さまざまな事情を抱えた人たちが利用するラブホテル。一般的には、ドキドキ、ワクワクしながら、ときにはソワソワと向かう場所だ。
実家がラブホ街にあり、学生時代はラブホで清掃員のアルバイトをしていた前田裕子さん(仮名・20代)。今回は、ラブホの休業日にやることや、“出禁”になる客について教えてくれた。
◆ラブホの休業日は年に数回「大掃除」をする
「新紙幣が発行されましたね。バイトをしていたラブホでは、新紙幣の発行前になると臨時休業になっていました」
これは、自動精算機を新紙幣対応の機械に交換するためだったそうだが、そもそも「ラブホにも休業日ってあるの?」とよく聞かれるという。
「もちろんあります。年に数日ですが、敷地内の植物の剪定(せんてい)、レイアウト替え、シーツなどのリネン類のチェック、廊下に置いてある家具の交換作業などを一気に行います。
このほかにも、ベッドマットレスの交換や、たばこの焦げなどで汚れた部屋のカーペットの交換、外壁の洗浄、ガラス拭きなど、大がかりな作業が行われますね。
つまり営業はしていないけど働いていて、いつも動かさないものを移動させるので、『なぜ、コレがここに……』というような“物”が発見されるんです」
通常の勤務では、人と会わないようにコソコソとしているスタッフたちは、「お客様がいない=隠れなくてよい」という解放感からか変なテンションになり、“こんな物見つけました大会”が開催されるという。
◆フォトブックや干からびたウインナー、差し歯が発見され…
「ベッドの下からフォトブックが発見されたこともありました。きっと、彼女が彼氏と撮った写真を使って手作りしたものだと思います」
しばらく保管していたのだが、客からの連絡がなく処分したそうだ。事務所に保管していたため、スタッフたちがパラパラとめくると、「まぁ、最近の子ってすごいわね」という内容だった。
「もしかすると、ドン引きした彼氏が“うっかりを装って”置いていったのかもしれませんね。
あと、干からびたウインナーが1本だけ出てきたときも驚きましたね。それはマットレスの下にあったのですが、『ぎゃー!』と、見つけたスタッフは悲鳴を上げていました。大きさや太さから、“人間の指”に見えて、『切り落とされた指が落ちてる!』と思ってしまったらしいです」
ほかにも“差し歯”が見つかったことも。
「何かの拍子に……とは考えづらいソファーの隙間から発見されました。形状からして前歯だったんですけど、『くしゃみで落ちた?』『無理やり迫った女性に殴られて吹っ飛んだ?』と、いろんな憶測が飛び交いました」
ラブホの休業日は、スタッフ全員が顔をあわせる稀な機会でもあり、大掃除が終わったあとは、飲み会が開催されるそうだ。
◆ラブホに迷惑をかけて出禁になった客
普通に生活をしていれば、出入り禁止(以降、出禁)になることはない気もするが、意外とどの業界にも該当者はいるようだ。
「もちろんラブホにも出禁になるお客様はいます。事件性があればできるだけ警察に協力するんですが、宿泊名簿を書くことはないので、名前の特定はほぼできません」
では、どんな客が出禁になるのだろうか。
「まずは、当たり前ですが、ラブホに迷惑をかけた人は出禁です。ただ、人物特定が難しいので、車のナンバーで確認しています。備品を壊されたり、女性を無理やり連れ込もうとしたり。女性からオーナーに助けを求められたこともあります」
普段は温厚なオーナーが、そのときばかりは怒り狂い“プチ制裁”をしていたという。
その“プチ制裁”とは、駐車した車のナンバーを隠すために使う「ついたて」を、迷惑客の車1周に立てかけたそうだ。
◆勝手に撮影していた自称YouTuberも出禁に…
また、プライバシーが重要視されるラブホを勝手に撮影していた“自称YouTuber”もいたそうだ。
「YouTuberに関しては、私のバイト先だけではありません。正規の料金を払い部屋を利用するだけならよいのですが、“おすすめのラブホ”というような動画を撮影するためなのか、ラブホの外観を勝手に撮影したり看板や入口付近をウロウロしたり、利用客が入りにくい状態になることは、立派な営業妨害かなと。最近は、YouTuberの中でレトロなラブホの撮影が多いようです」
“ラブホに出入りはしていないけど、出禁になっている”という矛盾が生じているという(笑)。YouTuber以外にも半日くらいにわたってラブホ街をウロウロしている人もいるのだとか。
「撮影ではなく、あくまで個人的な趣味なら営業妨害にはならないのですが、ラブホから音漏れしているところを探して、ニヤニヤしながら聞き耳を立てている人もいるんです」
近年は減ってきたが、ラブホから出てきたカップルを見てニヤニヤするために、入り口付近で佇む人も一定数いるそうだ。
◆出禁を言い渡された人の反応は?
前田さんが、「実家がラブホ街」と言うと必ず、「音漏れする? 声聞こえるの?」と聞かれるようだが……。「聞こえません!」ときっぱり。
ちなみに、出禁になった人たちはどのような反応をするのかを、前田さんに聞いてみた。
「普通に『あぁ……そう』みたいな感じでしたね。『あなたは出禁です!』という言い方はしなかったのですが、“ホテルならほかにもある”くらいの感覚なんでしょう」
<取材・文/資産もとお>
―[ラブホの珍エピソード]―