かつて「松本亜璃沙」の名前でセクシー女優として活躍。幼い顔立ちながら熟女系の作品に多数出演し、“童顔系熟女”のパイオニアとして人気を博していた。
そんな香音凛(かおりん)さんは現在、52歳。波乱万丈の人生、「バツ3で子どもを5人産んでいる」というが、仕事からプライベートまで“今だから話せること”を聞いた。
◆銀行員の夫にギャンブル癖が発覚、離婚…
香音凛さんはもともと銀行員で、最初の結婚は社内恋愛だったと話す。
「アダルト業界とは対極のお堅い場所にいたので、当時はセクシー女優やそれを見ている人たちも気持ちが悪いって思っていました」
性別に関係なく出世できる今とは異なり、「25歳でお局と呼ばれる時代だった」と笑う。
「就職の面接で聞かれたのは“得意料理”。銀行員はほとんどが社内恋愛・結婚だったので、女性は花嫁候補みたいに見られていたんですね。みんな、すぐに結婚して辞めていく。ただ、私も若いママになりたかったので」
香音凛さんも同僚と結婚し、子宝にも恵まれたが、ワンオペ育児に加え、相手のギャンブル癖が発覚。離婚に至った。
◆借金のみならず「子どもの学資保険にも手をつけていた」
その後、通っていた美容院で、たまたま休みだった担当美容師の代わりについた男性が2番目の夫となる。
「すぐに告白されて、私はシンママだよって伝えたけど、『結婚しよう』とプロポーズされました」
そこから1年半、同棲も経て結婚したが、子どもの出産直後に衝撃の事実が明らかになる。
「旦那に届いていた銀行からの手紙を見たら、残高がおかしな感じで。それで銀行に確認したら、借金があったんです……」
なんと2番目の夫も香音凛さんに内緒でパチンコに通い、借金までつくっていたのだ。
「ストレスで母乳が止まりました(苦笑)。私は借金が大嫌いなんで、離婚したいって言ったんですが、旦那の親が『今回は……』って肩代わりしてくれたんです」
香音凛さんも献身的にサポートしたことで夫は出世。3人目を妊娠し、マンションを購入した。順風満帆に思えたところで、また借金が発覚したという。
「2回目は借金だけではなく、子どもの学資保険にも手をつけていたんです……」
今度こそ離婚を決断するかと思いきや、香音凛さんは「自分がなんとかしなければ!」と考えた。
「この頃、銀行にパートとして復帰していたけれど、旦那の扶養内で月7万円くらいしか稼いでいなかったからぜんぜん意味がなくて。このままでは一生借金が返せないなって」
◆「時給は高いほうがいい」セクシー女優としてデビュー
かおりんさんは、とにかく高収入の仕事を探した。
「今みたいにネットが普及していないから、コンビニで求人誌を買って、高収入の仕事を探しました。キャバクラは働くのが夜だから無理。昼の仕事で稼げるものとして、最初に始めたのはランジェリーモデルです」
ギャランティは3時間で5万円だった。
「正直、破格に思えましたね。そこでカメラマンさんに表情づくりがうまいねって褒められたんです。セクシー女優になった方が稼げるんじゃないかって」
当初はセクシー女優を軽蔑していたと語っていた香音凛さんだが……。
「人生が80年とか90年あるなかで、時給数百円稼ぐのと時給数万円、数十万円稼ぐのだったらどっちがいいのかなって考えたときに、稼いだほうがいいって思ったんです」
夫には「ノンアダルトのチャットレディとして働く」と嘘をついてデビューした。しかし電車の中吊り広告がきっかけでバレてしまったという。
業界では“パブ”と呼ばれているが、身バレ防止のためにメディアでどこまで露出するか細かく設定できるようになっている。
「パブは念のため、目線を入れて隠していたんですが、やっぱり旦那だったら目元とか胸の形でわかりますよねぇ(苦笑)。ただ、半年間はなぜか黙っていたんです。それが、お正月に爆発しました。車に乗っている最中、異様な空気で。あ、これはバレたなって。家に着いた瞬間、すごい剣幕で私が載っている雑誌を投げつけてきて『出てんだろ! ぜんぶ知ってるんだぞ!』って」
