マスク着用、ソーシャルディスタンス、不要不急の外出禁止。
世界を大きく変えてしまったコロナ禍を経て、ようやく時が動き出している。
オフィス街のにぎわい、仕事後の一杯、海外旅行…。
人々が失われた日常を取り戻そうとする中、一歩を踏み出せない女がいた。
これは、人生の大きな節目で自粛を強いられた25歳の等身大の物語。
自粛生活こそが日常だった彼女は、充実した人生を取り戻すべく、10の『ウィッシュリスト』を作成し―。
「未来のWISH LIST」一挙に全話おさらい!
第1話:コロナに新卒時代を阻まれた「不遇の世代」、学女卒25歳は…
― 亜希子さん、今日もかっこいい。それに比べて私は…。
未来は、この日何度目かのため息をついた。動画撮影の後、段取りの悪さを謝る未来に、亜希子は優しく言う。
「仕方ないよ。コロナ禍の時は自宅からのリモートインタビューだったから、準備がこんなに大変だなんて知らなかったよね。未来ちゃん、お疲れさま!」
― はあ、またコロナ免罪符。優しさは嬉しいけど、本当につらい…。
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第2話:「まだ海外に行ったことなくて…」震災・コロナ禍で遊ぶ機会を奪われた25歳女のリアル
「そっか。未来ちゃんたちは、学生最後と社会人最初がコロナ禍だったんだもんね。これからいろいろ経験したい気持ち、わかるよ」
「コロナ禍だけじゃありません」
ワインが回ってきたせいか、未来はいつになく饒舌になってしまう。
「私、小学校時代は、新型インフルエンザのせいで、運動会も修学旅行も中止になりました。死ぬほど勉強して中学に合格したすぐ後には、震災があって…。卒業祝いで計画してたハワイへの家族旅行は自粛したんです」
「未来ちゃん、ヤバ…」
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第3話:初めてハワイに来た25歳女。カイルアビーチで突然「恥ずかしい…」と赤面した理由とは?
「未来ちゃん、こちらが本日のお部屋です。思い切ってラナイ付き、オーシャンビューのお部屋にしました」
ハレクラニの部屋に入ると、予約をしてくれた美玲がおどけて言った。ラナイとは、いわゆるベランダのことだ。
「わあ…」
窓から見える青い海と青い空に、ため息が漏れる。
「風が気持ち良い…波の音ってこんなふうに聞こえるんだね」
― ハワイの空と海は違うってみんなが言うけれど、こういうことだったのね。
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第4話:25歳の彼にブランドの名刺入れをプレゼントしたら、微妙な反応で…。その理由とは?
日本に帰った次の日、未来は早速カプシーヌを持って出社した。
― うう、時差ボケがひどい…。でも今日は大切な日だから、気を引き締めていかなくちゃ。
今日は、四半期終わりの上司との面談が入っている。ウィッシュリストに書いた【海外から優秀な人材を採用する】を達成するために、まずは上司に相談するつもりだ。
上司と一緒に会議室に入ると、早速未来は切り出した。
「あの、業務に関してご相談なのですが…」
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第5話:大手メーカー人事部の25歳女が混乱。新卒採用の活動中、学生の父親から“お誘い”が…?
