「マジで米売ってない」SNSで“米不足”指摘する声続々も…「需給はひっ迫してない」のに品薄感じる理由とは?

米の値段高騰や在庫不足が連日、テレビやネットニュースなどで報じられ話題となっている。

弁護士JP編集部では7月、「また平成の頃のように米騒動が起こるのか」といったSNS上の心配の声を受け、米の需給などについて、農林水産省の担当者に聞いている。

担当者は「需給が逼迫(ひっぱく)している状況ではない」としつつ、新米が出回るまでの入れ替わりの時期であることなどを理由に「局所的に不足感が出ているのでは」と説明していた。

「スーパーに米がない」SNSで米騒動心配する声も農水省「93年とは状況違う」冷静な対応を呼びかけるワケ

しかしながら、その後約1か月が過ぎたものの、依然として米不足や価格の高騰を心配する声はやまない。

SNS上では「4店舗周ってマジで米売ってない」「店変えれば入手は可能。でも、高いな~」といった声があがっている一方、「スーパーに行ったら、山ほどあった」「本日行ったスーパーは米の山でした」との投稿も見受けられ、地域間で米の供給量に格差が生じている実態があるようだ。

不足感続くも「米の需給は逼迫していない」

改めて現在の米の需給とその現状について、前出の農林水産省担当者は再度の取材に対し、「今の認識としても、米の需給は逼迫していない」と回答した。

「たしかに、6月末のお米の民間在庫量は156万トンと、前年の197万トンから減っています。この数字は、2021年や2022年の数字と比べて少ない数値であることは間違いありません。

ですが、そもそも米の年間需要量は近年、年間約10万トンずつ減っていることがわかっています。需要量が減れば、当然、必要な在庫量も減少します。

その年の需要量に対する、6月末の民間在庫の割合を比べたところ、今年は22.2%でした。過去には2011年に22.0%、2012年に22.1%となったこともあり、決して過去になかった水準ではありません。


農林水産省「米に関するマンスリーレポート(令和6年8月)」より

2011年や2012年は東日本大震災の影響もあり、一時的には、物流が混乱したり、いろいろな物がなくなったりということが起こっていたかと思いますが、年間を通じて『お米が食べられなかった』という状況ではなかったと思います」(農林水産省担当者)

「今が一番在庫がタイトな時期」

ただ、担当者も前回取材時と比べて「変化」を感じているという。

「南海トラフ地震臨時情報の呼びかけがあったり、神奈川県で地震が連続的に発生したりするなどして、水や食糧の買い占め・買いだめというような消費行動があり、その影響が米にも一部出ているのではという見方をする流通業者さんもいらっしゃいます。

お米は年に1作ですから、例年、収穫前が一番在庫がタイトな時期となります。

昨年や一昨年は過剰在庫がたくさんあったため、この時期に在庫のタイト感はありませんでしたが、通常8月というのは在庫が一番少ない時期です。

そして、新米が出回るまでの、在庫でなんとかつないでいく時期に、地震による備蓄需要が増加したことが、今の “品薄感”や “高騰感”につながっている可能性があります」(同前)

また、2024年産のお米についても、具体的な数値はまだ出ていないものの、産地から話を聞く限りでは十分な収穫量を見込んでおり、来年1年間の需要量に対して、今年の持ち越し在庫と今年収穫するお米の量が下回ることはなさそうだという。

食糧の備蓄、目安は?

過去にも、それまで準備をしていなかった人たちが途端に“備蓄”をはじめたことで“騒動”が発生することがあり、たとえばコロナ禍では、学校給食が止まった影響などから、米や麺類の買いだめが行われ、欠品が出るなどしていた。

では、どのように食糧を備蓄するべきなのだろうか。

農水省では食糧を日常の生活で消費しながら、少し多めに購入し備蓄するという「ローリングストック」を奨励しているとのことで、HPでは「災害時に備えた食品ストックガイド」を公開している。

農水省の別の担当者は「特にお米を何日分用意するとかではなく、麺類などいろいろなもので、まずは3日分の食糧を。そしてできるようであれば1週間分の食糧を備えるよう呼びかけています」と備蓄の目安を説明する。

「買い占め」や「買いだめ」は混乱を生じさせる可能性があるだけでなく、同じ時期に購入することで一気に賞味期限が訪れるといった問題もあり、効率的とは言えない。普段から「万が一」を意識し、日常生活の中に備蓄を取り入れていくことが肝要だろう。