贈与税というと「1年間に110万円までの贈与が非課税である(暦年課税)」という話はよく耳にすることがあると思いますが、それ以外にも様々な非課税の特例があります。
今回はその特例のうち、知っておくと役に立つ内容を厳選して4つお伝えしたいと思います。

1. 20年間連れ添った配偶者への贈与

婚姻期間が20年以上の夫婦の間において居住財産を贈与する場合や居住用財産を取得するための資金の贈与をした場合、2000万円まで贈与できる特例があります。この特例を「贈与税の配偶者控除」といいます。ご相談例を見てみましょう。

相談内容

妻と婚姻して22年になります。知人から「婚姻20年以上であれば、2000万円まで贈与しても税金はかからないよ」と教えてもらったので、自宅の2分の1(時価1800万円)を妻へ贈与しました。贈与税はかからないと思うのですが、何か注意点などありますか。

回答

今回のケースは「贈与税の配偶者控除」が適用され、贈与する財産の価額が2000万円以下ですので、贈与税はかかりません。さらに暦年課税の110万円非課税も適用されますので、最大2110万円まで贈与税はかかりません。

ただし、この特例の適用を受けるためには、贈与した翌年の3月15日までに、税務署に贈与税の申告が必要です。

配偶者への贈与の特例の要件や留意点とは

配偶者への贈与の特例を使うには、条件がいくつかあります。改めて要件や留意点を見てみましょう。

配偶者への贈与の特例の要件・留意点
夫婦の婚姻期間が20年を過ぎた後に贈与が行われていること
贈与する財産は次の2つのいずれかであること
・実際に住んでいる不動産(居住用不動産)
・これから住もうとする家を取得するための金銭の贈与
 ※取得する家は、新築・中古どちらでも可
 ※セカンドハウス(別荘)や投資不動産などの贈与や、これらを購入するための資金の贈与は認められない

この特例は、現在の配偶者と一生に一度だけ使えます。従って縁起でもないお話ですが、現在のパートナーと離婚・死別した後、新しいパートナーと再婚して婚姻期間が20年を経過すると、改めて使うことが可能です。

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2.2500万円の財産を贈与税0円で贈与できる特例 


金銭の贈与
【画像出典元】「stock.adobe.com/tiquitaca」

生前にまとまった資金を、子や孫に贈与できる特例もあります。具体的なご相談の例を見てみましょう。

相談内容

子供が2人(長男と次男)います。妻には先立たれました。長男は、私名義の土地に家を建てて住んでいます。
この度長男から「お父さんが生きている間に、家の敷地を譲ってほしい」と相談がありました。土地の時価は2000万円です。贈与税が心配なのですが、何か良い方法はありますか。

回答

要件を満たせば時価2000万円の土地を贈与税0円でご長男に生前贈与することが可能です。この制度のことを「相続時精算課税制度」といいます。

ご長男にとっては、お父様が亡くなる前に土地の権利をもらうことで一安心したいというケースで、よくあるご相談です。事前に遺言書を作成し、お父様が亡くなった後に土地を取得することもできますが、生前にしっかりとバトンタッチする方法としてこの特例は活用できます。

相続時精算課税制度の要件とは

相続時精算課税の要件は次の通りです。

原則として60歳以上の父母又は祖父母などからの贈与であること
受贈者(もらう人)は、18歳以上の子や孫であること

■押さえておきたいポイント

贈与する財産は、現金預金、不動産、株式などの制限はない
相続時精算課税制度を適用した場合は、その贈与者と受贈者の間では「暦年課税」をその年以降、使うことができない
相続時精算課税制度を適用する場合は、翌年の3月15日までに税務署で贈与税の申告が必要
贈与時に贈与税はかからないが、贈与者(父母・祖父母)が死亡した時は計算上、贈与を受けた財産評価額を相続税財産に足して計算する

■伝えておきたい大切なこと

この特例を使う時は、税理士に事前に相談することをおすすめします。3月15日までの申告期限を1日でも遅れるとこの特例は使えずに通常の贈与(暦年課税)となり、高額な贈与税が発生するケースもあります。

令和6年1月1日より税制改正で使い勝手がよくなった制度でもありますので、うまく活用すれば、上手な贈与スキームができます。
参考 国税庁HP