コミュニティでUGCを創出。新規顧客の獲得につなげる

小父内 次に、「コミュニティ活用」について伺います。御社では2023年1月に、ユーザーコミュニティ「スバ学(https://community.subaru.jp/)」をオープンしています。コミュニティを活用しようと考えた背景について、教えてください。

安室 コミュニティの開設には短期的な狙いと長期的な狙いがそれぞれあります。短期的な狙いには2つあって、1つ目はアクイジションです。コミュニティの開設はロイヤル顧客に向けたものだと思われがちなのですが、それだけではありません。鍵となるのは、やはりUGC(ユーザー生成コンテンツ)です。特に安全性に関するお客様からの口コミが重要となります。具体的には「事故に遭ったけどSUBARU車だから大丈夫でした」というような書き込みですね。

実は全国のお客様からSUBARU宛てにお手紙がたくさん届いているのです。ただ、お手紙だと公開するわけにもいかないので、コミュニティ内で積極的に発信していっていただけるとありがたいと考えています。事実というのは本当に強いもので、お客様からのエピソードは他のお客様への強いアピールになると考えています。

安全性に関するUGCを発信していただき、SUBARU車を購入したことがないお客様がその口コミを見てくれることを期待しています。短期的には安全性に関するUGCを創出し、新規顧客の獲得につなげていきたいです。

短期的な狙いの2つ目はロイヤル化です。先ほどもお話ししましたが、SUBARU車は長距離を運転しても疲れにくいのが大きな強みです。ロイヤル化するお客様の多くはそのことを実感しています。

また、自分が購入した車の性能が良いと、他の人に話したくなるお客様が多いので、居酒屋で友人と飲みながらSUBARU車の良さを話してもらうような感覚で、コミュニティサイト内でそういう話をしていただこうと考えました。コミュニティでは投稿されたものがどんどん溜まってアセットになるのが大きな強みだと思います。

小父内 そうですね。コミュニティはユーザーの投稿(声)が企業のアセットになることも魅力のひとつです。続いて、中長期的な狙いについても教えてください。

安室 中長期的な狙いとしては、SUBARU車を開発している技術者とお客様との距離を縮めていきたいと考えています。世の中の変化が激しいなかで、今までと同様のものづくりをしていたら市場で戦っていけなくなると考えています。そこで重要になるのが、技術者がお客様のニーズを正確かつ深く理解することです。

作り手がお客様のことを理解していなければ、決して良い車は作れないと考えています。一朝一夕にはいかないと思いますが、コミュニティが育ってくれば、より近い距離で技術者とお客様が交流できます。中長期的には技術者がお客様を理解できる場にしていければと思っています。

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データ基盤とコミュニティの行動を連携させて分析

小父内 コミュニティを始めたことで、顧客と双方向のコミュニケーションが気軽に取れるようになったことは、大きなメリットですよね。社員からの反応はどうでしたか?

安室 社内のメンバーからはとても高評価で、ポジティブな声をたくさんかけてもらっています。役員陣からも好評で、コミュニティを見ているメンバーも多いですね。これから社内報でも「スバ学」について発信していく予定です。

小父内 社内でも好評なユーザーコミュニティ「スバ学」では、コミュニティ内でどのような施策を行っているのですか?

安室 コミュニティ内には、いくつかのカテゴリーがあります。「保健室」では、SUBARUの車に乗っていたから命が助かった、というようなエピソードを投稿していただいています。また、部活などもあり、キャンプ&アウトドア部や旅行部などがあります。趣味の軸で好きな人同士が集まってトークできるような環境を整えています。

小父内 SUBARU車と日常が溶け合っているコミュニティというイメージですね。コミュニティを活性化させるためにしたことがあれば、教えてください。

安室 最初にSUBARUが本当に大好きなアンバサダーの人を募り、そのアンバサダーのみなさんにプレオープンという形で参加してもらいました。熱量の高い人たちを最初に巻き込むことで、コミュニティを盛り上げていきました。アンバサダーに関しては、オーナー向けのアプリである「マイスバル」から募集しました。オフラインのイベントを都内で開催したのですが、四国から参加してくださった方もいらっしゃいましたね。

小父内 四国からですか。その方のロイヤルティの高さが、そのまま行動に表れていますね。しっかりと注目度を高めて開設した「スバ学」ですが、その後のPRは、どのように進めたのでしょうか?

安室 まずはSUBARUのお客様に認知していただくことが重要だと考えたので、SUBARUの会員向けの雑誌で、「スバ学」の特集を組んでご案内していきました。また、店舗でもセールス担当者からお客様にお伝えしていきましたね。あとはSUBARU社員に対しても積極的に宣伝していっています。

小父内 信也

株式会社Asobica

取締役CCO