人生の折り返し地点ともいえる50代。これからの人生もいきいきと楽しむために、今からはじめておきたいことがあります。
それは人生のベースとなる「体、お金、住まい」を整えること。
それぞれの専門家に、今日からできるヒントを教えてもらいました。

今回話を伺ったのは・・・
大渕修一さん
東京都健康長寿医療センター研究所 研究部長。専門は理学療法学、老年学、リハビリテーション医学。『一生ボケない、寝たきりにならない方法』(学研プラス)など著書多数。

“体との対話〟が人生を楽しくする

運動は苦手でやりたくない。そんな人に対し、大渕さんは「50代で運動をしていないと、60代で大きな差が出ます」とキッパリ。
特に、おしりがぺったんこになったり、ひざがゆるんで立ち姿がだらしなくなったりするそう。 「50代から、日常生活の範囲内でしか体を使わなくなる。すると、見た目はもちろん機能も衰えます。日常『+α』を意識して、体を使うことが大事です」 
また運動は「体との対話」だと大渕さんはいいます。
「閉経を迎える50代は、体が“生まれ変わる”時期と考えて。新しい体には何が必要か、対話を重ね、体づくりをはじめていきましょう」。

体・脳・メンタルがポイントに!
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1. 週1でキープ、週2でアップ!「筋トレ習慣」を身につける

50代からぜひ身につけたいのが、筋トレ習慣。「短時間でよいですし、毎日やらなくてもいいので、実はラクなんです」と大渕さん。
週1回で筋力をキープでき、週2回やれば筋力アップができるそう。ポイントは負荷のかけ方です。「筋トレ後に、筋肉のハリや疲労感を感じるくらいの負荷をかけてください」。
ハリを感じないときは、重りをつけたり、1回の動作時間を伸ばしたりして負荷を強めます。

2. 筋トレは、まず「脚」を!どの筋肉を使っているかを意識して

人間の体には約450の筋肉がありますが、特に重要なのが、おしりから太もも、ふくらはぎなどの「抗重力筋」。二足歩行を実現するために発達した筋肉です。
しかし、年とともに低下しやすいので、重点的に筋トレを行いましょう。
「抗重力筋はウォーキングでも鍛えられますが、筋肉が疲れるほどの距離を歩かないと難しい。筋トレのほうが効率的です。使っている筋肉を意識するとより効果的」

太ももの前にある大腿四頭筋を鍛える筋トレ。いすに座り、4つ数えながら片脚を上げ下げします。ひざを伸ばしきることを意識して、左右10回ずつ。

・足首は力を入れず自然と伸ばす。慣れてきて物足りなくなったら、足首に巻く市販のおもりなどを使って負荷を上げて。

・できるだけひざをピンと伸ばすように。50代女性にはちょうど良い負荷になる。

3. 筋肉と並んで重要な「骨」。
すき間時間に「かかと落とし」で骨トレ!

「女性の体で、いちばん最初に衰えてくるのが骨です」。
閉経で女性ホルモンのバランスが変化すると、骨密度も急激に低下してしまうからです。骨を丈夫にするのは筋トレならぬ、骨トレ。「骨は衝撃を与えると強くなります。
"かかと落とし″を行ってみると、かかとから背骨を通じて頭のほうまで衝撃を感じるはず。この衝撃で股関節や背骨を丈夫にし、将来の骨折を防ぐことができるのです」。


いすの背もたれを持って、つま先立ちに。
2秒に1回くらいのペースで、かかとをトンと落とします。1日50回が目安。


電車に乗っているときや信号の待ち時間などは、骨トレのチャンス。
縄跳びなどジャンプも有効な骨トレに。

4. たんぱく質は、量はもちろん摂取のタイミングも考えると◎

筋肉の材料であるたんぱく質が不足していると、筋力がつきません。食事でとったたんぱく質はアミノ酸に分解されてから、筋肉に吸収されます。
そこで、筋トレの少し前にたんぱく質をとるのが理想的。運動前に食べるのが難しければ直後に。筋肉への吸収スピードが速い、アミノ酸サプリなら筋トレ後がよいでしょう。

5. それぞれの栄養素にこだわるよりも
1日10品目をとることを目指す

ビタミンやミネラルなどはいろいろな栄養成分が注目を集めていますが、単体ではなく、さまざまな成分が補い合って、体の中で機能します。
そのため、食事の「多様性」を重視して。1日に下記の10品目をとるように心がけてください。10品目をとれば満腹感が得られ、食べすぎも防げます。
まずは10日間、食べたらチェックを入れて食生活の確認を。

6. 脳のアンチエイジングのために
“いつもとちょっと違う”にチャレンジを

同じ範囲しか使わなければ衰えるのは、脳も同じ。
「未知の状況に対応する能力を鍛えることが、アンチエイジングにつながります」。
例えば、いつもと違うジャンルの音楽を聞いてみる、新しい髪型や服装にチャレンジする、スマホを使わずに週末を過ごすなど……。
新たなチャレンジは、ワクワク感も連れてきてくれるはず。

7.「心のもやもや」を少しずつクリアにしていく

メンタルを安定させるには、自分の快適さに素直になること。周囲の雑音は聞き流してOKです。また"心のもやもや″を見つめ直すのも大事。
「親子関係や夫婦関係などの"心のもやもや″が70代80代になって、メンタルの問題につながることがあります。映画や演劇、音楽などで自分の気持ちを追体験し、自分なりに受け入れていけるといいですね」

イラスト/山﨑美帆 文/寺本 彩

大人のおしゃれ手帖2024年7月号より抜粋
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