飲食代は「交際費・会議費・福利厚生費」に分かれる
――では、飲食代を経費にするうえでの「税務上の基準」について教えてください。まず、飲食代はどのような経費になるんですか?
黒「飲食代は状況によって、交際費、会議費、福利厚生費の3つで経費計上できます」
1.交際費
黒「まずは交際費。経営者ならなじみがある人も多いと思います」
――そうですね。接待や会食などの費用を交際費として経費計上している人は多いと思います。改めて、交際費を経費にできる条件を教えていただけますか?
黒「交際費の条件は、下記の2つです。
1.得意先、仕入先など事業関係者に対しての費用であること
2.接待・供応・慰安・贈答のための費用であること
交際費として処理できるのは、事業に関連する相手との食事や、贈答品などです。また、接待や慰安、贈答が目的であることが条件となります」
――具体的にはどのような費用が交際費になるんですか?
黒「主に、下記のような費用が交際費にあたります。
<交際費の例>
取引先接待費用/送迎交通費/親睦旅行代/お土産代/
商品券・ビール券/ゴルフ場利用費/観劇/
事務所移転祝い/出産祝い/結婚祝い祝儀/新築祝い/
香典/お中元/お歳暮/謝礼金 など
今回は飲食代に焦点を当てますが、他にも上記のようにお中元やお歳暮などの贈り物や、親睦を深めるための旅行費なども交際費にあたります。
なお、交際費の税務上の基本ルールは「損金不算入」です。つまり、交際費を使っても経費にならないというのが原則です。
しかし、資本金1億円以下の中小企業の場合であれば、①年間800万円まで、もしくは②交際費のうち飲食費の50%までを経費にすることが可能です。
2024年4月以降、1人当たり1万円以下の接待飲食費は交際費から除外し、「会議費」として計上することができます。会議費は交際費のような年間800万円の上限がないため、会議費に計上できたほうが交際費の枠を有効に使えます」
――なるほど。接待の内容によっては1人当たり1万円以下で済むことも多いと思うので、これはありがたいですね。
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キャバクラでの飲食も、事業に関係していれば経費計上可能
ちなみに、接待や慰安目的の取引先との飲食費なら経費になるということでしたが、知人や友人との食事はやっぱり経費にならないんでしょうか?
黒「知人や友人との食事の場合は、その人たちが事業に関係している人かどうかや、食事の目的が重要になります。
『情報交換』と整理される人も多いですが、自分の事業に関連している仕事をしている知人や友人と、本当に情報交換のために食事する場合は、交際費として経費にできます。
ただし、まったく事業と関係がない知人や友人との食事となると、やはり経費にするのは難しいでしょう」
――なるほど、あくまで事業と関係していることが重要なんですね。じゃあたとえば、キャバクラなんかで接待を受けた場合も経費にできるんでしょうか?
黒「キャバクラであっても、事業に関係して行われているのであれば問題なく経費にできますよ」
――……それはありがたいですね! ちなみに、「1人飲み」は交際費にできませんか? たとえば、「接待に使う飲食店の下見のために1人で飲食をした」という名目で交際費にすることとかできないですかね?
黒「1人での飲食については、意見が分かれるところですね。たしかに、『接待に使う飲食店の下見』ということであれば、交際費として経費計上できる可能性はあります。ただし、高級クラブでの1人飲み代金を経費に計上していた経営者が、東京高裁によって経費計上を否認されたケースもあります」
――やっぱり、けっこうグレーゾーンなんですね。
黒「ええ。なので、1人での飲食を経費にする場合は、自身で判断せず、税理士と相談したほうがいいでしょう」