確定申告と聞くと、個人事業主や副業をしている一部の会社員以外には関係ないと考える人もいるかもしれません。しかし、いわゆる“普通の個人”であっても確定申告が必要なケースがあります。それはいったいどのようなときか、具体的な事例をとおしてみていきましょう。多賀谷会計事務所の宮路幸人税理士が具体的な事例を紹介します。

税務署は「個人の資産」も狙っている

一般的な会社員や主婦(夫)などの個人にとって、確定申告はあまり身近なものではないかもしれません。しかし、たとえば下記のような場合は個人であっても確定申告が必要となるため、注意が必要です。

1.生命保険の一時金や損害保険の満期返戻金の収入がある

「受けとった保険金額」-「これまで支払った保険料」-特別控除額(50万円)がプラスとなった場合、「一時所得」として申告が必要なケースがあります。所得に加算される金額はこの金額の2分の1です。

会社員の場合、他の所得が20万円以下であれば申告不要となるため、給与以外の所得がなく、差益が90万円以下である場合は申告不要です。

(90万円-50万円)×1/2=20万円

2.金地金の売却輸入がある

金地金を売却した場合、総合課税の「譲渡所得」として確定申告が必要です。

「金地金の売却収入」-「金地金を取得した際の費用+売却するためにかかった費用」の金額から特別控除額の50万円を差し引きます。

なお、所有期間が5年超の場合は、上記金額の2分の1が所得となります。

3.ビットコイン、FXにより利益を得た場合

ビットコインやFXによる利益がある場合、原則「雑所得」として申告が必要です。

これらの売却収入などは、一定金額以上となった場合は取扱業者より税務署へ支払調書が提出されているため、必要に応じてきちんと申告しておきましょう。ただし、会社員で給与以外の所得が20万円を超えない場合は申告不要です。

日常生活を送るうえで税金に関する手続きとは無縁の個人にとって、確定申告は面倒な手続きでしょう。実際のところ「まさかバレることはないだろう」と考えて申告を怠る人も少なくありません。

しかし、そのような“めんどくさがりな個人”こそ、税務署の格好の餌食となるのです。

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家なんて買わなければよかった…40代夫婦の後悔

年収1,200万円を稼ぐ会社員のAさん(41歳)は、パート勤めで年収約100万円の妻Bさん(40歳)と、7歳になる小学1年生の息子Cくんとの3人暮らしです。

A家の住まいは長らく都内の賃貸でしたが、Cくんが小学校にあがるタイミングで、のびのびと子育てをしたいというBさんのかねてからの希望もあり、埼玉県内に念願の庭付き戸建てを購入しました。

戸建てに引っ越してからというもの、息子と庭で遊んだり、息子の友達家族を招いてBBQを楽しんだりと、AさんとBさんが思い描いていた“理想の生活”を満喫していたそうです。

しかし、マイホーム購入から1年ほど経ったある日、税務署から1通の封書「お買いになった資産の買入価額などについてのお尋ね」(以下、「お尋ね」という)が届きました。

A家では、妻が口座の管理をして家計をやりくりしてくれていました。Aさんはその妻の労をねぎらうため、購入した家を登記する際、持分の2/5の2,000万円を妻名義で登記したそうです。

その旨をありのまま「お尋ね」に回答した結果、税務署から妻の持ち分2,000万円のうち1,000万円は贈与と認定され、なんと「贈与税231万円」の支払いを命じられたのでした。

Bさん「ちょっと、なによこれ! なんで私がそんな大金を支払わなきゃいけないの!?」

悲痛な叫びも虚しく、Bさんは泣く泣く大切に貯めていたヘソクリから贈与税を支払ったそうです。