いったいなぜ…?減税に“懐疑的”な日本経済新聞と朝日新聞
そして第四の問題は、減税にエアポケットが発生することだ。年間の所得税が3万円を超えるのは、専業主婦の妻がいる世帯で年収320万円、独身者の場合で240万円だ。それ以下の年収の世帯は3万円の定額減税をフルには受けられないことになる。
こうしたことを考えると物価高対策としては、所得税減税よりも消費税減税のほうがはるかに効果が高いのだが、消費税減税の話は、与党幹部から一切出てこない。消費税減税を嫌がる財務省への忖度だろう。
そして、その態度は大手メディアも同じだ。それどころか、大手新聞は、減税そのものにも疑問を投げかける。
2023年10月21日の日本経済新聞は一面トップで「所得減税遠のく財政再建」と掲げ、「ガソリンや電気への補助金などに加えてバラマキ政策が続けば財政再建は遠のく」と減税自体に反対する態度を鮮明にした。
朝日新聞も同じだ。10月20日朝刊の社説は「過去3年、国の税収が物価上昇などの影響で過去最高を更新してきたのは事実だが、収支を見ると赤字がコロナ前より大幅に拡大し、借金頼みに拍車がかかっている。巨額の財政出動を繰り返した結果、歳入増を上回る規模で歳出が膨らんだためだ」と書いている。
朝日新聞は統計を見ているのだろうか。
コロナ前の2019年度の基礎的財政収支の赤字は13.9兆円だった。2023年度予算の基礎的財政収支の赤字は、予算ベースで10.8兆円だ。コロナ前より大幅に赤字は減っている。赤字がコロナ前より大幅に拡大したというのは完全な事実誤認だ。
しかも2023年度は予算ベースなので、税収が見積もりより増えたり、予算に不用額(歳出予算のうち、実際に使用しなかった額)が出ると、財政収支はさらに改善する。さらに、政府の抱える借金は、資産をカウントしたネットベースで、前述したとおり通貨発行益を考慮すると、ほぼゼロになっている。
借金もなくて、財政赤字もないのに、新聞はいつまで財政破綻を煽るのか。
森永 卓郎
経済アナリスト
獨協大学経済学部 教授