北海道警・交通指導課は20日、今月6日に北広島市内の道路で普通乗用自動車を運転中、法定速度を115㎞超過する175㎞で走行したアルバイト従業員の男(30歳)を道路交通法違反で逮捕したと発表した。
当時同警がポータブル式のオービス(速度違反取り締まり装置)を使って現場を交通取り締まり中、目の前を男の乗用車が通過。乗用車のナンバーなどをもとに運転手を割り出した。
法定速度の約3倍の猛スピードで国道を走行した男は、調べに対し、「急いで家に帰りたかった」と話し、容疑を認めているという。
現場の北広島市西の里の国道274号線は、約4㎞にわたるほぼ直線道路。路上には「スピードダウンで 事故防止!」との注意喚起の電光掲示も出される要注意エリアだった。
115㎞超えの場合の量刑はどうなる?
115㎞もの速度超過は同警の札幌方面一般道での可搬式オービスを使った取り締まりでは、最大という。かなり悪質と捉えることができるが、量刑はどうなるのか。
まず、最高速度または法定速度を超えて走行した場合、6か月以下の懲役または10万円以下の罰金に処すると定められている(道路交通法118条1号)。 懲役と罰金は、どちらも刑罰(刑事処分)にあたる。
ただし、軽微な交通違反に刑罰を科し、前科をつけるのは望ましい状況といえない。そこで、昭和43年に交通違反通告制度、いわゆる「青切符」が導入され、反則金を徴収する行政処分となった。通常スピード違反は、多くがこの交通違反通告制度で処理され、逮捕されたり、裁判を受けることはない。
今回のケースでは、超加速度があまりに大きく逮捕に至ったと考えられる。
反則点数は超過速度ごとに異なるが上限は50㎞以上まで
原則的に、スピード違反の反則点数は超過の速度ごとに異なるが、50㎞以上が上限で12点となっている。罰則は反則点数のほか、過去に運転免許停止処分を受けた前歴なども影響する。50㎞以上の超過は一発で90日間の免許停止処分だ。一度の前歴なら、免許取り消し1年以上が該当する。罰金は50㎞以上の速度超過では多くが10万円となる。
もっとも、今回のように、大幅な速度超過の場合、罰金ではなく懲役刑が選択されることが多い。略式命令請求では懲役刑を選択できないので、検察官が公判請求を選択し、正式な裁判を受けることになると考えられる。
スピード違反の実状
100㎞超の速度超過にはあきれるばかりだが、警察庁の統計では2023年の速度違反全体の検挙数は88万8500件(違反種類別では全体の16.2%)。その最大のボリュームゾーンは「20㎞以上25㎞未満」で29万2723件(約33%)。50㎞以上の速度超過は1万2508件で全体の約1.4%にとどまっている。
なお、過去の速度超過では、2021年6月に神奈川県川崎市の国道246号線を法定最高速度の時速60㎞を114㎞オーバーした事例、2018年3月に中央高速道上り車線を135㎞オーバーで走行した事例などがある。
スピード違反といえど、100㎞超ともなればより厳罰に処されそうだが、原則的には50㎞以上のくくりであり、ケースによっては懲役刑もあるというのが実状だ。
危険運転も含まれる“高速走行”
一方で、危険運転という視点で、より厳罰に問われる可能性もある。平成26年5月に施行された「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律」(自動車運転死傷処罰法)第2条第2号で、危険運転行為が類型化されている。その中に、「その進行を制御することが困難な高速度で自動車を走行させる行為」が含まれている。
状況によっては大幅な速度違反にこの法令が適用される可能性もあり、そうなれば厳罰に処せられ得る。
ところが、どれだけ高速で走行しても、まっすぐ走れてさえいれば「危険運転」ではないという、信じがたい裁判所の判断が続いているという事実もある。
「高速暴走・危険運転被害者の会」代表顧問弁護士である髙橋正人弁護士は、これについて「法律が縮小解釈されている実態がある」と指摘し、「今のままの法解釈では、たとえば時速300km、500kmで事故を起こしても、そこが直線道路なら『車を制御できている』ということになってしまいます。こんなに常識はずれで、ばかげたことはありません」と憤慨する。
スピード違反が危険な理由は、速度に比例し、運転時の視野が狭まり、判断が鈍ることにある。安全に運転していれば、移動手段として便利な自動車だが、運転者がルールを逸脱した途端、“凶器”にもなり得る。
「早く家に帰りたい」というだけで、115㎞もの速度超過をしてしまうドライバーがいるというのは、ただただ恐怖でしかない…。