タワマンといえば、カフェラウンジやフィットネスジムはじめ、そのラグジュアリーな共用施設を自由に使えることが醍醐味と考える人も多いでしょう。しかし一方で、それらは着実に月々のランニングコストを上げている要素であることを忘れてはいけません。今回は、不動産コンサルティング会社〈さくら事務所〉の創業者である長嶋修氏と〈さくら事務所〉の共著『マンションバブル41の落とし穴』(小学館)から一部抜粋し、マンション購入時に考えたい管理費などの問題についてご紹介します。

ラグジュアリーな共用施設こそタワマンの醍醐味だが…

タワマンに代表されるラグジュアリーな雰囲気の大規模マンションが人気です。ホテルライクな住空間を望む人は多く、共用施設が高級ホテル並みに充実しているマンションもたくさんあります。実際にあるマンションの共用施設の具体例を挙げてみましょう。

【飲食系】

住民専用レストラン、カフェラウンジ、バー

【運動・健康系】

フィットネスジム、プール、スパ・リラクゼーションルーム、大浴場、運動スペース

【その他】

24時間コンシェルジュ、ゲスト用宿泊施設、キッズルーム、スタディルーム、パーティールーム、ライブラリースペース、コンビニ、オーディオルーム、カラオケルーム

ほかにも、畑があったり、ドッグランがあったり、キャンプができるスペースがあったりと、マンションごとにさまざまな特色が見られます。

とはいえ大規模マンションならどこでも共用施設が充実しているというわけではありません。豪華なイメージのタワマンでも、それほど共用施設のない物件もあります。

どうせ選ぶなら、コンシェルジュがいて共用施設も充実している物件のほうが魅力的に映るかもしれませんが、ハイグレードな共用施設があればあるほど、マンションの管理費が高くなることを忘れてはいけません。

管理費とは、マンションの共用部分の維持・管理のために使われるお金で、たとえばエントランスや廊下、ゴミ置場などの清掃代、電気代、エレベーターの点検・修理費用などに充てられています。

最低限しか共用施設がないマンションであればこの程度ですが、前述のように共用施設が多い物件だと、それぞれの施設についてメンテナンス代がかかるため、管理費がどんどん膨れ上がっていきます。

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高いランニングコストを支払い続けなくてはならない

特にメンテナンス代が高いと言われるのは、プールやスパなどの水を使う施設で、水道代がかかるうえに定期的な清掃代、水温を一定に保つための電気代などで、年間数千万円ものコストがかかっているケースもあります。

このような共用施設をフル活用するなら、コストが高くても元は取れるかもしれませんが、ありがちなのは結局使わなくなるパターンです。最初は魅力的だと思ったプールやジムも、時間がなくてなかなか行けない、という人は多いもの。入居時に小さな子どもがいて、キッズルームが便利だと感じていたとしても、子どもが成長すれば必然的に足を運ばなくなります。

使わなくなっても設備がある限りはコストがかかり、そのコストはすべての住民が、利用頻度に関係なく分担することになります。

国土交通省の調査によると、マンションの管理費の全国平均は1㎡あたり200円程度が相場で、東京都区部に限って言うと、全国平均より1割ほど高くなります。

これに対し、共用施設の充実しているタワマンの管理費は1㎡あたり300円を超える場合が多く、なかには350円を超える物件も。管理費は原則として「専有部分の床面積割合」に応じて負担する金額が決まるので、専有部分が70㎡だとしたら、管理費だけで2万4,500円。これに修繕積立金が上乗せされれば、月々のランニングコストだけで3万〜4万円もかかってしまいます。

マンションによっては、後々になって「金食い虫」の共用施設の見直しを行っているところもあります。

たとえば、ファミリー向けマンションの場合、一次取得者層は小さな子どもがいる世帯が多いので、新築間もない頃にはキッズルームが大賑わい。しかし、10年も経つとその子どもたちはキッズルームに足を運ぶ年齢ではなくなったため、キッズルームをスタディルームに作り替えた事例があります。

また、国土交通省では一定の規模以上の建築物について、駐車場の附置義務を課しているため、大規模マンションには必ず駐車場があります。都心部の場合、機械式駐車場を設置しているケースが多いのですが、維持・管理費用は非常に高額。車離れの加速で利用者が減り、駐車場利用料の収入が減っているマンションも増えています。そのため、住民が総会で話し合った結果、機械式駐車場の埋め戻しという思い切った選択をした事例も。

豪華な共用施設は物件の目玉であり、資産性を高める役割も担っています。そのような施設が売りのマンションを検討する場合は、高いランニングコストを支払い続けることができるのか、よく考える必要があるでしょう。

長嶋 修

さくら事務所 会長