イタリアでは夏にエアコンがなくても過ごせるはずだったのだが、近年の猛暑の影響でエアコンの需要が増えている。しかし、北西部の高級リゾート地ポルトフィーノでは、景観を保護するためエアコン設置が規制されている。連日の暑さに我慢できない住民が取った行動は……。

◆エアコン設置に規制 罰金も

 イタリア北西部の風光明媚な高級避暑地ポルトフィーノで、エアコンをめぐる争いが勃発している。

 最高気温33度の猛暑に今週見舞われている人口約400人の小さな町は1935年以来、地域の国立公園の一部となっているため、エアコン設置に制限が課せられている。当局から許可を取得し、町のパステル調の景観を壊さないように、目立たない方法で自宅に設置する必要があるのだ。(ユーロウィークリー・ニュース、8/13)

 数年前まではパステルカラーの建物にエアコンを設置することは全面的に禁止されていた。しかし、夏の暑さが年々厳しくなっていくことから、当局は規制を緩和した。

 規制に違反して起訴されれば、最高4万3000ユーロ(約700万円)もの罰金を科せられる可能性があるが、ポルトフィーノのマッテオ・ヴィアカーヴァ市長は、罰金を科す意図はなく、「ポルトフィーノは国立公園の中にあるため、住民に条例を尊重してほしいのです」と述べる(ガーディアン紙、8/12)。

◆違法設置 住民が密告

 地元紙コリエーレ・デラ・セラによると、近隣住民が警察に通報し合う「報復合戦」が起きている。外付けエアコンの音や見た目に腹を立てた住民が警察に通報したり、自分たちに対する通報に報復しようとした住民が、相手の家の違法エアコンの写真を警察に匿名で送ったりしているという。

 エアコンの違法設置に関する警察への通報は1月から6月までの間に、少なくとも37件届いた。警察が7月に実施した新たな抜き打ち検査では、さらに11件の違反が発見され、主にメイン広場のラ・ピアツェッタに近い3つの通りで見つかった。そのうちの半数近くは、この夏の熱波のなか設置されたばかりとみられる。(ユーロニュース、8/13)

 警察は家のテラスに無許可で設置されているエアコンの調査を続けると同時に、住民に対して違法ユニット(なかには建物に溶け込むように塗装されたものもある)を撤去するか、最高5万ユーロの罰金を科すと注意喚起している(同)。

 一部では、地元警察が捜査の一環としてドローンを配備したと報じられたが、ヴィアカーヴァ市長はこれを否定した。また、市長は町の景観保護対策として、衛星放送のアンテナも取り締まりの対象にしていると伝えられている。(同)

◆猛暑でエアコン設置増加

 イタリアは6月中旬から連日の猛暑に見舞われている。保健省は12日、17都市に赤色熱波警報を発令した。赤色熱波警報が発令された都市では、居住者と来訪者に対し、午前11時から午後6時までは直射日光を避けるよう勧告している。イタリア国家統計局(ISTAT)が2022年に発表した報告書によると、全世帯の半数がエアコンを設置しており、エアコン需要が急増している。(ガーディアン紙)