『時間』は、あなたにとって大切なものですか?
たいていの人は「大切なものです」と答えますよね。
では、こちらの質問はどうでしょうか。
「時間」をあなたは大切にできていますか?
自信を持って「大切にできている」と答えられる人は、どのくらいいるのでしょうか。
時間を大切だと思っているのに、時間を大切にできていない。
時間はまるで呼吸するかのように、当たり前に過ぎていきます。
あまりにも自然なことなので、時間を常に意識して生きることはできないし、逆に意識しすぎると時間に縛られて、息苦しさを感じてしまうこともあります。
時間は、なかなかやっかいな存在です。
そんなやっかいな時間を自分の手に取り戻し、人生を豊かにするためにはどうしたらいいか。それがこの本のテーマです。
今回紹介する本は、『このプリン、いま食べるか? ガマンするか? 一生役立つ時間の法則』柿内尚文著(飛鳥新社)です。
筆者の柿内さんは、時間の考え方、使い方を変えたおかげで、やってみたいとずっと思っていたことが実現できるようになったそうです。
▶前回:「付き合うことがこんなにも難しいなんて…」出会いはあるのに、結婚相手に巡り会えないワケ
▼INDEX
1. 人生は「4つの時間」で構成されている
2. 人生の目的は「幸福の時間」を増やすこと
3. 「時間複利の法則」で時間の価値を変える
4. 本書のココがすごい!
1. 人生は「4つの時間」で構成されている
たまたま入った喫茶店に、おいしそうなプリンがありました。あなたはプリン好き。そのプリンを「食べたい!」と思いました。でも一方であなたは現在ダイエット中です。甘い物は控えています。
このような状況で出合ってしまったおいしそうなプリンを、あなたは食べますか?ガマンしますか?
一期一会の出合いだから食べる。いや、ダイエットを成功させるために我慢する。
脳内で葛藤が起こります。
「食べる」という「幸福の時間」を選ぶか、「我慢してダイエットする」という将来への「投資の時間」を選ぶか。
正解はありません。あるのは、あなたの選択です。
もし時間が無限に存在していれば、悩むことはないかもしれません。プリンを食べて、そのあとでダイエットすればいい。
でも、人生の時間には限りがあります。それはまるで砂時計のようなものです。時間という砂が、この瞬間もサーッと落ちています。
時間を考えることは「どう生きるかを考えること」でもあるのです。
時間を有意義に使うことは、人生を有意義に生きることと同じです。
まずは、実際に自分の時間が、どこに配分されているのかを知ることが大事です。そのためには、時間にはどういう時間があるかを知ることから始めます。
すべての時間は次の4つに分けられます。
1「幸福の時間」は、やりたいこと、喜びを得られることをして幸せを感じる時間。
2「投資の時間」は、目的のために努力している時間。
3「役割の時間」は、やらなければならないことをしている時間。
4「浪費の時間」は、無意識に過ごしてしまうムダだと感じる時間。
といっても完全にひとつずつに分けられない時間もあります。
「投資」と「幸福」がある時間もあれば「役割」と「幸福」両方がある時間もあります。
起きてから家を出るまでの準備時間を、4つの時間に仕分けするとどうなるでしょうか。
たとえば「顔を洗う」時間。この時間は多くの人にとっては顔を清潔にするための「役割の時間」です。でも、もし顔を洗うことを「喜び」に変換できれば、「幸福の時間」になります。
洗顔の時間が4つの時間のどれになるかが決まっているわけではありません。洗顔をどの時間にしたいかは、自分の思考と行動で変えられるのです。
顔を洗う時、洗面台に香りのいい石鹸やアロマオイルを用意してその日の気分で使い分けている。香りに癒やされ、いい気分になれますね。
そんな感じで、工夫次第で「役割の時間」を「幸福の時間」というように時間の意味を変えることができます。
2. 人生の目的は「幸福の時間」を増やすこと
日本人は死ぬ時に、もっともたくさんのお金を持っている、といわれています。
将来への不安がそうさせているのかもしれませんが、やってみたいことをガマンしてお金を貯めてそのまま生涯を終えたとしたら、それはもったいない。
時間は大切なものだけれど、大切にできていないという話を書きました。時間を大切にする1番の方法は、「幸福の時間」を増やすことではないでしょうか。
ただ誤解しないでほしいのですが、「幸福の時間」とは自分のやりたいことをひたすらやることだけではありません。
人に喜んでもらうことをすることも「幸福の時間」にできますし、将来に向けての努力をしていく「投資の時間」も、「幸福の時間」にすることはできます。ポイントは、その時間に「自分でどういう意味をつけるか」です。
ただ、あらためて考えると「幸福の時間」とはどんな時間でしょうか。
