取り分が大きく偏った遺言書が遺されていた…
先ほど解説したように、実際の遺産分割は必ずしも法定相続分どおりに行う必要はありません。相続人が配偶者と長男、二男の3名であっても、「長男が全財産を相続する」というような偏った遺産分割をすることも可能です。
しかし、一定の場合には基本に立ち返り、法定相続分を基準として遺産をわけることとなります。最後に、法定相続分をベースとして遺産分割をすべきケースを2つ紹介します。
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法定相続分をベースに遺産分割をすべき主な場面
相続人間に争いがある場合
1つ目は、相続人間に遺産分割に関する争いがある場合です。相続人間に争いがあり遺産分割協議がまとまらない場合は、遺産分割調停で遺産分割を試みることとなります。
遺産分割調停とは、家庭裁判所の調停委員が当事者双方から交互に意見を聞く形で進行する話し合いの手続きです。遺産分割調停は家庭裁判所で行う手続きであるものの、あくまでも話し合いの手続きであり、成立させるには当事者の合意が必要です。
そして、遺産分割調停が不成立となった場合は、遺産分割審判へと移行します。遺産分割審判とは、家庭裁判所に遺産のわけ方を決めてもらう手続きです。
この遺産分割審判は法定相続分をベースとし、そのうえで法律上明確な根拠のある特別受益(生前贈与などの加味)や寄与分(被相続人の遺産への貢献の加味)などを加減算して行われることとなります。
相続人の中に認知症の者がいる場合
2つ目は、相続人の中に認知症の人がいる場合です。認知症の度合いにもよりますが、認知症の相続人は原則として自分で遺産分割協議に参加ができません。自分で協議に参加してしまうと、よくわからないままに不利な内容に同意してしまうおそれがあるためです。
そこで、相続人の中に認知症の人がいる場合は原則として成年後見人の選任が必要となり、成年後見人が本人に代わって遺産分割協議に参加することとなります。成年後見人は認知症である本人の権利義務の保護を職務としており、法定相続分の確保を求めることが原則です。そのため、相続人の中に認知症など成年後見人が付いている者がいる場合、その者については法定相続分を確保する必要があります。