「効率的市場仮説」は2013年にノーベル経済学賞を受賞したファーマ教授が唱えた金融理論の1つで、「市場というのは、現時点で利用可能な情報を織り込み適正な価格をつけている」ということを表す仮説です。これが正しいとすれば、個人投資家があれこれ推測して投資するよりも、市場全体の成長に連動する「インデックス投資」を選択することが最も合理的という考えに至るかもしれません。しかし、本当にこれは正しいといえるのでしょうか? 今回はこのテーマについて株式会社ソーシャルインベストメントの川合氏が解説していきます。
「効率的市場仮説」とは
効率的市場仮説は、1960年代から1970年代にかけておこなわれた、シカゴ大学ブース・ビジネススクールのユージン・ファーマ教授の研究成果です。ファーマ教授は、「現時点での市場価格は利用可能な情報がかなり織り込まれているため、その後の価格変動はランダムであり、合理的に予測することは不可能である」と唱えました。これが、効率的市場仮説です。
「効率的市場」とはつまり、「市場というのは、現時点で利用可能な情報を織り込み適正な価格をつけている」ということを表しているのです。そしてこれを根拠に、株価の変動を予測することをやめ、インデックスファンドに投資をしてそれを保有し続け、市場全体の成長に賭けるほうが合理的だという考えもあります。
しかしこの効率的市場仮説は、ある程度正しい面がありますが、完全に正しいとはいえません。というのもこれはあくまで仮説でありますし、ファーマ教授自身の研究やそれに続く様々な研究も、市場が「完全に」効率的だと実証しているわけではないからです。つまり効率的市場仮説には反例が見出せるということであり、そしてそれを見抜ければ、平均以上の成果を出すことができるのです。
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【反例1】バブルと暴落
その反例となるのはまず、バブルと暴落です。株式市場では、一定期間ごとにバブルや暴落が起きているものですが、ではその短期間に、株価を大きく上げたり下げたりするほどの情報が、市場にもたらされているのでしょうか。いえ、そうではないでしょう。上がるからそれに乗り遅れまいとしてみんなが買いさらに上がってバブルになった、それまで上がりすぎだったのが急にみんなで冷静になり売り始めて暴落した、ということではないでしょうか。
例を挙げると、1980年代後半のバブル景気から1990年代初頭のその崩壊、1990年代後半から2000年代初頭にかけてのITバブルとその崩壊などは、典型的でしょう。市場は完全に効率的ではなく、異常な価格をつけることもあるのです。
そしてそんなバブルと暴落こそが、平均以上の成果を出すチャンスとなります。バブル時には、積極的に買わずに、むしろ売って現金を作っておきましょう。一方、暴落時はバーゲンセールですので、積極的に買い、あとは待てばよいのです。