「自治体主導の婚活」の弱点は“母数の少なさ”。「会ったことがある人ばかり」状態を避ける方法

 こんにちは。結婚相談所「マリーミー」で代表を務める植草美幸です。設立15年、累計約1000組以上のカップルを成婚に導いてきました。

 今年2月に放映された、『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系)での特集をご覧になられた方もいらっしゃるでしょうか。番組の内容は、当社の婚活中の会員の方々に密着したもので、大変な反響をいただきました。

 本連載では、特に男性向けの恋愛や婚活のノウハウを、婚活最前線の現場からご紹介いたします。もしあなたがモテたいと思うなら、結婚したいのならば。実績に裏打ちされた自信がありますから、覚悟してついてきてくださいね。

◆「婚活」は​​国を挙げて取り組む課題に

 今回のテーマは「官製婚活」、つまり官主導型の婚活サービスについて。

 東京都が始めたマッチングアプリ「TOKYOふたりSTORY」をはじめ、各自治体の婚活支援が話題になっていますね。

 国レベルでも動き出しており、「若者のライフデザインや出会いの支援」という形で、未婚者をサポートする取り組みの検討が始まりました。

 というのも、「結婚したいのに、できていない」人の数は、おそらくみなさんが想像されるよりも多いのです。婚姻歴のない30代男女のうち、5割近くが結婚願望を持っているとの統計*1が出ています。

 婚姻件数が戦後初めて50万組を下回った*2なか、「婚活」は​​国を挙げて取り組む課題になっているのでしょう。

◆「費用がかからない」からこそ、とりあえず始めて良いかも

 いきなり結論を述べると、「官主導の婚活サービス」最大の特色は「費用がかからない」、もしくは相当に安価であること。「結婚したいけど、なにから始めていいのやら」なんて悩むくらいなら、なにも考えずにとりあえず始めてしまってよいと思います。

 婚活支援策の内容は、官民ともに大別すると3種類です。マッチングアプリ型、婚活パーティー型、結婚相談所型の3つですが、官主導の場合はどのサービスが受けられるかはお住まいの自治体次第。

「始めたはよいが、成果が上がらない」場合は、サービス内容との相性が悪い可能性が高いです。それぞれの特徴と、向き不向きについて紹介してまいりましょう。

◆マッチングアプリにおける最大の難点は…

 マッチングアプリは、結婚相手との出会いの場としてもトップになり、すっかりメジャーな存在です。

 民間サービスにおいても費用は比較的安価で、スマートフォンからすぐに始められる気軽さがあり、アプリをインストールしたことがある方は多いのではないでしょうか。

 ただマッチングアプリにおける最大の難点は、「相手の素性がわからない」ことです。普及にともなって、私の元にはマッチングアプリで「ロマンス詐欺」の被害に遭われてしまった方も来られています。

 もっともよく聞くのは、なんと一度も会わないままに大金を騙し取られてしまうケース。彼ら彼女らは、オンライン上で好意を獲得したのち、「結婚資金のため」「将来へのライフプランを共有できる人がいい」などと巧妙に騙り、投資詐欺を行っているようです。

 結婚特化型のアプリでは、「独身証明書」や「源泉徴収票」の登録が必要なものもありますが、あくまで一部のサービスに限られます。その確認体制や悪質ユーザーへの対応も、運営元によって大きな差があるでしょう。

◆結婚を目標にするならば、「アプリ利用は1年」を目安に

 官主導型のマッチングアプリでは、身元の確からしさへの安心感があるのが大きなメリットです。もし利用できるサービスがあれば、「ものは試し」と始めてもよいかもしれません。

 ただし、良縁が見つかるかは人によります。民間のアプリでまったく成果が上がらなかった人が、官製アプリでは上手くいく――そんな上手い話は、残念ながらありません。

 したがって、「結婚したい人」がマッチングアプリで活動するのは、官民問わず時間を区切るのが賢明です。恋愛目的なら別として、結婚を目標にする方は、アプリ利用は1年を目安と考えましょう。

