いざという時に私たちの生活を支えてくれる「生命保険」。生命保険の中には定期保険や収入保障保険といった「死亡保険」、病気やけがを保障する「医療保険」、がんを保障する「がん保険」などさまざまなタイプがあります。しかし、そもそもこうした保険は絶対に必要なのなのか、数多くの種類の中でどれを選ぶべきか、よくわからないという人も多いのではないでしょうか。本記事では、ファイナンシャルプランナー菱田雅生氏の著書、『お金のトリセツ100』(経済法令研究会)の中から一部を抜粋・編集し、どの保険にいつから入るべきかなど、知っておくべき保険加入のポイントについて解説します。

社会人になったら生命保険に入るべき?

若いうちに入ったほうがトクとは言い切れない

社会人になると、生命保険の勧誘を受ける機会が増えると思います。「若いうちに入ったほうが保険料は安いのよ!」などと言われ、すすめられるがまま加入してしまった人もいるかもしれません。

確かに、若いうちに入れば月々の保険料は安いのですが、その分長期間支払うので、トータルの保険料は高くなることが多いのです。一概にトクとは言い切れません。

若い人ほど保険よりも貯金

そもそも保険の仕組みは、助け合いです。みんなで保険料を支払って、万が一のことが起きた人に保険金を支払います。その仕組みを運営しているのが保険会社です。

当然、保険会社も運営コストがかかりますから、確率を計算すれば加入者は損をします。もし保険会社が損をするようにできていたら、保険会社は皆つぶれてしまいます。

万が一の保障がそれほど必要ない若い人ほど、まずは貯金を増やしておくのがよいでしょう。不測の事態が起きても、貯金でなんとかなるなら、保険はいらないからです。

生命保険はいつから必要?

死亡保障は、子どもが生まれてから考えればよいでしょう。独身や、結婚しても子どもがいないなら、亡くなっても金銭的には困らないからです。金銭的に困る人がいるなら加入を検討すべきですが、困る人がいないなら必要ありません。

なお、死亡保障を考える際には、遺族年金などの公的な保障も考慮すべきです。また、医療保険やがん保険についても、公的医療保険(健康保険)の給付では不足する部分がどの程度かを考慮して、加入すべきかどうかを検討することが重要です。

[図表1]代表的な生命保険商品の種類

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医療保険、がん保険はいつから加入すべき?

健康保険だけで十分?

病気やケガによる入院、手術などに備えるのが医療保険です。単体で加入していなくても、生命保険の特約として付けている人も多いことでしょう。

しかし、高額療養費制度によって、月100万円の医療費でも自己負担は9万円程度と、それほど大きな金額にはならないのが一般的です。最近の医療保険では長期入院を保障するタイプもありますが、長期入院になる病気はそれほど多くないことがわかります(図表2)。

[図表2]傷病、性別、年齢別の平均入院日数

長期入院や無収入が心配なら加入する

誰しも、長期入院の可能性はゼロではありません。また、自営業やフリーランスの人などは、入院中は無収入になる可能性があります。そのため、長期入院や無収入が心配なら、医療保険や所得補償保険等の加入を検討しましょう。

それから、個室で快適な入院生活を送りたい人も、差額ベッド代に備えて加入を検討してもよいかもしれません。

日本人の死亡率トップはがん

国立がん研究センターの2022年のデータによると、日本人ががんで死亡する確率は男性25.1%、女性17.5%。そして、日本人が一生のうちにがんと診断される確率(2019年)は、男性65.5%、女性51.2%だったようです。

つまり、日本人の2人のうち1人はがんと診断され、4、5人に1人はがんで亡くなるということです。少しずつがんも治る病気になってきてはいますが、依然として日本人の死亡率のトップはがんとなっています。

それなら、がん保険は絶対に入っておくべきだと思うかもしれませんが、実はそうとも限りません。健康保険の使える治療や投薬で済むなら、自己負担は重くはならないからです。

ただし、先進医療などを利用すると自己負担は高額になる可能性があります。やはり、心配なのであれば加入しておくとよいでしょう。また、女性の場合は乳がんにかかるピークの年齢が40代であり、男性よりも若くしてがんになる可能性があります。その点も考慮に入れて検討するとよいでしょう(図表3)。

[図表3]年齢階級別、罹患率 (出所)国立がん研究センターがん対策情報センター Webサイト「がん情報サービス」より作成

菱田 雅生
ライフアセットコンサルティング株式会社 代表取締役
ファイナンシャルプランナー