人生の折り返し地点ともいえる50代。これからの人生もいきいきと楽しむために、今からはじめておきたいことがあります。
それは人生のベースとなる「体、お金、住まい」を整えること。
それぞれの専門家に、今日からできるヒントを教えてもらいました。

今回話を伺ったのは・・・
水越美枝子さん
一級建築士。一級建築士事務所アトリエサラを共同主宰。新築・リフォームからインテリア・収納計画まで、トータルの住まいづくりを提案。『理想の暮らしをかなえる50代からのリフォーム』(大和書房)など著書多数。

目指すのは、今の暮らしと心に合った快適な住まい

50代からの住まいで大切なのは、「まず快適な環境」だと水越さん。
暑さや寒さ、暗さ、結露、騒音などは「仕方ない」と諦めている人も多いのですが、長い目で見ると、心身の健康や快適な時間を損なうことに。
「日本は特に家の断熱化が遅れていて、寒い家が多い。家の中の温度差はヒートショックの原因にもなりますから、今からリフォームを検討してみては」 
もう一つのポイントは「家事の効率化」。
洗濯や掃除、料理、片付けなどが快適にできるシステムを整えておきましょう。今の暮らしに合う快適な住まいは、豊かな人生にもつながります。

体にもお財布にもやさしいリフォームは「窓」。
すぐできて、効果も実感しやすい

50代からの手軽なリフォームとして、水越さんがおすすめしているのが「窓の断熱化」。
現在の窓枠の内側にもう1枚窓をつける「二重サッシ」という方法なら、コストも抑えられ、施行期間も短くてすむそう。国や自治体の補助金制度が使えることも。
「北側の窓や浴室の窓だけでも効果があります。冷暖房の効率がよくなるので、省エネや節約につながります。また、遮音性や防犯性を高める効果も」。

「乾燥機」「コードレス掃除機」「食洗器」
50代からの〝新三種の神器”を導入し、家事を楽に

日々の生活で感じるちょっとした「不便さ」は誰にでもあるはず。家事はこの先20年、30年も続くことを思えば、家事動線を見直すリフォームも視野に入れてみて。
大掛かりなリフォームが難しいときは家電を味方につけるのが◎。
水越さんのおすすめは乾燥機、コードレス掃除機、食洗機の3つ。
「食洗機は大容量のフロントオープン型なら、1日分まとめて洗えますし、ザルやボウルもピカピカに。後片付けがラクだと人を招きたくなりますよ」


乾燥機があれば、天気を気にしながら干したり取り込んだりする手間が省けます。
ドラム式洗濯乾燥機は乾燥量が少なめなので、洗濯物の量が多い場合は乾燥機を。

収納スペースが「適所」に「適量」あるかをチェック

「子どもが高校生・大学生では私物が増え、家の中のモノが多くなる時期」と水越さん。収納の見直しには、すべての部屋と収納スペースの中の写真を撮ると、モノの量や収納場所がひとめでわかります。
「モノは使う場所に収納するのが基本。掛布団や毛布、扇風機なども、使う部屋に収納したほうが効率的です」。
収納スペースが足りないなら、モノを減らすか、収納スペースを増やすことを考えて。

収納の見直しポイント
● 増やすべきは「玄関」「洗面所」「ダイニング」の収納
● 棚板やボックス、かごを使って、 収納を「高密度化」
● 通路など「通るだけ」の空間に 浅い収納を

収納スペースを新たに作るなら「玄関クローク」

新たに収納スペースをつくるなら、玄関脇がおすすめ。
「リビングでコートを脱ぐと、散らかりがちになるので、コートを収納できる玄関クロークがあると便利です」。
コート以外に、外出時に使うバッグや傘、エコバッグ、マスク、アウトドアグッズなども収納できますし、資源ゴミの一時置き場や、防災用の備蓄品を置くスペースとしても。
「ゴミ箱も置いておくと、不要なDMやチラシをすぐに仕分けできますよ」

個々の居場所を作って住まいを「シェアハウス化」

50代であらためて考えておきたいのが、住まいにおける家族との距離感。
「良好な人間関係を保つためには“上手にすれちがえる”ことが大切。シェアハウスのイメージで、それぞれのプライベート空間を作るのがおすすめです。寝室を別にするという選択肢も」。
例えばキッチンや寝室に自分用のテーブルを作るなど、小さくても自分だけの居場所があれば、穏やかな気持ちで過ごせます。


キッチン横などに作業スペースがあると便利。
収納棚の一部を使うなども◎

photograph: Kayo Nagano

撮影/木村 慎 文/寺本 彩

大人のおしゃれ手帖2024年7月号より抜粋
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