音楽監督はユン・サン氏

以前のインタビューにてチョン監督は、脚本や演出だけでなく全ての設計を監督が担うという点がホラー映画の醍醐味だとコメントしています。

本作でも音楽制作に力を入れており、音楽監督として韓国を代表する作曲家のユン・サン氏を招きました。

いつもは脚本執筆時点で音楽設計も行うというチョン監督ですが、本作においては撮影が始まってからも音楽監督が決まっていなかったそうです。

そんな中、撮影に向かう車内で普段から聞いていたユン・サン氏作曲の『Running』が偶然流れたことをきっかけに、ユン・サン氏を起用したいと考えました。

ユン・サン氏もチョン監督のデビュー作『1942奇談』のファンだということでオファーを快諾したといいます。

ユン・サン氏について、チョン監督は「説明以上の結果を出してくれた」と評価しています。

それでも楽曲選びは難しかったそうで、特に頭を悩ませたのはチャプター2。

白黒ディズニー映画というコンセプトに合う楽曲は中々見つからず、最終的にセルゲイ・プロコフィエフの『ピーターと狼』が採択されました。

その他にも、本作では人気アイドルグループRIIZEのANTON氏を始めに、ユン・サン氏の友人ミュージシャンとして豪華な面々が参加しています。

(広告の後にも続きます)

「ニューノーマル」撮影中の裏話

さらに、チョン監督は本編では知ることの出来ない撮影の裏側について聞かせてくれました。

チャプター2の終盤で訪れる老朽化した建物について、監督は「狐の巣窟」と呼びながら「中々相応しいロケ地が見つからなかった」と話します。

そこでプロデューサーが本編で使用したロケ地を提案し、チョン監督もそこを気に入ったのですが、床が欠損していたり演出に必要なエレベーターや壁が無いという難点が。

そこでスタッフ陣で床の修復やエレベーターの取り付け、動線の作成を行い、撮影に挑んだそうです。

その後の編集も含め、「非常に大変だったけれども楽しかった」と監督は笑顔で語りました。

また、同じくチャプター2におけるクライマックスのシーンにて、主人公を騙すために話題に出されたポメラニアンの子犬が本当に登場するという演出があります。

監督は子犬について、「周りのスタッフから必要無いのにと疑問に思われたが、私の映画では誰もが予想できないことが起きる。

映画を見たお客さん達が子犬の登場によってシリアスなシーンでもクスッと笑うのを見て、自分の判断は正しかったのだと思った」と振り返りました。

最後に、本作の見どころについて、チョン監督は「日本でも有名な俳優たちの演技とユン・サンの音楽、そしてビジュアルや編集がどのようにサスペンスを作りあげているのか、そしてその中にユーモアがあること」の2点だとコメントしました。

孤立によって若者の自殺や異常犯罪が増加する「ニューノーマル」な社会。

そこに生きる私たちは、本作の登場人物とそう遠くない位置に居るのではないでしょうか。

映画が社会を揺るがす力について、チョン監督は「まずは観客の反応がメディアを動かし、メディアが行政機関を動かし、社会が変わっていく」と説明しました。

観客であるあなたがスクリーンを通して自分自身に巣食う闇を覗いた時、鈍痛に慣れつつある社会は僅かに目を覚ますのかもしれません。

是非、この夏は劇場でホラーの常識を塗り替える「新しい」恐怖を味わってみてください。