現職からの「猛烈な引き留め」にあうケース
2つ目。これは転職活動を継続していないので似て非なるものですが、現職から猛烈な引き留めがあって立ち往生するケースがあります。
もう内定の書面にサインをしてどこかの会社に移ろうと決めていましたが、「辞めさせてほしい」という意志を現職に伝えたところ、上長から転職の引き留めに遭います。そして、実際には延命措置なのですが、辞める理由になった点について、処遇の改善、配置転換、遠隔地赴任などをすぐに実現するかのようにほのめかされます。
転職の目的自体を喪失させるような現職からの強い慰留を受けた場合、候補者は悩みます。これまでの不満や懸念点が改善されるのであれば、リスクを冒してまで環境を変えることはないと考えるようになるのです。特にご家族からそのような意見が出ることが多く、本人が一層悶々としてくるということがあります。それでどっちつかずになり、八方ふさがりになります。みなさまも心当たりがありませんでしょうか。
状況をすぐに伝えたほうがいいのに、もう少し先でいいのではないかと思い、ネガティブな連絡をポジティブな連絡のうしろに回す方がいます。そして転職先の担当者への連絡がずるずると遅れることになります。
人間は、保守と変革ではどうしても保守に傾きがちです。現職の重み、人間関係の濃密さ、ご家族の意見などは影響が大きいもので、結局強い慰留に負けて転職を断念してしまうのです。納得して辞退するのは仕方ないのですが、もともと転職をしたいという理由があったのですから、その目的を貫くことが正しいことになると感じています。
というのも、現職が引き留め工作のためにエサをぶら下げても結局は実行されないことも多いですし、企業は一度反旗を翻した人物を経営中枢に置くことはありません。その場しのぎ、時間稼ぎのために利用されたことを見抜けず、残ったことで結局キャリアダウンにつながることが多いのです。
(広告の後にも続きます)
入社時期の引き延ばしには慎重な対応を
ここで述べた2つの要素を踏まえ、入社時期の延長は絶対にしないことをおすすめします。引き延ばしやキャンセルの申し出を平然とする候補者も多いですが、ほとんどよい結果につながることはありません。
転職活動の堂々巡りは誰も得をすることがありませんので、引き延ばしに対しては極めて慎重な対応を取ってほしいと思います。
福留 拓人
東京エグゼクティブ・サーチ株式会社
代表取締役社長