2024年5月から6月にかけて、X(旧:Twitter)上で「#デカ女ブーム」というワードが突如流行し、連日トレンド入りする事態になった。これまでも“界隈”で一定の人気を集めてきた高身長の女性たちだが、その日常生活とは一体どのようなものなのか? “高身長モデル”として活動している原島彩さん(184センチ)に、当事者目線で実生活での「あるある」や、ならではの「悩み」を語ってもらった。
◆「高身長一家」に生まれたバリバリの日本人
――原島さんは現在どんな活動をされているんですか?
原島彩(以下、原島):大学で化学系の学部を卒業し、製薬関係の会社を数年で退職して、現在は芸能事務所の養成所でモデルを目指しています。
――私調べだと、SNSで自ら情報発信している高身長女性の界隈でも184センチという身長はトップクラスの高身長だと思われます。もちろんアスリートや海外の方を除けばという話ですが、原島さんのご家族は日本人ですか?
原島:祖父母も含めてバリバリの日本人です。東京出身の高身長一家で父と兄が180センチを超えていて。母も170センチ弱あります。父方も母方も家系的に高身長の遺伝子はあるみたいです。
◆バスケの試合で「3人に張りつかれる」
――ご家族の中でも一番の高身長なんですね。何かスポーツをやられていたとか?
原島:小中高と女子校で、小学校から高3で引退するまでバスケをやっていました。2歳ぐらいから身長が伸び始めたらしく、小学校を卒業する時点で170センチを超え、中学の3年間でさらに10センチ伸びたという感じです。もちろん背は学校で一番高かったです。
――ポジションはセンターですか。
原島:それしか選択肢はなかったですね(笑)。一応レギュラーでしたが、あまり運動は得意なほうではないです。1回だけ運よく勝ち上がってインターハイ常連校と試合したとき、3人に張り付かれて。それがちょっと嬉しかった思い出があります。高校まで私立の一貫校でずっと制服でしたが、制服の買い替えとかも大変で、通学の時は周りの視線がつらかったです。制服を着て、ランドセルを背負っていたので。
――170センチのランドセル姿は違和感あったでしょうね。コスプレ感があるというか。
原島:当時は通学が一番イヤでした。登下校中は一人でいると、すれ違いざまに同年代の男子グループとかに「あいつめっちゃデカい」「お前、身長比べてこいよ」とか言われて、傷つくことも少なくなかったです。
◆映画館で小学生と信じてもらえず…
――やはり街中で目立つのは苦痛ですか?
原島:高校くらいまではとくに苦手でした。ジロジロ見られることにも慣れていなかったし、学生の頃は目立ってもあまり良いことがないというか。先生からもすぐ目つけられて、私だけ叱られるみたいなことも多くて……。見た目の印象で同級生よりもお姉さん扱いされ、いちいち丁寧に教えたり説明したりしなくても何でもできると思われがちなのもイヤでした。結果的に失敗したり怒られたりすることが多かったです。
――変な話、小6の時点で酒やタバコを年確なしで買えそうですね。
原島:小学生のとき、友達と映画館に行って私だけ「年齢証明できるものありますか?」と言われたことがありましたね。私立で学生証があったからよかったんですけど、学生証がなかったらどうなっていたんだろうなと。ただ、周りの同級生からは「かっこいい」「モデルみたい」と言ってくれることも多く、身長のせいで人間関係に悩むようなことはなかったです。
◆男性のほうが身長にコンプレックスがある人が多い?
――身長が高いことに対して男性と女性で反応は違いますか?
原島:身長にコンプレックスを感じている方が女性よりも多いからか、男性からはけっこう引かれてしまって、積極的に話かけられないパターンも多いです。大学ではビリヤードとテニスのサークルに入っていて、そこで男性と話すことも増えたんですけど、飲みの席でトゲのあるイジり方をしてくる人も中にはいたというか。
――理系だと女性が少ない学部もやはり多いでしょうし、余計に目立ちそうな。
原島:専攻で100人ぐらい同期がいたんですけど、その中でも一番背が高く、目立っていました。でも大学生になってからは、そこまで周りの目を気にすることも少なくなりましたね。居酒屋でバイトをしていたんですが、やっぱり大学生くらいになると、個性的でキャラの濃い人にもたくさん出会うようになったので。
◆175センチを超えると、洋服の選択肢が一気に狭まってしまう
――モデルとして活動を始めたのは、社会人も経験していろいろ吹っ切れたからという感じですか?
原島:それはあると思います。やっぱりずっとどこかで、この身長を活かした活動をしてみたいという気持ちはありました。
――高身長女性モデルって確かに需要ありそうな気もしますが。
原島:ひと昔前と比べても身長の高い女性って表立って増えている印象はあります。最近はけっこう女性でも170センチ前後なら洋服の選択肢もありますね。ユニクロなどでも丈の長いネット限定の商品などもあるので。
――編集・Y氏(170センチ)と並ぶと腰の位置が大変なことになっていますが……。
原島:私の場合は股下80センチぐらいのパンツがギリギリのラインですね。ユニクロは長くても股下74〜76センチという感じで、身長が175センチを超えると選択肢が一気に狭まります。特に大変なのはボトムス選びで、私はZARAを愛用しています。いま履いているデニムもそうですね。足のサイズも25.5〜26センチあって靴選びもその辺の量販店では難しいです。
◆ヒールを履くと「電車に屈んで乗車する」
――普段、ヒールは履きます?
原島:まず履かないです。ヒール履くと電車も屈んで乗車することになるので。日常生活で頭や手足をぶつけるのは日常茶飯事です。父や兄も自宅のドア枠や鴨居によく頭をぶつけていました。
――SNSを見ると海外にもよく行かれているようですが、原島さんは海外の女性と比べても身長高いほうなのでは?
原島:そうですね。ただ、欧米だと身長や体格も全体的に大きいし、いろんな見た目の人がいるから、日本より周りの視線を感じることは少ないです。日本だと無言で三度見ぐらいする人も本当にいるんですけど、海外では気さくに声を掛けてくれることも多く、海外旅行は好きです。
――また日本人に生まれ変わるなら普通の身長がいいですか?
原島:目立たない普通の生活がしたい気持ちも正直あります。でも、どうですかね。大人になると目立つことのメリットもあるので。冨永愛さんのようなカッコいい女性モデルを目指して、これからも頑張っていきたいと思っています。
<取材・文/伊藤綾>
【伊藤綾】
1988年生まれ道東出身、大学でミニコミ誌や商業誌のライターに。SPA! やサイゾー、キャリコネニュース、マイナビニュース、東洋経済オンラインなどでも執筆中。いろんな識者のお話をうかがったり、イベントにお邪魔したりするのが好き。毎月1日どこかで誰かと何かしら映画を観て飲む集会を開催。X(旧Twitter):@tsuitachiii