日本経済への不安から、わが子に“生き抜く力”をつけるべく中学受験を選ぶ家庭が増えています。中学受験を乗り越え、合格を勝ち取るためには、受験生そして保護者の「メンタルの安定」が欠かせません。本稿では、臨床心理士・真田涼氏の著書『中学受験 合格メンタルの作り方』(日本能率協会マネジメントセンター)より一部を抜粋し、親子で取り組んでほしい「メンタルケア活動」(以下、メン活)の実例を紹介します。
ストレスが「身体」に現れる理由
ストレスや悩みなどの心の問題が身体の症状として現れることを身体化といいます。身体化は子どもだけではなく、大人にも起こります。ストレスなどの心の問題は、身体以外にも、心理面や行動面に現れることもあります。
①身体面
・腹痛 ・頭痛 ・腰痛 ・不眠 ・円形脱毛症 ・皮膚炎 ・肩こり
②心理面
・疲労感 ・イライラ ・緊張感 ・不安感 ・無気力 ・自信喪失 ・焦燥感
③行動面
・暴言暴力 ・注意力散漫 ・ゲーム依存 ・暴飲暴食 ・ミスの増加 ・判断力の低下
この様な症状が現れた場合は、「どうせ受験のストレスだろう」と決めつけないで、まずは病院に行きましょう。たとえば、腹痛の原因は食当たりによるものだったというように、身体化の原因がどこにあるかを診断してもらうことが大切です。そこで、身体化の症状がストレスなどのメンタル面によって生じていると言われた場合には、身体の症状の治療に加えてメンタル面のケアも必要となってきます。
なぜ、ストレスといった心の問題が身体の症状に現れるのでしょうか。それは自律神経と深い関係があります。
自律神経には、交感神経と副交感神経があり、意思とは無関係に働いています。交感神経は車でいうとアクセルの働きをしていて、心拍数や血圧などを上昇させます。反対に、副交感神経はブレーキの働きをしていて、心拍数や血圧などを低下させます。自律神経が通常に働いている場合、交感神経は日中に活発に働き、副交感神経は夜に活発になります。
つまり、自律神経が整っていると、朝になると目が覚めて、日中は活動的になり、夜になると眠くなるというリズムが自然に作られます(図表1)。
しかし、自律神経が乱れると、体は疲れているのに、布団に入っても寝られない、寝ても夜中に目が覚めてしまう、朝起きられない、日中にボーっとする、ミスが目立つといった状態に陥ります。ストレスを受けると、自律神経のうち、交感神経が活発になり、バランスが崩れることが原因です。
では、ストレスを受けなければ良いのではないかと思うかもしれません。ストレスとは、外部からの刺激(ストレッサー)への反応のことです。外部からの刺激(ストレッサー)には、天候や騒音などの環境的要因、病気や寝不足などの身体的要因、悩みやプレッシャーなどの心理社会的要因があります。つまり、ストレスを完全に受けない、というのはとても難しいことなのです。
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身体化したときの「困った癖」は、「別の行動」に置き換える
人には誰でも「癖」があります。たとえば、いつも右足から靴を履くなど、誰でも一つや二つは癖があるかと思います。癖は、習慣になっているものや緊張や不安を和らげるために無意識に行っているものなどがあります。
誰でも癖はあるものの、抜毛のような癖は、できたらなくしていきたいものです。しかし、無意識下で行っているものをなくすというのはなかなか難しいです。そういう場合には、なくしたい癖を他の癖に変えることがおススメです。たとえば、ゴムバンド法というものがあります。これは腕に輪ゴムを付けて、髪の毛を抜く代わりに、輪ゴムを引っ張るというものです。パチンとはじく刺激が、髪の毛を抜く際の痛気持ち良い刺激にも似ているので、比較的スムーズに移行していきます。
癖もストレス同様、ゼロにするのは難しいので、このように、別の癖に変えるなどして、上手に付き合っていけるとよいですね。
※輪ゴムは皮膚に痕が残るほど強く引っ張るのではなく、心地よい刺激が得られる程度に軽く引っ張ります。
<POINT>
・受験のストレスは自律神経の乱れとして身体の症状に現れることがある。
・ストレスを受けないことは難しい。身体化したときのクセは、別のものに置き換える。