元セクシー女優は“普通の仕事”に転職できるのか。転職エージェントで受けた屈辱の日々――大反響・傑作選

過去5万本の記事より反響の大きかった傑作選。今回はレアな職業から転職した人に注目する。(初公開2022年9月17日「元セクシー女優の昼職転職記」全12回中の第2回 記事は取材時の状況) *  *  *

 フリーライターのたかなし亜妖と申します。WEBコラムや映画・漫画レビュー、時にシナリオなどジャンル問わず文章を書く日々です。2016年に「ほかにやることがなかったから」という理由でセクシー女優デビュー。なんとなく入った業界で気づけば2年半が経過したところで、引退を決意しました。

 その後は何事もなかったかのようにシレッと昼の世界へ出戻り。ライターになり早4年が経とうとしています。

 前回はセクシー女優を引退するまでの話を書きましたが、今回は「元セクシー女優」という経歴を隠して臨んだ転職活動について書いていこうと思います。

◆やりたいことゼロで昼職へ転職しようとした私

 昼職に転職すると言えど、まずは興味のある職業を探さねばならない。

 あいにく私にはやりたいことがなかった。昔から夢のない子どもだったし、高校卒業後もアパレル、飲み屋のオネーチャン、撮影会モデル、セクシー女優といくつか仕事を経験してきたものの、どれも心の底から“ハマった”と感じる商売は一つもなかったのだ。

 自己肯定感がとても低いため、自分は何をやってもダメだと当時は思い込んでいたほど。他にできそうな仕事も見つからなかったから女優を続けていたのもあるが、ニートになった今、余計なことを考えている暇はない。

 そこで私は何を思ったか「やりたい仕事リスト」ではなく、「自分がしていて苦痛じゃないことリスト」を作り出したのである。

 何かをしていて嫌と感じる機会が少なければ、継続できるのではないか? そう思って書き出したところ、自分の中でピンときたのが「ブログ執筆=文章を書く」だ。

◆文章執筆は好きだっだが仕事にする気はなかった

 幼少期から漫画やアニメが大好きで、幼稚園の頃は再放送していた『らんま1/2』など、あらゆる作品にハマッていた。

 そのせいか、物語を創作したり、漫画らしきものを描いてみたり。とにかく創造するのが好きな子どもに成長。絵は全く上達しなかったが、文章を書くのだけは楽しかった。中学時代に所属していた演劇部で脚本を作った経験もあるし、作文が辛いと感じた記憶もない。

 そして、かつての所属事務所の社長に「キミのブログは面白い。文章がいいから、ゆくゆくはサブカル的な仕事もできたら面白いよね」なんて言われていたことを思い出す。この瞬間、今までモヤがかかっていた頭がクリアになり、俄然やる気が出てきた。

「文章を書いているのは苦痛じゃないから、何かそれっぽい仕事をしよう!」

 目標がかなり不透明なまま、頭の悪い私は早速動き出す。思い立ったらすぐ行動というよりかは、とりあえず始めてみて、ダメだったら次を探せばいいくらいの感覚だった。

◆転職エージェントにダメ押しされて撃沈

 執筆と言えどシナリオ作成に興味を持ったので、しばらくの間は私塾のシナリオスクールに通った。教えてもらったのは企画・構成の作り方、脚本の書き方など基本的な内容だったが、イチから基礎を教えてもらえるのは有難い。スクールで学んだことは今でも私の基盤となっている。

 先生に「斬新で程よく頭がおかしいモノを作るね」と、褒められているのか、けなされているのか分からないお言葉をいただいたが、発想力には少し自信を持てた。

 その勢いでシナリオライターを志し、転職エージェントに登録。ソーシャルゲームのライターは未経験でも入れる会社が多いとのことだったが、面接時、担当者に一発食らわされることに……。

「ご紹介できる会社は限られますね。過去の職歴がアパレルと、空白の期間が長すぎるのはちょっと。シナリオスクールに通っていると言えど、実績もありませんし」

 スペックがオワコンなのに加え、マズイ要素が複数揃うことに担当者は顔をしかめていた。

 知り合いの元セクシー女優たちも転職する際は経歴を隠す人が多く、私もセクシー女優をしていた話など口が裂けてもできなかった。ただ、その期間を無職のテイにしたのが完全に逆効果だったのだ。20代前半にしてニート歴が長いなんて、野生のナマケモノのような存在にしか見えないだろう。

 一応未経験でも応募が可能な会社を紹介してくれたが、「難しいと思いますよ」とまさかの念押し。ただでさえ重い気分に追い打ちをかけられ、もうちょっと優しくしてくれたっていいだろ! と思ったのは忘れもしない。

◆元セクシー女優で現ニート、現実の厳しさを知る

 アダルト業界は女性に優しすぎるくらい優しい。女優は完全にお姫様扱いで、男尊女卑ならぬ“女尊男卑”レベルの世界である。何をしても怒られることがまずないため、私はストレスの多い環境がすっかり苦手になっていた。

 担当者のダメ押しはあったものの、幸いにも書類は通過したので、ニートになってから初の面接に臨んだ。

 結果はもちろん、撃沈。

 30分と大幅な遅刻をかましてきた面接官5人に囲まれて、

「無職の期間長すぎませんか?」「元アパレルでよく目指そうと思いましたね」「シナリオスクール……あぁ~私塾なんですね。フッ……(暗黒微笑)」

 拷問級の時間を長々と強いられて(確か1時間半くらい)、最後はあっさり落とされた。明らかに対応の悪い会社を紹介したエージェントに不信感が募ったし、何より門前払いを喰らった事実が悲しかった。

 けれども、仮に私が企業側の人間だったら、面接にやってきた自分をどう思うだろう。謎の職歴、ニート、実務経験なし。そんな志望者を採用できるだろうか?

 身一つさえあれば学歴も資格もスキルも問われない世界に、私はもういない。現実の厳しさだけでなく、置かれた環境そのものが変わっていることを、この出来事で激しく痛感させられたのだ。

 ストレス耐性がなかったので、この一件で簡単にグレそうになる。しかし、腐っても職は見つからないし無職の事実は変わらない。そんな時、自分で見つけた求人が今後の運命を変えることになるとは……。当時の私には想像もつかないことだっただろう。

文/たかなし亜妖

【たかなし亜妖】

元セクシー女優のフリーライター。2016年に女優デビュー後、2018年半ばに引退。ソーシャルゲームのシナリオライターを経て、フリーランスへと独立。WEBコラムから作品レビュー、同人作品やセクシービデオの脚本などあらゆる方面で活躍中。