3.エッセンシャルワーカーの3つの課題と対策・支援事例
(1)低賃金問題
エッセンシャルワーカーとして注目されやすい医療・福祉、運送業・郵便業などの賃金は、平均を下回るケースが多いです。
厚生労働省「令和5年賃金構造基本統計調査の概況」より作成
エッセンシャルワーカーが提供するサービスは、誰でも利用できるよう価格が抑えられていることが多いため、結果として従業員の給料も比較的低くなりやすい傾向にあります。
ただし、一概に低いとは言い切れません。電気・ガスなどの生活インフラ業界は大企業が多く、平均勤続年数が長いため、全業界トップクラスの給料を誇ります。
対策・支援事例
この課題に対し政府は、医療、介護、保育などの社会保障領域において、診療報酬や介護報酬、子ども・子育て支援制度など公定価格の改善を推進しています。
たとえば介護領域では、3年ごとに介護報酬が改定されており、2009年から2022年の間に月額4万3,000円処遇が改善され、今後も継続して改善されていくことが予想されます。
(2)2025年・2040年問題
2025年問題とは、高齢化が進むことによって起こりうる、社会保障費負担の増加や、労働力の減少・経済の縮小などの問題を指します。
国立社会保障・人口問題研究所「人口ピラミッド」より作成
厚生労働省によると、2025年に必要とされる介護職員数は243万人、看護師は195万人です。しかし介護職員は2022年時点で215.4万人、看護師は2020年時点で173.4万人不足しているのが現状です。
また、2040年には高齢者人口増加のピークを迎え、国民の4人に1人が後期高齢者となり、2040年問題としてより深刻化すると予想されています。
対策・支援事例
これらの課題に対し国や自治体は、医療費や介護費などの自己負担額の見直しや、資格取得希望者への支援制度の整備、エッセンシャルワーカーへの支援事業の実施など、医療・介護人材の離職防止と新規人材の獲得に力を入れています。
たとえば、東京都では2024年6月より、介護職員やケアマネジャーなどの給与を月1万〜2万円引き上げる「居宅支援特別手当」の受付を開始し、介護職員の処遇の改善を進めています。
また、大阪市では2023年から2024年にかけて「大阪府社会福祉施設等従事者支援事業(第2弾)」として、介護・保健・保育などの福祉施設へ従事する約41.4万人を対象に、2万円分のギフトカードを配付する事業を実施し、エッセンシャルワーカーへの感謝の意を示しています。
(3)長時間労働問題
2019年に働き方改革関連法が施行され、多くの職種で時間外労働時間に上限が設定されました。運送業や医師など、急な切り替えが難しい業種や職種には準備期間として適用までに5年間の猶予が設けられましたが、2024年4月よりドライバーは年360時間、医師は年960時間の上限が適用されています。
しかし、医療・運送の現場では、猶予期間中に新型コロナウイルスの対応に追われて準備が進まず、現在は労働力の不足が深刻化しています。
対策・支援事例
医療現場の課題に対し政府は、看護師や薬剤師などの医療従事者が担当できる業務範囲を広げる法令改正をおこないました。これによって、医師に偏在していた負担を軽減するタスクシフト・シェアを促進しています。
また物流に関する課題に対し国土交通省は、対策をまとめた「物流革新に向けた政策パッケージ」を策定しました。効率化につながる設備やDX化などへの投資支援や、配送を急がないものを鉄道や船での輸送に切り替える「モーダルシフト」の推進などにより、労働時間や輸送量の削減を目指しています。
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4.エッセンシャルワーカーの担い手を増やすには
エッセンシャルワーカーの需要が拡大する反面、賃金問題や高齢化による働き手の減少など、さまざまな問題が顕在化しています。
これらに対応するため、各業界および事業所単位でDX化やAIの導入、ワークライフバランスの見直しといった業務改善が進められています。
さらに、この問題を解決するには、消費者側の意識改革も必要不可欠です。私たちが日常的に利用している医療や福祉サービス、物流の安定供給は、多くのエッセンシャルワーカーによって支えられています。それを当たり前と思わず、裏で支える人々を認識することが大切です。
安心して働ける職場環境の実現と、利用者の意識改革がエッセンシャルワーカーの担い手を増やす重要な要素となるでしょう。
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参考
厚生労働省|緊急事態宣言時に事業の継続が求められる事業者厚生労働省|令和5年賃金構造基本統計調査の概況