<札幌記念2024>夏の大一番!今年の注目ポイントと“過去の名勝負3選”を競馬の達人が解説

 夏競馬真っ盛りの8月。今週は札幌記念が行われます。夏競馬唯一のGⅡ戦となる札幌記念ですが、毎年のように好メンバーが揃うため「ぜひGⅠに!」という声も多いレースです。まさに夏競馬の大一番といえるでしょう。

 今回の記事では、過去の札幌記念の中から筆者が「これはアツかった!」と思う3レースを厳選。3つに絞るのは本当に苦労したのですが、今回は筆者がリアルタイムで競馬を見ていた時期が中心となっている点はご了承ください。

 また、記事の最後には今年の展望も書いていますので、ぜひ最後までご覧ください!

◆2014年/凱旋門賞へ向けた2強のアツイ戦い!

 最初に取り上げたいのは2014年です。この年は国内トップホースであるジャスタウェイ、ハープスター、ゴールドシップの3頭が凱旋門賞への参戦を表明。そのうち、ハープスターとゴールドシップの2頭が前哨戦として洋芝の札幌記念を選択しました。

 

 そのためオッズも2頭に集中。レースは離れた3番人気トウケイヘイローが先手を取り、淀みのない展開を演出した事で底力勝負に。道中は後方で構えていたハープスターとゴールドシップの2頭が3~4コーナーから早めに仕掛け、直線は完全に2頭のマッチレースになりました。結果、2強対決はハープスターが0.1秒先着してゴール。

 

 斤量差が大きかったとはいえ、宝塚記念連覇を成し遂げた全盛期のゴールドシップ相手に、これだけタフな底力勝負で勝ちきったハープスターに驚いたのを今でも覚えています。

 その後、ハープスターは凱旋門賞に挑んで日本馬最先着の6着に入線。ヨーロッパの重い芝も苦にせず伸びており、実は時計の重い馬場が得意だったのではないかと思っています。海外GⅠも勝てそうなポテンシャルを有していただけにGⅠは桜花賞1勝のみに終わってしまったのは残念でしたが、歴史的な名馬であったことを確信させるパフォーマンスでした。

 

◆2016年/歴代トップクラスのハイレベル戦!

 続いては2016年。この年は現役最強馬モーリスが参戦した事で話題を集めました。2015年は当時の2勝クラスである若潮賞を皮切りに6戦6勝。無敗で安田記念、マイルチャンピオンシップ、香港マイルを制覇しました。2016年もチャンピオンズマイルを制し、帰国初戦で満足に調整できなかった安田記念も2着と好走。そして迎えたのが札幌記念でした。

 稍重馬場でレース中も雨が降り、かなり時計を要していた当時の札幌競馬場。それにもかかわらず、1000m通過タイムが59.9秒とハイペースでレースが進む底力勝負。モーリスは後方から3~4コーナーで仕掛ける形で展開的にも差し切れる流れでしたが、逃げたネオリアリズムを捉えきれず。単勝1.6倍の支持を裏切る形となってしまいました。

 しかし、これは結果的にネオリアリズムが強かったという事でしょう。実際に次走のマイルチャンピオンシップで3着に好走すると、翌年にはクイーンエリザベス2世カップを勝利しています。

 また、モーリスもその後は天皇賞(秋)と香港カップを勝利。さらに3着レインボーラインは次走の菊花賞で3着に好走し、古馬になって天皇賞(春)を制覇。4着ヌーヴォレコルトは国内外のGⅠ好走馬で、5着ヤマカツエースも金鯱賞連覇を成し遂げています。歴代の札幌記念でもトップクラスにハイレベルな年だったと言っても過言ではありません。

◆2021年/2頭のアイドルホースがそろい踏み!

 札幌記念といえばエアグルーヴの連覇など牝馬の活躍も見られるレース。しかし当時を見ていない筆者としては、牝馬の活躍としてイメージが強いのは2021年です。この年に人気を集めたのはともにGⅠ2勝のラヴズオンリーユーとソダシ。見た目や名前からファンも多い2頭のアイドルホースです。

 トーラスジェミニが逃げると前半3ハロン34.9秒と2014年以降では2番目に速いタイムを記録。道中もペースが緩まず1000m通過タイムも59.9秒とハイペースの底力勝負となりました。この流れを先に動いたのがソダシ。2番手追走から3コーナーではすでに先頭に立ち、迫るラヴズオンリーユーを凌ぎきって勝利を果たしました。

 人気、実力を兼ね備えた2頭によるワンツー決着。その後、ソダシはヴィクトリアマイル1着や、ダートのフェブラリーステークスでも3着と好走。ラヴズオンリーユーはBCフィリー&メアターフ、香港カップと海外GⅠを制覇しました。

◆今年は資質が真逆の2強の上げ下げがポイントに

 それでは最後に今年の札幌記念について触れたいと思います。ここまでの3戦で底力勝負というフレーズを使用してきました。というのも、札幌記念は洋芝で時計が掛かりやすく、直線も短いため仕掛けも速く底力勝負になりやすいという性質を有しています。そして、底力勝負になると上がりを要する展開となり、2014年以降の上がり1ハロンの平均値は12.2秒となります。

 今年はプログノーシス、シャフリヤールの2強になりそうなメンバー構成。そして、2頭の資質は真逆であり、プログノーシスは底力勝負に強くシャフリヤールはトップスピード勝負に強いと筆者は考えています。実際にレースの上がり1ハロンが12.0秒以上になった場合、プログノーシスは国内で4戦3勝であるのに対し、シャフリヤールは5戦して3着が最高としています。

 前述の通り、札幌記念は底力勝負になりやすい舞台。2強の評価はプログノーシス>シャフリヤールになると考えており、2頭の上げ下げがポイントになりそうです。

文/安井涼太

【安井涼太】

各種メディアで活躍中の競馬予想家。新刊『安井式上がりXハロン攻略法(秀和システム)』が11月15日に発売された。『競走馬の適性を5つに分けて激走を見抜く! 脚質ギアファイブ(ガイドワークス)』『超穴馬の激走を見抜く! 追走力必勝法(秀和システム)』、『安井式ラップキャラ(ベストセラーズ)』など多数の書籍を執筆。