「俺も、いろいろ考えないとなあ」
悠人は、のんびりした口調で言う。
「今の設計事務所は、設計と関係ない雑用が多いんだよ。このままじゃ、一級建築士の勉強にはならなそうでさ。でも、先輩たちとみんなで徹夜した後の一体感とかがたまらないんだよなあ。だからまあ、今は事務所の仕事を楽しんで、しばらくしたら考えようかな…」
― あれ。半年前に「2年後までに一級建築士に合格する」って、宣言してたよね?それで、受かったら結婚しようって…。
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第6話:デートで80万円使う43歳・経営者の男。タクシーで行ったお店で、25歳女性は大変貌を遂げ…
「あれ、もうこんな時間だ。なんか長田さんとの時間は、古い友達との時間みたいです」
「私も同じことを考えていました」
「嬉しいな…僕は、まだ話し足りない気分なんだけど、長田さん、このあと一緒に夕食でもいかがですか?」
「えっ」
2人で食事となると、事の重みが違う気がする。
― 悠斗、なんていうかな。
未来が躊躇していると、笹崎が言った。
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第7話:26歳、四谷で初の高級鮨デート。準備バッチリで入店したら大将に“あるコト”を言われ…
未来は悠斗との電話を終えて、スマホをしまおうとする。そのとき、ちょうど計ったようなタイミングで、LINEの通知がきた。
『笹崎達也:昨日はありがとう。もう一度、未来ちゃんのこと、誘って良いかな?…』
メッセージをタップすると、未来でも聞いたことのある東京の有名な鮨店で、未来の誕生日を祝ってくれるという。
― 今は…。なんて返信したら良いかわからない。
未来はスマホをしまうと、ボストンの街並みをぼんやりと眺めた。
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第8話:プレゼントの紙袋で分かった、男の“本気度”。「彼に舐められている」と気づいた32歳女は…
「これ見て!Spell on Youっていう名前の香水。すごくいい香りだよ」
「未来ちゃん」
美玲がため息をついた。
「そんなベタな名前の香水をプレゼントするおじさん、アピールが過ぎるよ。それと、未来ちゃん傷つくかもしれないけど」
美玲が、クリーム色に赤とゴールドのドットが施されたショッパーを軽く撫でる。
「このショッパーはね、去年のルイ・ヴィトンのクリスマス限定ラッピング。去年から買ってあった香水をプレゼントされるなんて、完全に舐められてるよ」
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第9話:「今から会える?」深夜にベンツで20代OLを迎えに行き…。43歳・港区経営者のリアル
「なんか、突然すみません…」
「突然だったのは、俺の方だよ。未来ちゃん、もしかして寒い?」
笹崎が、木枯らしに吹かれて冷たくなった未来の頬をそっと撫でた。
「ワインやめておく?」
隣に座った笹崎が、未来の手からワイングラスを取ると、そっとテーブルに置いた。そのまま、未来の手をそっと握る。
― この流れは、まさか…。
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第10話:港区女子として生きていく!六本木から徒歩15分、1Kで一人暮らしをする26歳女の実態
4月初めの土曜日。未来は、空っぽになった実家の部屋を見て、ため息をついた。
― ついに、一人暮らしを始めるんだ。
これから、六本木駅徒歩15分の1Kに引っ越しをする。
「未来ちゃん、本当に港区に引っ越すんだね」
今日も実家に来ていた姉の美玲が、心配そうに未来に声をかけた。
「ねえ未来。最後に言わせて」
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第11話:「告白はなかったけど、付き合ってると思ってた…」26歳女の“1年越しの痛い勘違い”
ベッドから出て、キッチンの換気扇をオフにした。銀色のライターが置きっぱなしになっている。昨晩、夜中に訪れた笹崎が、ここでタバコを吸っていたのだ。
― 泊まっていけば良かったのに。
笹崎は「仕事があるから」と、夜が明けないうちに慌ただしく帰ってしまった。
ダイソンの空気清浄機を起動し、クローゼットを開けると、ヴァレンティノのジャケットが目に入り、未来はため息をついた。
― 達也さんとの関係は、深まるごとに不安が増す。どうして?
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第12話:2年前に別れた元カレから、実家宛に届いた1枚のハガキ。驚いた26歳女が連絡をすると…
翌日の日曜。未来は、朝の街を1人でぶらぶらと歩いていた。
ここのところクリスマスプレゼントを選ぶカップルでいつも賑わっているジュエリーショップは、オープン直後の今、どこも空いている。
― 達也さんにプレゼントを買う予定でお金を貯めてたから…ちょっとだけ見てみようかな。
ふらりとカルティエに入ると、コロンとした丸いフォルムの時計が目に入った。
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