「どうして日本人はこんな神業ができるの?」外国人CAが驚いた“日本の光景”

インバウンド需要に沸いている日本。観光地はもちろん、大きな都市ではどこに行っても外国人の姿が目に入ってくるが、日本に住み、インフレ&物価高の影響を大きく受けている日本人からすると「日本の何がそんなに良いのか?」と疑問に思ってしまうだろう。

そこで、すこし日本にゆかりのある外国人に「日本の印象」を聞くことで、我々が忘れかけていた日本の素晴らしさに改めて気づくことができるかもしれない。

アイルランド人のテレーサは航空会社勤務20数年、アイルランドから月に2回は日本に飛ぶベテランCAだ。「好きなものがありすぎるのが日本です!」と口をきると、こう続ける。

「まず日本人はとても礼儀正しく、思いやりがあって、規則や時間をちゃんと守ってくれるので仕事がやりやすいです。交通機関は便利で効率的だし、最先端の技術があふれた国だから、私が日本に行くたびに、友人たちは“未来の国”に行くのね、と羨ましがります。あと世界でここまで安全な国は他にないんじゃないでしょうか」

◆長年、解けない日本の謎「電車やバスで寝ている人たちは……」

テレーサさんは「ただ、一つ、大きな謎があるんですよ」と首をかしげる。日本に何度も来ているはずのCAが抱く謎とはいったい何なのか?

「日本で電車やバスに乗って、すごくビックリしたのが、座っている日本人のほとんどが頭をグラグラさせながら、スースーと船を漕いでいることなんです。どうしてみんな眠っているの? 正直とても奇妙で不思議な光景。

でもそれだけじゃないんです。乗客たちは降りるべき駅に来ると、パッと目覚めてさっと下車していくじゃないですか。驚いたのなんのって。もう感嘆の一言! 一体、どうやったら日本人はこんな神業を、さらりとやってのけられるのでしょうか」

ちなみに彼女の同僚が、この光景を何度も目撃して出した結論は、「きっと日本人は、Sleepy Race(眠たがりの人種)なんだよ」だった。

日本ではごく当たり前のこの光景、外国人から見ると非常に不可思議な現象に映っているというわけだ。

◆CAの意外なオフタイムの過ごし方「チェーン店が素晴らしい」

東京へのフライト後の休みは3日間。彼女はこの短いオフタイムを最大限に満喫する。モットーは、日本でこそ楽しめる体験をすること。

“腹が減っては戦ができぬ”というわけで、まずは食事。高給取りのビジネスクラス担当CAなら、やっぱりカウンターで食べる老舗寿司屋かグルメレストランと思いきや、実は彼女がこよなく愛するのは、あのチェーン店の「カレーハウスCoCo壱番屋」とコンビニの「セブンイレブン」なのだ。あと「スシロー」もお気に入り。どれも庶民的な店ではないか。

彼女によると「日本でホテルに着いたら、その足でCoCo壱番屋へまっしぐらです。あそこのカレーの味は絶妙・絶品! お腹のすき具合でライス量を増減できるし、辛さやトッピングの選択肢もたくさん! 注文したらすぐに出てくるし、それでいて値段はすごく良心的なのが嬉しいですね」

テレーサさんは、チーズカレー、ポークカレーなど異なるカレーソースに、トッピングもコロッケ、ソーセージ、茄子など一通り試したそうだ。今、一番のお気に入りはジューシーで柔らかいチキンカツを乗せたカツカレー。健康志向の彼女は、これにほうれん草をトッピング。この組み合わせは何度、食べても飽きないおいしさだと絶賛している。

「スシローにもよく行きますよ。お寿司っておいしいのにヘルシーでしょ。私はスシローのカッパ巻きが大好物なんです。

長時間のフライトの後で外食する気力が残っていないときは、なんと言ってもセブンイレブンのお弁当シリーズが貴重な助っ人になります。和洋中と揃ったお弁当はおいしいだけじゃなく、栄養のバランスが良くて満足感100%。本当にありがたいです。

