自分たちと娘孫の将来を心配しだしたA夫婦
A夫婦はふたりで話し合い、どんなことがあってもC子さんの味方でいようと固く誓いました。しかし一方で、今後C子さんとD君を養うことになった場合、老後のプランを大幅に修正する必要がありそうです。そこで、旧知の仲である筆者のもとへ相談に訪れたのでした。
A夫婦から話を聞いた筆者は、まず夫婦だけの今後の家計収支の推移を確認しました。
・実収入……24万円4,580円
・支出……28万2,499円(税金や保険料(非消費支出)3万1,538円+消費支出25万0,959円)
消費の内容には違いがあるものの、総務省の家計調査※と収支共にほぼ同額。足りない分は計画的に貯蓄を取り崩すことで、生涯難なく生活ができそうでした。
※ 総務省「家計調査報告(家計収支編)2023年平均結果の概要」より
A夫婦に今後収入が増える見込みはないため、娘と孫を支援することとなった場合、A夫婦の支出を減らしたり、貯蓄の取り崩し額を増やしたりすることが最善の方法となります。
とは言うものの、短期の援助はできても、長期間この状態を続けていてはA夫婦の家計が破産しかねません。
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想像以上に厳しい…母子世帯をとりまく実情
厚生労働省「令和5年(2023)人口動態統計月報年計(概数)の概況」によると、令和5年の離婚件数は18万3,808組でした。
また、同省の「令和3年度全国ひとり親世帯等調査結果の概要(抜粋)」で「母子家庭」について、次のような調査結果が報告されています。
■母子世帯は119.万世帯で、ひとり親世帯になった理由の93.5%が離婚などの「生別」。
■母子世帯の母の平均年齢は41.9歳で、末子の平均年齢は11.2歳。
■親と同居する母子世帯は24.2%。
■母の就業状況は86.3%。雇用形態は、「正規の職員・従業員」48.8%、「パート・アルバイト等」38.8%など。
■母子世帯の母自身の令和2年の平均年間収入※1は272万円。母自身の平均年間就労収入は236万円、母子世帯※2の平均年間収入(平均世帯人員3.18人)は373万円。
※1 生活保護法に基づく給付、児童扶養手当等の社会保障給付金、就労収入、別れた配偶者からの養育費、親からの仕送り、家賃・地代などを加えた全ての収入の額。
※2 同居親族の収入を含めた世帯全員の収入。
■養育費の取り決め状況は、「取り決めをしている」が母子世帯で46.7%。離婚した父親からの養育費の受給状況は、「現在も受けている」が28.1%で、平均月額(養育費の額が決まっている世帯)は50,485円。
現在小学校2年生のD君の教育費は、高校まで公立で、私立の大学に自宅から通学すると仮定した場合、合計で約570万0,529円※必要です。しかしあくまで統計上の数値で、進学塾の月謝など、これ以上に必要となる可能性もあるでしょう。
※ 小学校から高校は、文部科学省「令和3年度子供の学習費調査」。大学は同省「私立大学等の令和5年度入学者に係る学生納付金等調査結果について」を参考に筆者が算出。
そのようななかで、C子さんは自宅に戻らないと決意して実家に戻ってきたのであれば、自身とD君の分の生活費を実家に入れるために仕事を探すことも大切です。
そしてなにより、ここは「D君の気持ち」を念頭に行動すべきでしょう。可能なら、元の鞘に収まるのがいいのかもしれません。
牧野 寿和
牧野FP事務所合同会社
代表社員