ワーク・ライフ・バランス(仕事と私生活の両立)が世界的に重視されるなか、日本でも個人のウェルビーイングを高めるために、仕事と私生活のバランスを見直す取り組みが進められている。その日本は、世界の中でどう評価されているのか? 日本を含む世界60ヶ国のワーク・ライフ・バランスを評価した最新の調査結果が発表された。
◆ワーク・ライフ・バランスの最も充実した国は
人事プラットフォームを提供するリモートは、世界で国内総生産(GDP)の高い60ヶ国を、有給休暇、育休、最低賃金、医療制度、従業員1人あたりの週平均労働時間、幸福度のほか、従業員の安全という新たな項目をもとにワーク・ライフ・バランスを100点の採点で評価した。
その結果、最も充実したワーク・ライフ・バランスを実現している国として、80.76の高得点を獲得したニュージーランドが選ばれた。同国の強い経済力と包括的な福利厚生制度が得点を押し上げた。従業員は32日の年次休暇、80%の傷病手当支給率、政府出資の医療補助金制度を享受。週平均労働時間は33時間、産休・育休は26週になっている。
2位はアイルランドで77.89点。従業員の福利厚生への取り組みを反映した。手厚い年次休暇や充実した医療サービスを提供し、ワーク・ライフ・バランスを実現している。
リモートは「アイルランド人に対する世界的なイメージは、温厚で友好的、カジュアルな傾向があり、その姿勢は一般的に職場にも及んでいる。ヒエラルキーはあまり重要視されず、仕事仲間同士で交流するのが一般的。家族の価値観もアイルランド文化において重要な役割を果たしている」とコメント。
3位はベルギーとデンマークで、いずれも73.45点を獲得した。ベルギーは、充実した病気休暇や包括的な医療保険など、しっかり構築された労働政策で知られている。また、包括性と多様性を重視し、健康的なワーク・ライフ・バランスを促進するための協力的な職場環境が醸成されている。
ベルギーと並ぶデンマークは、従業員に優しい政策と高い幸福度指数で高く評価されている。世界幸福度報告書では、2番目に幸福な国としてランキング。さらに経済協力開発機構(OECD)のデータでは、「非常に長い時間」働いているデンマーク人は2%しかいないことが明らかになっている。法定年次休暇は35日と定められており、最も安全な国の一つともされる。医療費・教育費無償化など、デンマークは労働者が仕事以外の充実した生活を送れるよう配慮している。
5位のカナダは、週平均労働時間が32.1時間と最も短い国の一つで、最も安全でLGBTQ+フレンドリーな国の一つとされている。しかし、有給休暇は17日とトップ10では最も短い。
リモートは、カナダ人の仕事に対する姿勢は隣国のアメリカよりはるかに進んでおり、プロフェッショナルでありながら包括的な傾向があるとコメントしている。
一方、アメリカは60ヶ国中55位で、最下位に近い。スコアは100点満点中31.82点となった。アメリカより下位にランクされたのはトルコ、イラク、エチオピア、フィリピン、ナイジェリアだった。
ニューズウィーク誌によると、人材コンサルタントのブライアン・ドリスコル氏は、アメリカが下位にランクされていることについて、「人よりも利益を優先する資本主義の枠組みが根付いているからだ」「上位にランクインしている国々とは異なり、アメリカには強固な労働保護、有給休暇、合理的な労働時間がないため、過重労働やメンタルヘルス不調が発生している」と語る。
◆日本、アジアではトップ
日本は57.61点でアジアの中ではトップ、全体では24位にランクインした。1位から23位までは、ニュージーランド、カナダ、オーストラリア(8位)を除いて、軒並みヨーロッパ諸国がランクインした。
項目別に見ると、週平均労働時間が最も短い国は、効率と自由時間を重視するオランダ、イラク、エチオピアとなった。最も従業員が休暇を取りやすい国は、イラン、クウェート、アルジェリア。最も安全に暮らし働ける国は、デンマーク、アイルランド、ニュージーランドとなった。
トップ10は、以下の通り。
1位 ニュージーランド 80.76点
2位 アイルランド 77.89点
3位 ベルギー 73.45点
3位 デンマーク 73.45点
5位 カナダ 72.75点
6位 ドイツ 71.84点
7位 フィンランド 71.55点
8位 オーストラリア 71.35点
9位 ノルウェー 70.85点
10位 スペイン 70.6点
ドリスコル氏は「充実したワーク・ライフ・バランスが意味するものは大きい。企業にとっては、生産性の向上、離職率の低下、従業員の士気の向上につながる」と語る(ニューズウィーク)。