共働き夫婦が約7割を占める現代において「稼ぐ妻」が世帯年収を押し上げ、存在感を増している。これを戦略的に捉え、「妻の稼ぎを伸ばす」ことで世帯年収を倍増させている者たちがいる。彼らに共通するものは何なのか。新時代の夫婦の戦略を解明していく!
◆妻の住む東京に夫が転居
夫(39歳)/年収800万円
妻(42歳)/年収900万円
妻の稼ぎを伸ばすことで世帯年収を激増させる。そんな新しい夫婦像を採用する人たちが増え始めている。製薬会社の大阪本社で営業職に就いていた伊東隆史さん(仮名・39歳)は、妻となる春香さん(仮名・42歳)の働きぶりに先見の明を持ち、今から10年前に大阪から彼女の住む東京に居住地を移した。
「大手上場の金融会社に勤務する彼女は社内での評価が抜群で、僕なんかより将来性は高く、出世も見込めました。転職で彼女のキャリアを棒に振るのはもったいないと思い、逆に僕が東京支社に異動することに決めました」
◆夫の支えで妻の年収がアップ!
4年前に春香さんが管理職へのスピード出世を果たしたのを機に、家事の分担割合の見直しを図ったという。
「妻の仕事がかなりハードになったので、彼女に余計な気遣いをかけぬよう、便利家電を購入し、自分ひとりで家事が完結する環境を整えました」
隆史さんのバックアップを力に変えた春香さんは、今年からエリア全体の管理を任されるように。年収も4年前と比べ、100万円アップの900万円と、世帯年収2000万円オーバーも射程圏内だ。
◆女性が活躍できる環境は…
女性推進の波について、男女の賃金格差の是正は喫緊の課題と前置きしつつ、経済学者の山口慎太郎氏は分析する。
「上場企業は有価証券報告書に『女性管理職比率』や『男女の賃金の差異』などを載せないといけません。当然、投資家からも厳しい目を向けられます。人手不足が深刻になりやすい中小企業にとっても、女性が活躍できる環境を用意する必要性が高まっています」
◆専門家も“妻の大黒柱化”を推奨
働き方評論家の常見陽平氏も、この時勢を摑んだ“妻の大黒柱化”を推奨する。
「実質賃金が27か月ぶりにプラス転換したとはいえ、長期的な推移を見ると、夫婦どちらかの収入に依存するのはリスクが高い。『妻のほうが将来性のある企業だから辞めないほうがいい』といった夫婦の声を耳にする機会も増えてきた。女性が大黒柱的な役割を担うのも賢い生存戦略の一つです」
【経済学者 山口慎太郎氏】
「家族の経済学」と「労働経済学」を専門とする東京大学経済学部教授。著書に『「家族の幸せ」の経済学』(光文社新書)など
【働き方評論家 常見陽平氏】
労働社会学を専攻とする千葉商科大学国際教養学部准教授。多様な視点で働き方事情を分析する人材コンサルタントとしても活躍する
取材・文/週刊SPA!編集部 イラスト/川崎タカオ
※8月20日発売の週刊SPA!特集「[夫婦で稼ぐ]の新常識」より
―[[夫婦で稼ぐ]の新常識]―