日本は世界一の「フクロウ輸入」国、“違法取り引き”の実態も… 野生動物“消費大国”に問われる責任

野生動物が個人宅やアニマルカフェなどでペットとして飼育・展示されている現状に対して、「ペットにしても幸せにできない動物がいる」ことを周知するため、WWFジャパン(世界自然保護基金ジャパン)と国内の動物園がタッグを組んだキャンペーン「飼育員さんだけが知ってるあのペットのウラのカオ」が行われている。

2022年8月よりスタートした同キャンペーンは、絶滅、密猟や密輸、動物が保有する感染症、動物福祉、外来生物の生態系への影響など5つのリスクへの理解を高め、野生動物のペット利用を見直すきっかけにするための取り組み。これまではコツメカワウソ、コモンマーモーセット、ショウガラゴ、スローロリス、フェネック、スナネコが対象となっていたが、今年5月よりフクロウ類が追加され、計7種類の動物について、ペット飼育の難しさを訴えている。

“フクロウのウラのカオ”知るイベントに多くの参加者

8月10日(土)、同月4日に制定されている「世界フクロウの日」に伴って、東京・多摩動物公園にてWWFジャパンと公益財団法人東京動物園協会多摩動物公園によるコラボレーションイベント「飼育員さんだけが知っているフクロウのウラのカオ@多摩動物公園」が開催された。

動物園ホールで行われたイベントには、家族連れを筆頭に多くの来園者が参加。同園でフクロウ類の飼育を担当している高野葉月さん、WWFジャパン 野生生物グループの浅川陽子さんが登壇し、フクロウの生態や習性、ペット飼育のリスク、ペット化の現状について○×クイズでレクチャーした。


フクロウの生態に関する○×クイズを出題する飼育員の高野さん(8月10日 多摩動物公園/弁護士JP編集部)

その後、イベント参加者は園内のフクロウ舎に移動して、シロフクロウやメンフクロウなどへの給餌を観察。

野生のフクロウはネズミや小型の鳥などを好む「動物食」だ。内臓や骨からビタミンやカルシウムを得ることができるため、動物園でも精肉ではなくマウスやヒヨコなど野生に近い餌を与えている。実際、採食を見た来場者は、マウスを食べる様子に目を丸くしたり、「丸のみしてたね」と驚きの声を上げたりしていた。

日本は“世界一”のフクロウ輸入国だった!?

フクロウはフクロウ目に属する鳥で、世界には約240種、そのうち日本では11種が生息している。私たちにとって身近な動物とも言えるが、日本での捕獲・飼養は禁止されており、現在、販売・展示されているフクロウは海外からの輸入、あるいは国内で繁殖された個体に限られている。輸入するにしても、フクロウ全種がワシントン条約の対象種となっているため、輸出国による許可書が必須となる。

WWFジャパンの輸入取引調査の結果、1975年から2021年までに日本へ輸入されたフクロウは60種2万3788頭に上る。フクロウ人気は日本特有のもので、日本は世界一のフクロウ輸入国だというから驚きだ。

市場で取引される動物にはすべて、出生地などの由来を示す必要がある。だが、WWFジャパンが国内で展示・販売されている49種1914頭のフクロウを調査したところ、飼育下繁殖と野生捕獲を合わせて由来が表示されていたのは約半数の49.9%という結果に。輸入されたフクロウについては3%が未記載で、2012年から2021年の9年間で17件62頭が密輸など違法に取引されていたこともわかった。


「人間のために“利用”されているフクロウは国内に1000羽以上いる!?」○×クイズを出題するWWFジャパン浅川さん(8月10日 多摩動物公園/弁護士JP編集部)

フクロウ人気のウラで“お金”が動く…

フクロウがなぜ日本で人気になったのだろうか? WWFジャパンの浅川さんは「具体的な何かが影響したというより、日本のペット市場がバラエティー豊かだった一環として海外からフクロウが輸入されたこと。そして、そんなフクロウが日本人の好みに合っていたということだと思う」と推測する。

日本での野生個体の捕獲は禁止されている一方、禁止されていない外国で捕獲された野生の個体が日本に輸入されるケースも。そして、その生息地・捕獲地は発展途上国である場合も多い。

浅川さんは「残念ながら野生動物がビジネスになってしまっているところもあります。(輸出国に対して)日本側から言及するのは難しい側面があります」と語る。

飼いたいと求める人がいれば、市場も大きくなってしまう。「合法に輸入しているんだから(ペットにしても)いいじゃないかという考えもあります。しかし、消費国の責任はないのでしょうか? 最近、環境省からも国の生物多様性に関する戦略として、消費国の責任については言及されるようになっていますが、ひとりひとりの自覚も必要になります」(浅川さん)

安易な「飼育」は野生動物を幸せにするか?

野生動物はその名の通り、本来、野生で暮らす生き物。一見、懐(なつ)いているように見えたとしても、最低限の生活環境におかれて“慣れた”にすぎない。飼いたい、保有したいという人間のエゴは、果たして野生動物を幸せにするのだろうか。

飼育員の高野さんは「動物園は種を保全する目的があります。動物園でフクロウを観察してもらえれば」とコメント。多摩動物公園教育普及課の大橋直哉係長は「知らないと興味を持ってもらえないところもある。動物園で野生動物について知り、生息している環境や状況に目を向ける機会にしてほしい」と呼びかけた。

多摩動物公園では、9月3日(火)まで先のイベントで使用したフクロウに関する○×クイズをフクロウ舎付近で掲示予定だ。

「かわいいからペットとして飼いたい」ではなく、「かわいいから守りたい」へ――。この機会に、野生動物との正しい距離感を考えてみてはいかがだろうか。