淘汰されない「医は算術」クリニック
開業医の医療というのは基本、出来高制になっています。多くの患者を診て、多くの検査をしたほうが収入は多くなります。
一方で、勤務医は働こうが働くまいが、給料は同じという矛盾があります。勤務医に対しては、これだけ働けば給与加算がこれだけつく、というインセンティブが必要だし、開業医に対しては、検査数の上限などのキャップ制が必要だと私は考えています。
私の知人のさらに知人の内科クリニックでは、生活習慣病で通ってくる患者さんに対して毎回のように採血をするそうです。毎回の採血が必要だとその医師に反論されれば私は一言も返せませんが、そのクリニックでは自動的に採血室へ案内されるそうです。そこにいる看護師は採血係となって朝から採血を延々と繰り返しているそうです。
小児クリニックでは、採血は医師がやりますし、また子どもの採血は極めて難しいので長々と時間がかかることも珍しくありません。子ども一人に採血を行なうだけで診療がストップします。
でも、例の内科クリニックでは医師は何もしなくても採血が自動的に進んでいきますから、患者さんも多く診られて、検査数も増えて、収益はかなり多いのではないでしょうか。
それが本当に患者さんのためになっているのか軽々に論じられませんが、せめて採血をするときはその理由を丁寧に説明してから同意を得るべきではないでしょうか。
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事前に検査の説明をされましたか?
患者である私自身の経験を、検査過剰の例としてあげてみます。数年前に腰の痛みで開業医の整形外科を受診したとき、医者の診察の前に腰のX線撮影をされたことがありました。受付で予診票に「腰が痛い」と書くと、半ば自動的にX線室に回されることになっているのですね。
また、目が充血して何日も続いたため(紹介状を持って)国立病院を受診したら、医師の診察前に視力検査をされました。結局、充血の理由は異物が角膜に刺さっていたことだったので、検査は何の意味もなかったと思いますし、また医師から検査結果の説明はありませんでした。
この病院は、病院の方針として売上を上げることを考えていたのかもしれません。しかし患者の側からすれば、いくら何でもそれはないんじゃないかと思います。私の周囲の患者さんも全員が流れ作業のように視力検査を受けていましたので、私の推測は多分当たっているでしょう。
検査の必要性を事前に丁寧に説明するかどうかで、その医師が診療報酬にこだわっているかどうかが分かるのではないでしょうか。
医師が収益のことを考えてしまう医療機関というのは、ちょっと残念ですよね。患者さんは医者のそういう姿勢を実はちゃんと見抜いています。持続可能で、いい医療を実現するためには、結局、医者は医療報酬のことなど考えないほうがいいと思いますし、患者さんもそういう医療機関を信頼できるでしょう。
患者さんも、「これってクリニック(病院)のカモにされてる?」と思ったときは、別のところに行ったほうがいいかもしれません。しっかりと探せば、いい医療機関はちゃんとありますよ。
開業医は出来高制なので、過剰検査をするクリニックは確かに存在する
事前に検査の説明があるか否かで見極め、疑問を感じたら別の医療機関へ
松永正訓
医師