二郎系ラーメン700軒食べたYouTuberに聞いた「今までで1番美味しかった直系」と「口に合わなかったお店」

 濃厚な味付けの濃厚豚スープに、極太の麺と茹で野菜、「ブタ」と呼ばれる厚切りのチャーシューでおなじみのラーメン二郎。港区三田に本店を構える同店は、「二郎系」と呼ばれる多くのフォロワーを生み出した。

 ラーメン二郎を全店制覇し、これまで約700軒にのぼる二郎系ラーメンをトッピング“マシマシ”にして食い続けてきた人気YouTubeチャンネル「アカボシマシマシTV」の企画・編集・出演を務めている、お笑い芸人のアカボシさん(@urawa_seijin)。

 前半はYouTubeを始めたきっかけや、現在実施中の「一度は行きたい!究極のG系ラーメンガイドブック」のクラウドファンディングの内容について聞いた。後半はアカボシさんがおすすめする二郎系ラーメンや、初心者の時の二郎系との向き合い方を聞いた。

◆直系で甲乙つけがたい4店舗

――今までで1番美味しかった直系二郎はありますか?

アカボシ:直系二郎でいうと、好きな店はM店、K店、H店、M店ですかね。M店とK店は非乳化系のスープで、H店とM店は乳化系のスープです。この4つの店舗は甲乙つけがたいくらい好きですね。非乳化系のM店は最近値上げしたんですが、ラーメン1杯を500円から600円にしただけで、ファンからは「もっと上げていいのに!」と心配されていました。

――二郎系だとどこがおすすめでしょうか?

アカボシ:まだそこまで“見つかっていない”二郎系だと足立区西新井の「麵屋 鳳」です。ここは吉祥寺にあった店舗が移転したのですが、いまだに当時のお客さんがはるばると通っているんです。あと川崎(神奈川県)にある「麺 五六」は、ややアクセスが大変ですがブタと麺がかなりおいしいですね。

 すでに有名なところだと高崎市(群馬県)の「自家製ラーメン 大者」ですね。ここはどこにも真似できないくらい個性のある麺で、生麺に近いというか、油で揚げたカップ麺のような歯応えでめちゃくちゃうまいです。わざわざ高崎まで、毎年1回は行ったことのない友達を連れて食べに行っています。

◆「パサ豚」を「ギュチ豚」に変換


――チャーシューを「ギュチ豚」と言ったりと、ラーメンの表現方法にオリジナリティがありますよね。

アカボシ:二郎系のブタは、いわゆる定食屋のお肉とは違うので、「肉肉しい」とか表現しても伝わらないので、新しい語感を作らなきゃなと思いました。ジロリアンの人たちは悪い感想を持ったパサパサなチャーシューを「パサ豚」と表現するのですが、ネガティブな響きで個人的には避けたいと思っています。赤身が多いブタを好んで食べる人もいるので、パサパサではなく、ギュチギュチしているとポジティブな意味を込めて「ギュチ豚」という言い方をしています。

――いままで食べたお店で口に合わなかったところはありますか?

アカボシ:油ギトギトで濃い味というイメージを持って食べに行くのですが、やけにあっさりとしたスープだった時にがっかりすることはあります。でも、僕の口に合わなかっただけで、お店が営業しているのは需要があるということなので悪くは言わないようにしています。他にも乳化スープの二郎系ラーメンを食べに行ったら、前に食べたときよりも乳化のパワーが弱くなっていることもあります。ただ、スープは生き物なので「今日はレアな日」だと捉えるようにしています。

◆ブタを最初に食べるのは「シズル感」を意識


――二郎系の食べ方でこだわりはありますか?

アカボシ:撮影する時の食べ方と撮影がない時の食べ方は全然違います。思うがまま食べると動画にメリハリがなくなり編集が難しくなるので、撮影時だとブタはブタ、スープはスープ、麺は麺とパートごとに分けて食べています。本当はスープから飲んで、麺をすすって野菜にスープをかけて平らげたいのですが(笑)。

――再生数を伸ばすための戦略はありますか?

アカボシ:最初に見栄えの良いブタからたべて、ヤサイを食べて、ようやく麺に到達するようにしています。ブタを最初に食べたほうが動画の見栄えとして「シズル感」が出て、食欲をかきたてて再生数が伸びます。一方で、個人的には大好きなのですが汁なし系、まぜそば系は見た目のインパクトが出ないのと、混ぜると見た目が美味しそうに見えないので再生数は伸びにくいです。人気のラーメン店でもまぜそば系をあまり登場できないのはそういう理由です。あとは最近の傾向として知名度がない店はなぜか伸びないです。直系二郎は伸びやすいので、それを軸にあまり有名でない二郎系の名店をはさむ形で、なるべくどの動画も観てもらえるように投稿しています。

――直系二郎の店は撮影NGの店が多いような気がするのですが撮影できるのですね。

アカボシ:あくまで聞いた話で真偽はわかりませんが、当初はほとんどの二郎で撮影が大丈夫だったみたいです。でも、ある店舗で無断撮影した人がいて、そこから動画NGが波及していったそうです。マシマシにしてほとんど残すみたいなマナーの悪い人も増えてきたのもきっかけのひとつです。一時は全面禁止にしようという流れがあったようですが、いまでは個別に相談して撮らせていただける店舗もあります。

◆反応があるだけで嬉しいからコメントはすべて見る


――コメントはちゃんと読んでいるんですか?

