スマホがある生活がスタンダードとなった現代人は、情報の波にのまれマルチタスクばかりをこなしている。そんな多忙なマインドと心をリセットできると話題の瞑想とは? 俳優のMEGUMIさんや高橋メアリージュンさんも通う瞑想スタジオ『suwaru』でニーマルメソッド®認定講師として活躍する篠田るみさんに、瞑想が仕事や人間関係に影響を与える理由や、瞑想を習慣化するコツについて深掘りした。
瞑想は「脳のトレーニング」
──瞑想はいつごろ生まれたものなのですか? 瞑想の歴史について教えてください。
瞑想は、人類が生まれた時からあるものだと言われています。と言うのも、瞑想とは「状態」のことなんです。
「五感がシャットダウンされて意識が内側に向いている。今、この瞬間に気がついている」状態です。
これは胎児がお母さんのお腹の中にいる時と同じだと言われています。五感はないけれど、意識はもう芽生えていて、とても穏やかな状態です。歴史的に残っている文献の話で言うと、5000年前のインド・ネパール地域で発祥したとも言われています。
今から約5000年前に書かれたヴェーダ思想の教典に瞑想のことが記されており、約2500年前に、ブッダが瞑想を練習し仏教とともに広め始めたという歴史があります。日本では平安時代のころに伝わり、中世以降は「禅」という形で広まっていきました。
そして1970年代にマサチューセッツ大学のジョン・カバット・ジン博士が、西洋医療に瞑想を取り入れました。それまで瞑想は宗教やスピリチュアルに近いイメージを持つ人が多かったのですが、実際に医療の臨床に取り入れたことで効果が科学的に実証され、宗教とは切り離されてツールとして活用され始めました。
──近年はスポーツ選手やヨガ愛好者だけでなく、ビジネスパーソンでも瞑想に関心を寄せている人が増えていますね。
2000年代にアメリカの大手IT企業のグーグル社が、ストレス低減と人材能力開発のために社内で瞑想のプログラムを開発しました。同じくアメリカの大手IT企業アップル社の創業者であるスティーブ・ジョブズも、瞑想の愛好家と言われていますね。そういった認知が広まって、アメリカで瞑想に興味を持つ方が増え、日本にも広まってきたのだと思います。
──ヨガのクラスで瞑想も行っているところもあります。ヨガと瞑想のつながりとは?
本来、ヨガのゴールは瞑想なんです。ヨガというと、運動やボディメイクの一環として思われていますが、それはポーズをとって体を整えるところだけが切り離されて見られているに過ぎません。瞑想を実践するための準備段階として、エネルギーの流れを整えるヨガのポーズがあります。段階を踏んでヨガをすることで、瞑想をしやすい体にしていきます。
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「マインドフルネス」と「瞑想」は似て非なるもの
──「マインドフルネス」と「瞑想」は同意語で語られることもありますが、同じものなのでしょうか?
マインドフルネスと瞑想は、似ていますが別物です。両方に共通するのは「今、この瞬間に集中している状態」ということですね。
マインドフルネスは五感をしっかり使って、「自分が今やっていることや、今起こっていることに集中している状態」のことを言います。例えば、お茶を飲む、コーヒーを飲む、ご飯を食べる、歩く、本を読む、などですね。食べながら別のこと考えていたら、それはマインドフルネスではありません。食べることや食材に意識を集中して、味覚や感触を味わいながら食べていたら、マインドフルネスになります。
一方の瞑想は、五感をシャットダウンさせて、完全に「意識が内側に向いている状態」です。集中する対象が、外側ではなく内側にあります。内側というのは、呼吸やイメージのこと。例えば、ハートの中心に光をイメージして、そこに意識を集中させていく方法もあります。
──なるほど、意識が外に向くか内に向くかで変わってくるんですね。瞑想で内に意識を向けると、どういったメリットが得られますか?
情報社会の今、脳は目から入ってくるたくさんの情報を処理することに大忙しです。常に高速回転で「これは必要なのか」「これはいらないのか」判断して、常に五感が外を向いています。例えば、スーパーにお醤油ひとつ買いに行くだけでもいろんな種類があって、それぞれの商品のデータ処理をして、脳は無意識に疲れきっています。
そうやって忙しい日々を過ごしていると、無意識のうちに常に何かを考えることが「クセ」になってしまうんです。しかし、考え続けて脳を酷使していると、疲れやストレスの原因となって心身に表れてきます。瞑想によって考えることを止めて脳を休ませる習慣を作ると、「ストレスを感じづらい脳」に変容していくのです。そうなると集中力が高まり、脳疲労も軽減されていきます。
──目をつむって内側に意識を向けると、どうしてもあれこれ余計なことを考えてしまいそうなんですが……
「何も考えないようにしよう」と思うと、考えてしまうもの。「考えない」とか「無になろう」とすることは手放しましょう。はじめのうちは、呼吸に集中する時間と考えてみるといいかもしれません。呼吸の流れをひとつひとつフォーカスしていると、次第に呼吸の心地良さや今この瞬間を味わえるようになり、雑念は浮かびにくくなりますよ。
私も個人で練習するとき1時間近く座ることもあるのですが、それでも雑念がある日はあります。そういう時は、雑念になりがちな「その日のto do」など後で考えることリストを作って一旦整理しますね。最初は雑念があっても大丈夫。必ずできるようになります。