グラウンドカバープランツとしても優秀な「クラピア」
そしてもう一つ、より誰もができる雑草対策として、グラウンドカバープランツによる雑草対策も取り入れています。グラウンドカバープランツとは地面を這うように広がってくれる植物で、さまざまな種類があります。代表的なものは芝生やリシマキア・ヌムラリア‘オーレア’などですが、芝生は密に生えそろうまでに雑草のタネが落ちて数年は除草作業が必要ですし、リシマキアはかんかん照りの場所より少し日陰を好みます。そこで近年、重宝しているのが「クラピア」です。クラピアは暑さに強く日向でよく育ち、小さな丸い葉が重なっているので雑草が入る隙を与えません。芝生より早く生育して広がるので、新たなグラウンドカバープランツとしてさまざまな施工現場で活用しています。
グラウンドカバーとしてクラピアが優秀な理由の一つに、クラピアが日本の在来種から品種改良され、タネを作らないよう開発されていることも重要な点として挙げられます。クラピアによく似たヒメイワダレソウ(リッピア)という植物がありますが、こちらは外来種で旺盛に繁殖するため、日本では「生態系被害防止外来種リスト」に指定されています。ヒメイワダレソウはタネが飛んでいってしまうため、仮に農作物を作る田畑にタネが飛んで旺盛に繁茂してしまったら、とても厄介なことになります。雑草対策には、このように雑草化してしまう可能性のあるものはNG。植物には種類によってそうしたリスクもあるので、近隣への配慮もしながら選ぶ必要がありますが、クラピアは人がコントロールできるので安心して使えます。
また、浜名湖ガーデンパークはすぐそばに海があるため、クラピアが塩害に強いということもポイントです。海が近くにあるエリアでは、台風がくると海水を巻き上げた暴風雨の影響で、庭の植物が塩害によって枯れることがあります。そのため、台風の後にはホースの真水で洗い流すなどの作業が必要になることがありますが、クラピアはもともと沖縄の沿岸に自生しており、塩に強いため安心して植えられました。
白い花が咲いたクラピア。
さらに、クラピアは管理の面も芝生と比較し、楽なのもよい点です。緑の絨毯のような芝生は植えれば勝手にできるわけではなく、むしろ植えた後の管理が肝心。芝生は刈り込むことで分枝し、密に茂って絨毯のようになるため、生育が始まる春から2週間に1回、そして生育が旺盛になる夏には1週間に1回芝刈りをするのが理想です。一方、クラピアはシーズンに1回の刈り込みで十分緑の絨毯状になります。春から夏にかけては1cmくらいのクローバーに似た可愛らしい花を咲かせ、一面の花畑のような風景を作ることも可能ですし、刈り込みの頻度を増すことで葉が小さくなり、草丈低くより緻密な緑の絨毯に仕上げることも可能です。このように、こちらの都合に合わせて管理方法が選べる点も私が気に入っている理由です。
(広告の後にも続きます)
庭づくりのアイデアを知らせる看板にも注目
クラピアについて解説した看板。文字が読めない人でも、意味が伝わるようイラストも添えた。
管理の負担を低減したり、暮らしに合わせて選択できるようにすることは、デザインや植物のセレクト次第で可能になります。特に年々、暑さが厳しくなる夏の管理を減らすことは、今後ますます課題になっていくでしょう。こうしたガーデニングの知識や技術を訪れた方にお伝えし、自宅でも活かしてもらえるように、ガーデン内には解説ガイドの看板も要所要所に立ててあります。このアイデアは、私がアメリカ園芸療法学会の会員としてカンファレンスに参加していたシカゴボタニックガーデンから得ました。このガーデンには車椅子のガーデナーが設計した「イネイブリングガーデン」というエリアがあります。「イネイブリングガーデン」とは(不可能を)可能にするガーデンという意味です。この庭には、さまざまな障害を持った人でも庭や庭づくりが楽しめるアイデアが詰まっており、そのアイデアが看板に記され、小さなポストからアイデアメモを持ち帰ることができるようになっていました。
シカゴボタニックガーデンで「イネイブリングガーデン」を設計したジムさんと。*
シカゴボタニックガーデンからはこの看板だけでなく、ユニバーサルの機能についても大いに参考にしました。ガーデンの名前にもなっている「ユニバーサル」は、しばしば「バリアフリー」と混同されますが、バリアフリーが特定の障害を持った人へ配慮したデザインであるのに対し、ユニバーサルデザインは障害を持った人もそうでない人も、大人も子どもも性別も超えて、すべての人にとって快適であるデザインのことを指します。不特定多数の人が訪れる公園には、ユニバーサルデザインの考えが不可欠ですが、私はそれを「複数の選択肢を用意する」という手法でデザインしました。