「別れよう」“海外旅行当日”に告げられて…空港で独りになった男の顛末

 恋人や友人と旅行する際、基本的には出発地から同じ飛行機や新幹線に乗って目的地に向かうが、お互い同じ地域に住んでいるとは限らない。そのため、遠方に住んでいる者同士が旅行する場合は、現地集合にしたほうが効率的。そのような形で旅行をした経験を持つ人もいるはずだ。

 今から7年前、食品メーカー社員の藤代宏太さん(仮名・36歳)は、交際中だった2歳下の恋人と2泊3日の台湾旅行を計画。ただし、当時彼は大阪の支社勤務で、都内在住の彼女とは遠距離恋愛中。どちらかが東京、または大阪に来るのは金銭的にも時間的にも効率が悪いと判断し、台北で現地集合することにしたという。

◆いつも通りの“現地集合”で旅行を楽しむはずだった

「私が大阪に転勤になってからも沖縄や北海道を旅行しましたが、そのときも現地集合。2人で海外に行くのは初めてでしたけど、現地集合に関しては慣れていたし、彼女は友達と何度か台湾旅行の経験もありました。だから、特に不安などは感じませんでした」

 飛行機はそれぞれ自分で手配し、ホテルは彼が外資系旅行サイトで予約。藤代さんは台北から約40㎞西にある桃園国際空港、彼女は台北市内にある台北松山空港の到着予定の便だったため、ホテルで合流する予定にしていた。

 ところが、出発当日に予想外の事態が。関西空港に向かう途中、彼女から《今日の旅行の件で大事な話があるの。いま電話していい?》というLINEが届く。この時、電車に乗っていたため、空港到着後に改めてメッセージを送ると、すぐに彼女から電話が。

◆空港到着後、彼女からまさかの別れ話

 でも、着信ボタンを押した直後、告げられたのは「ごめんなさい。好きな人ができたから別れてください」の一言。早く言わなきゃと思いつつもなかなか言い出すことができず、出発間際のこのタイミングになってしまったと何度も謝ってきたそうだ。

「おそらく飛行機の予約すらしてなかったんでしょうね。よくよく考えてみると、この旅行のしばらく前からLINEのレスが遅くなり、翌日に返信が来ることも多かったんです。

 彼女は『最近忙しくて……』『疲れて帰ってきたらそのまま寝ちゃった』と話していましたが、私は何の疑いも抱かずにそれを信じてました。でも、本当は新しい男と一緒だったから放置されたんだろうなって」

◆一人で楽しむしかない!


 普通なら文句のひとつでも言いたくなる状況だが、藤代さんは「わかった」とだけ話すと通話を切ってしまう。この時の心境について次のように振り返る。

「怒りの感情がないといえばウソになりますが、それ以上に気持ちが一気に冷めてしまったんです。これ以上、彼女の言い訳を聞くのは時間の無駄にしか思えなかったし、すでに搭乗手続きは始まっていました。

 本当はキャンセルという選択肢もあったと思いますが、当日だと1円も戻ってこないじゃないですか。だったら1人でも楽しんでやろうって」

◆台湾名物の夜市で深酒し、ホテルのトイレで吐きながら号泣!

 そもそも台湾旅行は彼女のリクエストによるもの。そのため、特に思い入れなどはなかったが、泊まったホテルの近くにあった台北最大の夜市『士林夜市』は気に入り、初日も2日目もいろんな店を食べ歩いたとのこと。

 だが、2日目の晩は、台湾名物の金牌ビールや紹興酒のソーダ割りを覚えているだけで10杯以上飲んでしまう。記憶が飛ぶことはなかったが、部屋に戻った後はトイレで吐いてしまいそのまま号泣。

 いくら冷めたとは言っても前日一方的に別れを告げられたばかり。気持ちの整理はできていなかったようだ。

◆彼女のことをリセットできた状態で帰国


「飲んでいるうちに忘れようとしていたのに彼女のことを思い出しちゃって。しかも、部屋に戻った後で周りには誰もいなかったこと、それとリバースしたことで感情とかグチャグチャになっちゃったんです。

 それでも思い切り泣いたおかげか帰国後は彼女のことを引きずることはありませんでした。旅行最終日は二日酔いで頭が痛くて体調は最悪でしたけどね(苦笑)」

 結果的には振られた数時間後には傷心旅行で機上の人となり、いい意味で彼女とのことをリセットできた藤代さん。しかし、未だにモヤモヤしていることもあると明かす。

◆彼が立て替えたホテル代を彼女は払ってくれず……

「ホテル代です。私がとりあえず立て替える形で2人をカードで決済したのですが、代金は貰っていません。1泊1人1万5000円のホテルだったから2泊で3万円。

 せこいと思われるのも嫌なのでこちらから連絡はしませんでした。今となっては確信犯か単に忘れていただけなのか知る術はありませんが、ここはちゃんとしてほしかったですね」

 実際、このケースのように旅行の予約を済ませた状態で破局を迎えることもあるだろう。特に出発日が迫ってくるとキャンセル料は段階的に高くなる。両者合意の上で申し込んだ以上、せめて自分のキャンセル料くらいはきちんと払ってほしいものだ。

<TEXT/トシタカマサ>

―[台無しになった旅行]―

【トシタカマサ】

ビジネスや旅行、サブカルなど幅広いジャンルを扱うフリーライター。リサーチャーとしても活動しており、大好物は一般男女のスカッと話やトンデモエピソード。4年前から東京と地方の二拠点生活を満喫中。