セブンイレブンのすごいところは置いてある品数が豊富で、ほしいものが全て一つの店で揃うこと。アイルランドのコンビニはこんなに品数はありません。私はセブンイレブンに行くとお弁当だけでなく、緑茶、ヨーグルト、果物、おにぎり、ポテチも買い込んで、ホテルでのんびりするのを楽しんでいます」

コンビニがきっかけで、彼女はお米のおいしさに目覚めたそうだ。

「日本からアイルランドへのフライトの中で、時々、セブンイレブンの鮭おにぎりをこっそり食べます。あと家族へのお土産に、おにぎりを買ってくることもありますね」

確かにセブンイレブンにはおいしそうなおにぎりが揃っている。パン食系のアイルランド人がお米のおいしさを発見し、おにぎりのファンというのはちょっと笑える。

「日本のコンビニは商業の神髄が凝縮されてますね。年中無休で、必要な時にほしい物がすぐに手に入る。体力勝負のCAには日本は天国ですよ」

◆いざショッピング。お土産選びは「ブックオフ」へ

日本ではファッション系のお買い物も楽しみの一つだ。なるほど、それでは高級ブランド店にお出かけかと思いきや、実はこちらも予想外の質素路線。

こう書くと読者の皆さんは、「ユニクロ」、「しまむら」あるいは「GU」を想像されるだろうか。ところが答えは、それらよりさらに質素感が高いお店。なんと彼女が向かうのは「ブックオフ」なのだ。

「えっ、ブックオフ って中古の本や、CD、ゲームとかを売っている店でしょう?」

思わずそう聞くと、彼女は、

「実はブックオフって古着も売っているんですよ。それも品質が良いから、掘り出し物の穴場なんです」

スタイリッシュな制服でビジネスクラスを担当するアイルランド人CAが、来日後の慌ただしいオフタイムで、必ずブックオフをチェックするというギャップは、ちょっと意外でなんとも面白い。

もう一つ、彼女にとって外せない大事な店、それは日本人にも人気の「100円ショップ」だ。さて、ここでは何を買うのだろうか?

「10歳の娘は100円ショップの大ファン、私が日本に行くたびに折り紙、文房具、ファッションビーズなんかをリクエストしてきます。娘ときたら、クリアバッグやメモ、折り紙なんかもう10種類以上集めているのに、まだ新しいものをリクエストするほど100円ショップが好きなんですよ。

100円ショップは行くたびに新しい商品が増えていて、見るだけでも楽しいです。化粧品、おもちゃ、文房具など、全て高品質でアイルランドでは手に入らない物ばかり。正直、お土産を選ぶのに時間がいくらあっても足りないくらいです。特に文房具は女の子が飛び上がって喜ぶほど、デザインが可愛い。というわけで毎回、買い過ぎるくらい買ってしまうことになるんですよ」

長年、国際線で勤務しているCAの目から見ても「日本の100円ショップに勝てる店は、日本以外ではまだ見たことありませんね」なのだそうだ。

◆日本は外国人から見ると未知の部分が多い

最後にテレーサさんは、笑顔でこう締めくくった。

「日本は外国人が安心して楽しめる国です。乗り物の中で人々が居眠りできることこそ、日本がいかに安全かを証明しています。長い間、独自の文化を築いてきた日本は、外国人からみると、未知の部分も多くありますが、逆にそれが不思議で面白いユニークな国です。私は日本に来るのが楽しいし、これからも月に2回、日本を行き来するCAの仕事をできるだけ長く続けていきたいと思っています」

<文・写真/織田村恭子(海外書き人クラブ/アイルランド在住ライター)>

【織田村恭子(海外書き人クラブ/アイルランド在住ライター)】

日本の多岐に渡る雑誌に現地ニュース、歴史・社会問題、旅行、料理等、記事・エッセイを執筆。また日本のラジオ番組へもアイルランドからニュースを発信。世界100ヵ国以上の現地在住日本人ライターの組織「海外書き人クラブ」会員