 どんな運営元であっても、アプリ型では本人の積極性や「モテ度」が大きく問われます。恋愛慣れしている人がより効率的に相手を探せるサービスであって、恋愛が苦手な人が一発大逆転できるサービスではないのです。

◆お見合いパーティーもまた「弱肉強食」の世界

 はじめから対面で話せる安心感があり、より本気度が高い人が多いのがお見合いパーティー。ただ、パーティー単体で提供しているサービスでは、アプリと変わらず「弱肉強食」の世界です。

 モテる人は自分の条件に合う人がいさえすれば、あっさりカップリングして去っていきます。その反対の人たちは……いわずもがなです。

 結婚相談所型としては、自治体によって「仲人さん」の役割を果たしてくれる「相談員」を抱えている場合があります。もしご自身の自治体がそのパターンであれば、かなりラッキーです。なぜなら、そういうサービスの提供がある自治体はまだまだ数少ないのです。

 私は以前からそういった自治体向けの講演を行ったり、サポートをして来ましたが、相談員の皆さんが目指されていたのは結婚相談所に近いサービス。アプリ利用やパーティーへの単発参加より、少しハードルがあがるので尻込みする方もあるかもしれません。

 けれど、一人で良縁を掴むことができない方には、第三者のアドバイスやサポートがなにより効果的であり、必要なのです。ですから無料または格安で相談員さんがサポートしてくれるタイプの「官製婚活」は、恋愛に自信がない人には心強いでしょう。

◆気づけば「会ったことがある人ばかり」に

 他方で、民間型よりも登録人数が少ないのが、官型のウィークポイントです。民間の結婚相談所では、各相談所内の登録者に限らず、連盟に加盟している相談所同士で登録者を紹介しあえます。連盟は国内に複数存在し、多いところの登録者数は9万人超にもなります。

 自治体が運営しているものだと、自治体ごとに利用者情報が完結してしまうので、母数がどうしても少なくなってしまいます。何度もパーティーに参加すると、気づけば「会ったことがある人ばかり」になってしまうこともあるようです。

 ですから、官製の場合は「お見合いパーティー」型でも「結婚相談所」型であっても、進展がなければ、やはり1年を目安に見切りをつけた方がよいでしょう。

 もちろん、スタッフの力量にも大きく左右されます。これは民間であっても同様なので、ご自身に進歩がないと感じたら、思い切って活動する場所を変えてみてください。

◆モテなくても結婚はできるが…

「結婚は絶対」とする同調圧力は薄れ、結婚をするもしないも本人のライフプラン次第という価値観がすっかり広がりました。かつてよりも個人の意思が尊重される、素敵な時代になりつつあると思います。

 ただ、「人それぞれ」の認識が共有されたことで、お節介を焼いてくれる人はいなくなりました。

 望むと望まざると昔であれば、あれこれ振る舞いに口を挟んでくる人や、独身者に縁談を持ち込んだりする人がいたものです。

 無用なプレッシャーをかけられたり、セクハラまがいの言葉に翻弄されづらくなり、より快適な暮らしができるようになった反面、「モテないし受け身だが、結婚したい」人が結婚できなくなったのが現代です。

 もしあなたが結婚したいなら、どんな形であれ、とにかく一歩踏み出しましょう。その「第一歩」への選択肢として、官製婚活は有力だと思っています。

 モテなくても結婚はできますが、受け身のままでは結婚できない時代です。勇気を出して、飛び込んでみてくださいね。

<TEXT/植草美幸>

*1……内閣府「男女共同参画白書 令和4年版」 第2節「結婚と家族を取り巻く状況」より

*2……厚生労働省「令和5年(2023) 人口動態統計月報年計(概数)」より

【植草美幸】

結婚相談所マリーミー代表取締役、恋愛・婚活アドバイザー。 1995年にアパレル業界に特化した人材派遣会社エムエスピーを創業。そこで培ったマッチング能力・人材発掘力を生かし、2009年に結婚相談所マリーミーを設立。日々カウンセリングを行いながら、セミナーの開催、テレビやラジオへの出演など幅広く活動中。著書に『ワガママな女におなりなさい 「婚活の壁」に効く秘密のアドバイス』(講談社)、『モテ理論』(PHP文庫)など