「私の職場はラブホなんです」驚きの告白をしたボイストレーナーの“最大の危機”

 最近よく耳にする「働き方改革」。時代の流れとともに、一昔前では考えられなかった視点や発想で、仕事の現場や環境が変わってきています。今回の男性は、そんなラブホの「じゃない使い方」で起こった一長一短を打ち明けてくれました。

◆リサイタルだけでは食べていけず…

「私はもともとクラシック畑出身なんです。東京の音楽大学で声楽を学び、その後数年は師匠のリサイタルの手伝いなどをしていたのですが、あるコンクールで入賞することができ、その辺から徐々に自分のリサイタルも開催できるようになりました。でも、華やかな舞台の割には生活は結構キツかったですね」

 そう話してくれたのは、ボイストレーナーという職業の本郷さん(仮名・34歳)です。長身で堀の深い顔をしたなかなかのイケメンでした。最近では、ジャンルを問わずいろんな歌手に歌唱指導を行っているといいます。

「最近は、ステージに立つことは減りましたが、その代わり、歌手を目指す生徒さんが徐々に増えてきて、以前より収入も増えてきました」

◆いつのまにかラブホが職場に

 口コミなどで生徒が増えたことはよかったのですが、レッスン場所の確保が目下悩みの種とのこと。

「以前までは、近くの貸し会議室や、自治会の多目的スペースを借りていたのですが、とにかくパフォーマンスが悪いんです。それほど大声で歌わせられないですし、場所自体の予約がなかなか取れなくて……。一時は少し大きめなカラオケボックスも利用したのですが、コスパが悪いんですよ」

 レッスン場所を転々と変えながら、とある生徒さんのアイデアでラブホでのレッスンを試みた本郷さん。

「劇団に通いながら、私のボーカルレッスンを受けているSさんという女性から『先生、ラブホって最近いろんな用途に利用できるんですよ。私も時々推し会とかやってます』と言われ、試しに都内のラブホをいろいろ調べたら、レッスンに最適であることが判明したんです。事前に人数や時間をホテル側に知らせておけば、クラス別のレッスンもできるので、もっと早く気づけばよかったです」

 ある程度の広さや、なんといっても防音が充実しているところなど、レッスン室をラブホにしてからより一層生徒が増えたといいます。

◆生徒にいきなり抱きつかれる

 少し厄介なことが起きたのは、月に数回設けている「プライベートレッスン」での出来事でした。

「とある上場企業で管理職をされている女性のMさんからの要望で、月に数回プライベートレッスンを行っていました。部屋を貸し切るのでレッスン費用はかなり高かったのですが、Mさんは財力があるのか、定期的に受講されていました。でも、ある日のレッスン中にいきなり『好きです、先生』と言って抱きつかれたんです」

 年齢より若く見えるMさんは、どちらかというと清楚な感じの美人だったようですが、想定外の彼女の行動に一瞬頭が真っ白になったという本郷さん。

「正直ドキッとしました。Mさんは美人だし、どちらかというと私のタイプだったので……。でも、彼女が私に抱きついている間、頭の中ではいろんな思考がぐるぐる回りました。私も普通の男性なので、ほとんど理性が消えうせそうになりましたが、生徒との不適切な関係で今まで築いてきたキャリアを失うかもと思った瞬間、私はMさんをやさしくソファに座らせることに成功しました」

 ソファに座り込んだMさんは、われに返ったのかしばらくして「ごめんなさい」とだけ言って、その日は帰っていったそうです。

 

◆ラブホオーナーから嬉しい知らせ

 Mさんとのアクシデントは、後に本郷さんにとってけがの功名となったようです。

「Mさんとの件以来、大学の後輩君をアシスタントに迎えました。彼も声楽出身で私と同じような素性の持ち主です。その結果、2人っきりでのレッスンは解消され、むしろ今までちゅうちょしていたプライベートレッスン希望者が増えたくらいです。あと、しばらく音沙汰がなかったMさんが再びレッスンに通ってくれるようになりました。これは嬉しかったですね」

 もはやラブホにとって「太客」となってしまった本郷さん。その型破りな手法にラブホのオーナーもかなり理解を示してくれたそうです。

「この前、いつものように利用料を支払っていたら、フロントの奥から初老の男性が出てきて『話は聞いています。今度、リニューアルを考えているので多目的ルームを作るので待っていてください』と言われたんです。もう嬉しくて嬉しくて、今までの苦労が吹っ飛びました!」

<TEXT/ベルクちゃん>

―[ラブホの珍エピソード]―

【ベルクちゃん】

愛犬ベルクちゃんと暮らすアラサー派遣社員兼業ライターです。趣味は絵を描くことと、愛犬と行く温泉旅行。将来の夢はペットホテル経営