アカボシ:次の動画が上がるまでのコメントは全て読んで、なかには返事することもあります。芸人時代はSNSで何を書いてもリプライやコメントがなかったので、反応があるだけで嬉しいんです。中にはアンチコメントもあって、僕個人に向けられたものはまったく気になりませんが、お客さんやお店の悪口を言われると注意しますね。コメント欄でバトルするとインプレッションが上がるというのはありますが、どうしても許せないときは、戦わずに消したりします。

――最近はアカボシさん以外にも二郎系ラーメンをYouTubeに投稿する方をよく見かける気がします。流行っているのでしょうか?

アカボシ:やはり、見た目のインパクトとSNSとの相性は抜群だと思うので、「やってみよう」とする人たちが増えてきたのだと思います。

 ただ、最近はヤサイも、ブタも仕入れ値が高くなってきて経営が厳しくなっている店も多いそうです。今までヤサイはモヤシなどでほぼ原価がかからず提供しできていたのですが、最近はそれらの値段も上がってきて、無料でマシにするのが難しくなってきていると思います。そんな状況でも、マシマシにするととんでもない量を提供してくれる「麺や 豚髭」(埼玉県川口市)というお店があるのですが、食い切れるかが怖くてまだ行けてないんですよ。

◆クオリティで勝負するお店が増えた


――ここ数年の二郎系ラーメンの流れで変わったことってありましたか?

アカボシ:仕入れ値が上がったことで安さで勝負するのではなく、価格をあげてでもクオリティの高いものを提供しようとする店が増えてきたのは感じます。例をあげるとラーメン二郎T店はブタの質がかなり高いです。知り合いの肉屋の人と一緒に食べに行ったのですが、「かなり希少な豚の部位を使っているね」と言っていました。撮影NGで動画にはできなかったのですが。

――長年二郎を食べてきて、味覚などの変化はありましたか?

アカボシ:最近は、スープのベースに使われている醤油(カエシ)の調合に何が使われているかわかるようになってきました。カウンターにも置いてあるのでいつも飲むようにしているのですが、店によって味が全然違うんです。出来合いの醤油を使っているお店と、スープを際立たせるために配合を考えているお店と、僕でも調合できそうな醤油で作っているお店がわかるようになってきました。「これはアミノ酸が入っているな」とか。最初は全部ただの醤油だと思っていたのですが、実はいろいろな種類があるんです。

◆初めての直系二郎で「今日は帰ってくれ」


――初めて行く二郎でテンパったこと、ミスしたことってありますか?

アカボシ:YouTubeを始めたばかりの時、初めての直系二郎が嬉しすぎて友人としゃべっていたら「今日は帰ってくれ」と食べさせてもらえなかったことがありました。騒ぎすぎたのだと思いますが、次リベンジしたら普通に入れてくれました。

 あとは二郎独自のコールを間違えたこともあります。「ニンニク入れますか?」と聞かれた時に「全部マシマシで」と答えたら、マシNGのお店だったみたいで、トッピングなしで出てきました。でも次に行った時に「ニンニクヤサイアブラカラメ」と言えたら、デフォルトより増された状態で出てきました。

――二郎に並んでいる間ってどんな過ごし方をしていますか?

アカボシ:インスタの下書きやTikTokの切り抜きの編集作業をしています。一度集中しすぎて、食券を見せてくださいという声が聞こえなくて怒られたことがあります。

◆初心者が二郎に行くときのオススメは


――並んでいる最中も編集するのは大変ですね。

アカボシ:僕は2日に1回しか投稿できていないので、SUSURUさんのような毎日投稿できている人はすごいと思います。

――初心者が二郎系に行く時の心構えってありますか?

アカボシ:二郎系に行ったことがある人と一緒に行くのが一番ですね。並んでいる間に滞りなく頼むにはどうしたらいいかを聞いておいて、練習するのが良いと思います。自信がなければ「小ラーメンの少なめ」と頼んで、コールされても「そのままで」と答えてください。まずはデフォルトを楽しんで嫌な思い出を作らないのが重要です。

<取材・文/山崎尚哉 撮影/山田耕司>

【アカボシ】

1987年埼玉県生まれ。吉本興業所属のお笑い芸人。2016年からYouTubeチャンネル「アカボシマシマシTV」で二郎(系)ラーメンの食べ歩き動画を投稿している。「一度は行きたい!究極のG系ラーメンガイドブック」のクラウドファンディングを8月20日まで実施

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Instagram:@akaboshi_mashimashi

TikTok:@akaboshi_tiktok

YouTube:「アカボシマシマシTV」

FANYクラウドファンディング:「一度は行きたい!究極のG系ラーメンガイドブック / 制作プロジェクト」

【山崎尚哉】

’92年神奈川県鎌倉市出身。ライター業、イベント企画、映像編集で生計を立てています。レビュー、取材、インタビュー記事などを執筆。Twitter:@yamazaki_naoya