◆“身バレ”で迎えた修羅場「ママは汚い仕事をしているんだよ」
そこからは“修羅場”だったという。
「すでに借金は返していたので、辞めろって言われるわけですが、私としては子供を育てるために仕事を辞めたくなかったから、正直に伝えたら大喧嘩になって。小学生の娘に『ママは汚い仕事をしているんだよ』とか、親族にも言いふらしたり。その後も娘は普通に接してくれたけど、私の母なんて毎日、何十件も電話してきて罵詈雑言の嵐ですよ」
セクシー女優を辞める、辞めない。離婚する、しない……。
大喧嘩のすえに、なんとか続けることになったが、香音凛さんは身内にバレてしまったことが転機となり、「逆に吹っ切れたんです」と当時を振り返る。
「いちばんバレたくない人たちにバレてしまったので、もういいかなって。パブを全開にして、もっと稼ぐぞって」
雑誌の表紙になった際には「ありえない!」「恥ずかしい!」などと身内からクレームが止まらなかった。そんななかで、唯一の理解者が「父親でした」と話す。
「父が『亭主が稼げないんだから仕方ない。それだけ家庭が大変なことになっているんだろう』って。小さいときから可愛がってくれて、いざとなったら私がすごく頑張るのを知ってくれているから。そんな父の言葉には救われました」
当時、夫は働けなくなっており、一家の大黒柱としてローンなどを払い、子どもを育てる生活が4年を過ぎた頃、離婚を決意する。原因は夫のブログだ。
「人気ドラマのパロディみたいなブログを書いていたんですよ!『自分はブランド物ばかり買って、俺らのはすべて安物』『ブランド物を買うくせに俺の小遣いは3万円』とか『子どもの下着は擦り切れるまで買い替えない』とか。ありもしないことが面白おかしく書かれていたのを見て、我慢の限界がきました」
◆「撮影現場が唯一、私が息をしていられる場所でした」
まさに紆余曲折、そして四面楚歌ともいえる状況のなかで香音凛さんは1人で家を出ることになってしまった。
「話すと長くなりすぎるので割愛しますが(笑)、調停で親権を争ったり、もう精神がボロボロになるなかで、セクシー女優としての撮影現場だけが救いだったんです」
その後、長く離婚の相談をしていたピエール剣さんと再婚。一男一女に恵まれる。
「彼はアダルト業界の仕事に誇りを持っていて、『なにも恥ずかしいことじゃないんだから、隠す必要なんてない』といって保育園の先生とか保護者たちにもオープンでした。子どもを産んでから私は引退していたけど、本当に生きやすかったですね。この仕事で一軒家も別荘も買えるって、すごいことですよね」
そんなピエール剣さんとも「色々あって別れちゃいました」という香音凛さんだが、現在は「最後のパートナーを探している最中です」と笑う。
インタビューの締め括りに「後悔はしているか?」と聞くと、香音凛さんは「後悔はないですね!」とキッパリ。
「借金で夜逃げするか一家心中という状況や、家族と一緒に暮らせなくなってうつ状態だったときも、撮影現場があったから救われましたもん。どんなにツラいときも唯一、私が息をしていられる場所だったので」
●香音凜(かおりん)
Instagram:@kaorin.0923
<取材・文/吉沢さりぃ、撮影/藤井厚年>
【吉沢さりぃ】
ライター兼底辺グラドルの二足のわらじ。著書に『最底辺グラドルの胸のうち』(イースト・プレス)、『現役底辺グラドルが暴露する グラビアアイドルのぶっちゃけ話』、『現役グラドルがカラダを張って体験してきました』(ともに彩図社)などがある。趣味は飲酒、箱根駅伝、少女漫画。X(旧Twitter):@sally_y0720