大好きな音楽を聴いた時、人からほめられた時、おいしい食事をしている時など、何か楽しいことをしている時や、仕事で成功した時など何か達成感を味わえる時。
また、温泉に入ったり、ゆっくりウォーキングをしたりと、ゆったりした気分になる時も「幸福の時間」といえます。
自分はどの時間が幸福感を得やすいかを知っておくと、「幸福の時間」を増やすことにつながります。
3. 「時間複利の法則」で時間の価値を変える
幸せの先送りをしてしまう人の特徴のひとつが、「やりたいこと」よりも「やらなければならないこと」を優先させてしまうことです。
会社員ならば組織やチームの中で役割があり、上司や部下から頼まれる仕事もあります。家事だったら掃除や洗濯をしないといけないということもあります。
「やらなければいけないこと」に使わないといけない時間が、人生にはかなりあります。特に、まじめな人はその傾向が強いかもしれません。
そんな時は、この考え方をぜひ身につけてください。
「やらなければならないこと」を「やりたいこと」に変換する、という考え方です。
「何かをやって、その成果としてごほうびをもらうのではなく、やること自体がごほうびになるようにする」
いい大学に入りたいから、受験勉強をがんばる。
営業の成績を上げたいから、仕事をがんばる。
など目的や目標を達成するために努力をする。そのために時間を使うと、これは「投資の時間」になります。
しかし、何かを達成すると、そのときは達成感や喜びがあるけれど、そういう感情はあまり長持ちせず、「また次の目標を達成しないといけない」という気持ちが生まれます。
果たしてがんばって達成することは幸せなのか。
やっていることそのものが楽しい、うれしい、幸せだと思えることにできるだけ時間を割くのが理想です。
それが「やらないといけないこと」を、まずは「やって楽しい」に変換するという考え方です。変換できると、明らかに「幸福の時間」を増やすことができます。
一気に変換するのは難しいかもしれませんが、徐々に変えていくことは可能です。
それは毎日「小さな変化」をしていくことです。
小さな変化を続けていくことを「時間の複利の法則」と僕は呼んでいます。
「複利」とは投資や預金などで使われる言葉で、投資で得た利子を元本に組み入れていく計算方法です。これにより利子がプラスされて投資のもとになる金額が増え、同じ利率で利益が出た場合、金額はどんどん大きくなります。
自分を変えていく時も、同じことがいえます。
「元の自分+変化した自分」がベースになっていくので、どんどん変化の度合いが増えていきます。
毎日の中に「小さな変化の時間」をつくり出し、その時間を積み重ねることで「大きな変化」につなげていきます。これが「時間複利の法則」です。
たとえば、僕は以前は仕事での会食が苦手でした。理由は会食を「仕事の手段」と考えていたからです。
仕事のためにその人と近づきたい、そのために食事に行く。そんな状況を変えたいと思い、ある時から会食の目的を変えました。
会食は仕事の手段(投資の時間)ではなく、相手と仲良くなるための「幸福の時間」にすることにしたのです。
すると少しずつではありますが、会食の時間価値が変化していきました。
今では楽しくて、幸福な時間に生まれ変わったのです。相手が変わったのではなく、自分が考えを変えただけで、時間の価値が大きく変化したのです。
時間の目的を変える。そして少しずつでいいから変化していく。これこそが、「役割の時間」や「投資の時間」を「幸福の時間」に変化させる方法です。
4. 本書のココがすごい!
今回紹介した『このプリン、いま食べるか? ガマンするか? 一生役立つ時間の法則』柿内尚文著(飛鳥新社)のすごいところは下記に集約される。
①“時間”を意識しないと、あっという間にこぼれ落ちてしまうものだと再認識。時間を改めて見つめ直すきっかけになる。
②「幸福の時間」を増やす具体的な方法が役に立つ。特に「やらなければならないこと」を「やって楽しい」に変換するという発想が新鮮。
【著者】 柿内 尚史(かきうち・たかふみ)
編集者、コンテンツマーケター。1968年生まれ。東京都出身。聖光学院高等学校、慶應義塾大学文学部卒業。読売広告社を経て出版業界に転職。現在、株式会社アスコム常務取締役。
長年、雑誌と書籍の編集に携わり、これまで企画した本やムックの累計発行部数は1,300万部以上、10万部を超えるベストセラーは55冊以上に及ぶ。
現在は本の編集だけでなく、編集という手法を活用した企業のマーケティングや事業構築、商品開発のサポート、セミナーや講演など多岐にわたり活動。
著書『パン屋ではおにぎりを売れ』『バナナの魅力を100文字で伝えてください』(共にかんき出版)はベストセラーに。
著者 X/https://x.com/blx9daibsapp5oo
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