材を使った、定番中華の親しみやすさと洗練さをバランス良く奏でた逸品にグラスが進む。
例えば、「しらすとカラスミの山椒焼きそば」には綺麗な味わいのオレンジ、「鴨と葱の焼売」には南仏のスパイシーな赤を合わせて。
ビストロ感覚で、フランス産を中心としたナチュラルワインと中華の相性に開眼する夜を過ごせる。
【STAFF’S VOICE】
「最近話題の東欧ワインもラインナップしてるので、是非お試しを。店内には“隠れパンダ”がいるので見つけてみてください」
4.町中華に自然派というギャップも、渋谷では日常に
『LUCKY ALEXANDER CHINA』@渋谷
流行の発信地であるこの街では、ナチュールもジャケ買いが作法
神宮前で人気の『THE GREAT BURGER』のオーナーが手掛ける『LUCKY ALEXANDER CHINA』は昨年5月、松見坂にオープンするやいなや瞬く間に人気店に。
テーマは“次世代に繋ぐ新しいスタイルの町中華”。
「豚肉餃子」や「麻婆豆腐」「海老チリ」等、誰もが好きな定番メニューをそろえるが、単なる町中華と違うのがナチュラルワインと合わせられることだ。
グラスは赤白オレンジ、すべて¥1,045とお手頃。ボトルはキャッチーな絵柄が多く、それは新鋭の造り手のサインであったりもして、ご機嫌なムードが漂う店内にもよく合う。
焼きたての餃子をかじって肉汁を感じ、すかさず冷えたオレンジを飲めば、果実感と繊細なタンニンが肉の旨みを引き立てる。
マリアージュはそれぞれあるが、ここでは仲間と好きに料理を頼み、気軽にワインを試して飲み語らうのがいい塩梅。
「ナチュールはやっぱり気楽で楽しい」と思わせてくれる、等身大の最旬町中華なのだ。
【STAFF’S VOICE】
「アメリカのチャイナタウンをヒントに店を作っています!店のロゴが入ったグラスや器の底の“幸運”の字にも注目してみてね」
5.舌の肥えたタワマン住人が推す、日本食材とワインの大人な融合
『hugan』@月島
クラシックな飲みごたえのフランス自然派に開眼する
メニューに並ぶ食材は、ヤイト鰹、桜エビ、岩中豚など。
店主の鶴岡久也さんは、毎日月島の店からバイクで豊洲に通い、旬の食材を創作中華に昇華させる。
奥はネギ油が香るビーフンにカラスミを削った「自家製カラスミ冷製ビーフン」¥2,800。味わい軽やかで、器からも清涼感が漂う。
手前は行者にんにくの醤を加えた辣油で和えた「ヤイト鰹のお刺身」¥1,400。
チリソースと茄子を合わせた「穴子のフリットチリソース」¥1,800。
「ラム肉の回鍋肉」は、ラムチョップのローストに回鍋肉のソースを添えたひと品が供されて驚くが、これも『hugan』流。
ソースと和えないことで肉単体を味わうことが出来て、味変しながらボルドーの赤を合わせるのも楽しい。
ナチュラルワインは豊富だが、「ナチュラルに造ってながらもクラシックな味わいのものが多いです」と鶴岡さん。
自家製辣油で和えた鰹にイタリアの土着品種ネピオーロを合わせるなど、3ヶ国の個性が融合する瞬間も醍醐味だ。
なじみ深い食材も手伝い、普段は“クラシック派”な大人たちも必ずや満足するだろう。
【STAFF’S VOICE】
「遅い時間に餃子やよだれ鶏をおつまみに、ワインを楽しむ方もいます。当日でもぜひぜひ、お気軽にお問い合わせください!」
▶このほか:いま、台湾クラフトビールの人気がすごい!この夏は香り高い生ビールで乾杯しよう!