1ドル4万円超えの世界 が夢とハジけた2024年8月5日。この日、世紀の株価大暴落と呼ばれる1987年ブラックマンデーの下げ幅3836円を大幅に上回る4451円も下げ、3万1458円の終値をつけた。
Xでは、一時トレンドが「株価暴落」「バブル崩壊」「追証祭り」といった投資関連のワードで埋め尽くされ、多くの人が悲痛の声を上げた。4年前から株式投資をはじめたお笑いコンビ・東京ダイナマイトの松田大輔さんも、その一人。
驚くことに、大暴落を受けるのは今回で2回目。しかし、投資をやめることはないという。松田さんが投資を続ける理由とは?(※株価は取材があった8月5日時点)
◆実は2回目の大暴落
――こんな歴史的大暴落の日に取材をお願いしてすみません……。心境のほうはいかがですか?
松田大輔(以下、松田): いや本当、なんで今日なんですか?って感じですが、色々吐き出せるんで、反対に良かったのかなとも思います(苦笑)。実は僕、これで大暴落を受けるのは2回目なんですよ。
――投資歴は4年と聞きましたが、今回で2回目!? 1回目はいつだったんでしょうか?
松田:2022年のロシアのウクライナ侵攻の時です。それまではけっこう順調だったんですけどね……。その日は朝からゴルフに行く予定で、ゴルフ場に向かってる最中に何気なく相場を見たら、持ってる株価がめちゃくちゃ下がってて、「戦争でも起こってんのか!?」って思ってたら、本当に起こってました(苦笑)。
昼すぎにゴルフが終わってからは、ずーっと損切りを繰り返して、その日1日だけで180万円くらいのマイナスに……。まぁ、全体でのマイナスではなかったんですが、完全にトラウマですね。
◆大暴落を経験しても投資をやめない
――ロシアとウクライナの戦争で株をやめた人も多いようですが、松田さんは続けられています。やめない理由は?
松田:やっぱり楽しいんで。僕はもともと無趣味だったんで、今は投資が趣味みたいな感じなんですよね。もちろん、一番の魅力は上手くいけば儲かるところで、持ってる銘柄の株価が上がったら単純に嬉しいです。
銘柄を選ぶときは(著名な投資家の)ウォーレン・バフェットの受け売りなんですが、「よくわからないことには手を出さない」ようにしていて、基本的には知ってる会社の株しか買いません。既存サービスの改善に力を入れていたり、新商品を発売したり、日々の営業の仕方に工夫していたりして頑張っていると応援したくなるんですよね。儲ける以上に、会社を応援したり、成長を見守ったりすることが楽しいんだと思います。
◆元手30万円が300万円になった1年目
――株式投資をはじめたきっかけを教えてください。
松田:コロナが流行り出した頃にはじめました。当時、結婚をして子どもも生まれたんで、保険の見直しの相談をする中で、投資の話題になったんです。面白そうだったんで、証券口座の開き方からいろいろ教えてもらってから、はじめました。
最初に買ったのはNTTドコモです。株式投資は、調べれば調べるほどギャンブルの要素を減らしていけると教えてもらいましたが、その頃はまだ投資をしっかり理解していたわけじゃなかったので、普段から使ってる会社にしようくらいの気持ちで買いました。
そうしたら、1週間後くらいにドコモが親会社の日本電信電話(NTT)にTOB(株式公開買い付け)されて、株価が一気に1.5~2倍になったんです。何にもしてないのに。そこから他の株も買うようになりました。
――どんな株を買ったんですか?
松田:西松屋、川崎汽船とか。西松屋には、よくベビー用品を買いに行っていたんで、優待券が欲しかったというのもあります。でも、店内の照明を必要最低限にしていたり、商品取り棒を置いて、高い棚に陳列されてる商品をお客さんが取れるようにして、販管費や従業員数を抑えてたりしているのを実際に見ていて、純粋にいい会社だなと思ったのが決め手です。
川崎汽船のほうは、コロナが流行り出してから海運業界の業績が全体的に上がっていたんで。こちらの株価も2倍くらいになりました。その後も、買う株が次々に値上がりしていって、1年目はめちゃくちゃ調子がよかったですね。元手30万円が、1年後には300万円になってました。
いま振り返ると、その頃はコロナの影響で業界に関係なく全体的に株価が下がっていたから、どの株も上がりやすい状況だったんですよね。
◆雑誌、YouTube、芸人仲間…参考になったのは?
――当時は、どんな運用スタイルだったのですか?
松田:個別株を常時5社ぐらい持っていました。雑誌やYouTubeで勉強しつつ、元芸人で投資家の井村(俊哉)くんや、少し前に株式投資をはじめたハニートラップ梅木とかに相談もしました。
彼らに言われた「ファンダメンタルズ分析かテクニカル分析の両方で銘柄を選ぶのは難しいから、どっちかにしたほうがいい」というのは、参考になりましたね。昔、テクニカル分析で株を買って何十万か負けたこともあったんで、これを聞いて「自分はテクニカル分析に向いていないんだな」とスッパリ諦められました。
僕なりの考えですが、例えば飲食店の株を買おうと思ったら、実際にお店に行って料理を食べたり、お客さんの入り具合とかを自分の目で見たりしたほうが、安心して買えると思うんですよね。そこには、数字からは見えないリアルがあるんで。
どこにある会社で何をしているのかを知っていれば、今回みたいに大きく株価が落ちてしまった場合でも、激しく動揺することはないと思うんです。
◆追証に心の平穏をなくした過去も
――それで、今も落ち着いていらっしゃるんですね。
松田:内心では、めちゃくちゃ焦ってますよ。一部信用取引もしてるんで。でも、資産運用の基本は余剰資金を使うことなんで、その許容範囲内で取引するようにしてますし、信用取引でもあまりレバレッジをかけていません。
僕みたいなやり方だと、儲けもそれほど大きくはありませんが、株を楽しむということで言ったら、間違っていないかなと思っています。手元資金がゼロになった時に出せる余裕がないと、精神的にめちゃくちゃ追い込まれますしね。
――「追証」になったらって思うと怖いですしね。
松田:一度、追証メールをもらったことがあります。タイトルを見ただけでブワって冷や汗が出てきて、本当にめちゃくちゃ焦りました。まぁ、そんなに掛けてなかったんで、数万円程度でしたが(苦笑)。
そうやって、普段から負けない投資を意識してるんですが、この数日間は負けっぱなしで、マジでヤバいですね……。ぶっちゃけ、今日の夜あたりに追証メールが来るかもしれないです。
<取材・文/安倍川モチ子 撮影/川戸健治>
【松田大輔】
吉本興業所属。2001年、ハチミツ二郎と東京ダイナマイトを結成。「M-1グランプリ」や「THE MANZAI」のファイナリストでもある実力派コンビ。最近では、俳優としても活動しており、舞台を中心に活動している
【安倍川モチ子】
東京在住のフリーライター。 お笑い、歴史、グルメ、美容・健康など、専門を作らずに興味の惹かれるまま幅広いジャンルで活動中。X(旧Twitter):@mochico_abekawa