健康で長生きしたい……誰もが考えるこの願いを叶えてくれるかもしれない成分として、「アルキルレゾルシノール」が注目されています。この「アルキルレゾルシノール」とはいったいなんなのか、『最新科学で発見された 正しい寿命の延ばし方』(総合法令出版)より詳しくみていきましょう。著者で代謝機能研究所所長の今井伸二郎氏が解説します。

長寿遺伝子の機能をアップさせる食品

ザクロや菊よりも健康長寿に有効な「アルキルレゾルシノール」とは

サーチュイン遺伝子※の発現を促進する成分を多く含む食品としては、ブドウ種子、ザクロ、食用菊などがあります。これらの食品素材はいずれも健康長寿に有効な食品であると期待できますが、これらよりももっと期待の高い「アルキルレゾルシノール」とよばれる成分があります。
※サーチュイン遺伝子:老化や寿命の制御に重要な役割を果たすとされる遺伝子のことで、「長寿遺伝子」とも呼ばれている。

サーチュイン遺伝子の発現量をアップする成分ではなく、サーチュイン遺伝子が転写翻訳され産生されるサーチュインタンパク自体に働き、脱アセチル化を促進させる働きが確認された成分です。小麦やライ麦などの穀類の外皮、麦類でいえばふすまといわれる部分に多く含まれています



[図表1] サーチュインの脱アセチル化の反応速度 出典:『最新科学で発見された 正しい寿命の延ばし方』(総合法令出版)より抜粋

[図表1]をご覧ください。サーチュインの脱アセチル化の反応速度を表したものです。横軸は時間を示し、縦軸は反応によりアセチル基が外された量を示しています。自動車の速度のように一定の時間あたりの量を表しています。自動車の場合1時間に移動する距離で表すように、反応速度の場合も一定時間あたりの反応生成物の量で表します。

この図でいえば、横軸あたりのアセチル基が外された量、すなわち傾きで示すことができます。

実線で表した線はアルキルレゾルシノールを添加せずに反応させた場合を、破線で表した線は添加した場合を示しています。

実線よりも破線のほうが、線の傾きが大きいのが分かります。この傾きの違いが、アルキルレゾルシノールにサーチュインの脱アセチル化の促進作用があることを示す証拠です。

この[図表1]でアルキルレゾルシノールに換えてレスベラトロールを添加した場合の線を2本線で表しました。レスベラトロールの場合は実線とほとんど傾きは変わりません。すなわち、レスベラトロールにはサーチュインの脱アセチル化の促進作用がないということです。

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ヒトの細胞を使った実験では?

この実験は動物細胞を用いずに行う、セルフリーとよばれる種類の実験ですが、細胞を用いた実験によっても評価を行いました。その結果が図表2です。
 



[図表2] アセチル基量の測定 出典:『最新科学で発見された 正しい寿命の延ばし方』(総合法令出版)より抜粋

この実験にはヒトの細胞を用いました。細胞には核という部分があります。核の中に遺伝子が格納されています。その遺伝子を安定させて格納する役割を持った物質でヒストンとよばれるタンパク質があります。このヒストンもアセチル化していて、遺伝子の安定化に強く寄与しています。

そこで、細胞にアルキルレゾルシノールやレスベラトロールを添加して培養した後、このヒストンのアセチル基の量を測定してみました。

[図表2]に示すように、アルキルレゾルシノールやレスベラトロールを添加しなかった無添加に比べ、アルキルレゾルシノールを添加したヒストンのアセチル基は減少していました。レスベラトロールを添加した場合も同じようにアセチル基は減少していました。

すなわち、アルキルレゾルシノールもレスベラトロールも、ヒストンの脱アセチル化が促進されたのです。レスベラトロールはセルフリーの実験では脱アセチル化活性が見られなかったのに、細胞では見られたことは、レスベラトロールがサーチュイン遺伝子の遺伝子発現量を増加し、サーチュイン自身の量を増やした結果だと思われます。

この[図表2]で、ヒストンのアセチル基量はアルキルレゾルシノールを添加した場合より、レスベラトロールを添加した場合のほうが減少していることが分かります。