人生の折り返し地点ともいえる50代。これからの人生もいきいきと楽しむために、今からはじめておきたいことがあります。
それは人生のベースとなる「体、お金、住まい」を整えること。
それぞれの専門家に、今日からできるヒントを教えてもらいました。
今回話を伺ったのは・・・
井戸美枝さん
FP(CFP®認定者)、社会保険労務士、経済エッセイスト。講演や執筆、メディアへの出演を通じ、生活に身近な経済問題を解説。
漠然としているから不安に。明確にすれば対策は見つかる
将来のお金について、誰もが漠然とした不安を感じているものですが、FPの井戸美枝さんは、「住宅購入資金や子どもの教育費の負担が終わる50代は、お金を貯めやすい『黄金の期間』です」とアドバイスします。
「まずは、不安の正体が何かを知ることが大切です。毎月の収入と支出を確認するとともに、貯蓄はどのくらいあり、将来受け取る年金はいくらかを把握すれば、必要なお金がわかって安心できます。運用してお金を増やすことに加え、健康な間は働いて収入を得られれば、生きがいを感じながら楽しく過ごせるはずです」
まずは今の支出と貯金、将来の収入を算出してみる
「大切なのは、いくらあれば老後の経済的な不安がなくなるかを知ることです」と井戸さん。
その金額は、下図の方法で見積もることができます。ポイントは、食費などが減ることを考え、毎月の生活費を現役時代の7割程度で考えること。
年間の年金額は、税金で差し引かれる分を考慮して受給額の8割で計算します。
下図に、医療費や介護費などを足せば、必要なお金を計算できます。
こまごました節約より固定費の見直しをする
「黄金の期間」にしっかりとお金を貯めるには、支出を見直すことが必要です。
「こまごました節約よりも、毎月決まってかかる固定費を見直しましょう。住居費や通信費、保険料、自動車維持費、サブスクリプションサービスの料金などを見直すことで、節約の効果が毎月蓄積され、年間では大きな効果が得られます」。
住宅ローンは、繰り上げ返済を活用し60歳までに完済するのが理想。
カードは3枚に減らし、スマホ決済とクレジットカードは明確に使い分けを
クレジットカードやスマホ決済をいくつも使っていると、支出の管理がややこしくなりがちです。
「現金以外の決済手段は、3つ程度に抑えます。そのうえで、クレジットカードは水道光熱費や通信時など固定費の支払い、スマホ決済は食費や日用品など変動費の支払いに充てるなど、用途を"明確に″分けて使います。支出を管理しやすくなり、ポイントも貯まりやすくなりますよ」。
子どもが巣立ったら保険はやめて貯蓄や運用に回す
子どもが独立したら、保険を見直すことも必要になります。
「万一に備える死亡保障には大きな金額は必要ありません。また、50代からがん保険や外貨建ての終身保険などに加入する人もいますが、一生涯保険料を支払う“足かせ”を作ることになりかねません。それよりも、不要な保障を見直して、貯蓄や運用にまわすことを考えるべき。50代なら収入の2割は貯蓄や運用に充てたいところです」
iDeCoや新NISA、働いているならまずはiDeCoから始めよう
「インフレの時代は、金利がほぼゼロの預金や現金だけだと、保有する資産の価値が実質的に目減りしてしまいます。株式や投資信託などインフレに負けない資産で運用して増やすことを考える必要があります」。
そこで考えたいのが、iDeCoやNISAなど税制優遇措置のある制度を活用して増やすこと。
「働いて(公的年金制度に加入して)いる間は、節税効果の高いiDeCoからはじめて、余裕があればNISAも活用しましょう」
70歳までは十分働ける!「今していること」を少し深めてみて
「この先の人生を楽しく過ごすには、できるだけ長く働いて収入を得るための自己投資も大切です」。
自分ができることや得意なこと、好きなことを明確にし、「それでお金を稼ぐこと」を考えてみて、と井戸さんは助言します。
「資格取得やスキルアップも大切ですが、それ以上に人のつながりが重要です。面白そうな勉強会や集まりに参加して、新しい人たちと知り合うことはもちろん、今あるつながりも大切にしていきましょう」
撮影/木村 慎 文/寺本 彩
大人のおしゃれ手帖2024年7月号より抜粋
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