ソファやダイニング、ピアノといった「大きな家具」は、どうしても部屋に圧迫感を与えてしまいます。そこで、たとえピアノを置いても生活を妨げず、快適な暮らしを実現するためのレイアウトの秘けつについて、一級建築士/模様替えアドバイザーのしかまのりこ氏の著書『狭い部屋でも快適に暮らすための家具配置のルール』(彩図社)よりみていきましょう
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動線を意識した使いやすい部屋づくり
ピアノなどの大きな家具は、分散してレイアウトすることが大切
子供の習い事で、今も昔も人気があるのが、ピアノです。
しかし、バイオリンやフルートなどとは違い、ピアノはとても大きいため、多くのご家庭で、その置き場所に困ります。
どのくらい大きいかといいますと、一般的なアップライトピアノのサイズは幅150センチ前後、奥行60センチ前後あるので、半畳ほどの面積が必要になります。さらに、椅子に座って練習する空間をプラスすると、結果的に1畳程度の広さが必要になります。例えば10畳のリビング・ダイニングであっても、ピアノを置くことで、その広さが9畳になってしまうのです。
ピアノを置く前には広く感じたリビング・ダイニングが、ピアノを置いた後は、とても狭く感じるのはこのためです。
ピアノは、ほかの家具と一緒に並べると、さらに圧迫感が増す
このように、1畳ほどの面積を占めるピアノですが、その高さは120センチ以上あります。そのため、部屋に与える圧迫感も強く、ピアノを置くと、部屋はとても窮屈になります。
[図表1]は3LDKマンションの家具配置の様子です。リビング・ダイニングの9畳という限られた空間に、ダイニングセットとソファ、リビングテーブル、テレビ、収納のほか、ピアノを置いていました。
ピアノは、ほかの家具と一緒に壁に沿って、部屋の中央にレイアウトされていましたが、高さがあるため、[図表2]のように、背後の壁がほとんど見えなくなってしまっていました。
さらに両隣には、テレビボードやテレビ、収納があるため、白い壁がほとんど隠れてしまっていました。
部屋は、白い壁を多く見せると、視覚的に広く見えます。この部屋を広く感じさせる白い壁の部分が、ピアノや家具で隠れてしまっているため、圧迫感がさらに増してしまう家具レイアウトになっていました。
また、先ほど述べましたように、ピアノは約1畳の面積を必要とします。そのため、こちらの部屋は9畳ほどの広さがありますが、実際の広さはピアノ置き場の1畳を除いた8畳ほどの空間に、ダイニングセットとソファ、リビングテーブル、収納を置いていることになります。
8畳の空間に、これだけ多くの家具をレイアウトすると、部屋はとても狭くなります。
とくに、[図表3]のようにダイニングテーブルとピアノが近くに位置するため、収納や棚への動線・収納周りの空間が大変狭く、とても使いづらい状態になっていました。
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圧迫感を軽減するピアノの配置
そのほかにも、ピアノの横に近接してテレビがレイアウトされているため、ソファ前は広いのですが、テレビが角度的に見にくいなどの問題もありました。
そこで、ピアノや家具のレイアウトを変えて、圧迫感が少なく、また使いやすい家具レイアウトに模様替えしてみました。
[図表4]は模様替え前の、[図表5]は模様替え後の、間取りの様子です。
壁に一列に並んでいたピアノ、収納、テレビボードは、圧迫感を少なくするため、それぞれ離して別の壁にレイアウトしました。
そして1番大きいピアノは、バルコニーへの動線上にレイアウトしました。
動線上には、基本的に、その妨げとなる家具は、置くべきではありません。
しかし、動線の幅が十分確保され、スムーズな動きが妨げられない場合は、[図表5]のように、動線上に家具を置くことも可能です。
テレビボードは、アンテナジャックのある壁に、角度を変えてレイアウトしました。
ソファは、そのテレビに対し正面にレイアウトし、見やすい距離に置きました。
リビングテーブルは、大きくて使いやすいというメリットはありますが、部屋に対して、少し大きすぎたため、マガジンラック付きのサイドテーブルに買い替えました。
収納は、動線を確保できるように、家具同士のスペースを空けてレイアウトしました。
このことにより、不便だった収納も、出し入れが楽になり、使いやすい収納になりました。
ピアノや収納など、家具を集中させないことで、圧迫感がなくなり、また、狭かった収納への動線もスムーズになりました。([図表6]、[図表7])
ピアノをリビングにレイアウトする場合は、圧迫感を少なくするように、家具を分散してレイアウトすることが大切です。
しかま のりこ
COLLINO一級建築士事務所
一級建築士/模様替えアドバイザー