育休1年間取得すると保育料が安くなるメリットも


おもちゃで遊ぶ男の子
【画像出典元】「stock.adobe.com/Oksana Kuzmina」

このように育児休暇を取ると、収入は減るものの約8割の手取り収入が確保できます。それによって生活が支えられ、生まれて間もない子どもとかけがえのない時間を過ごせるのは家族にとって大きなことですね。また、復帰後の生活スタイルを整える準備をすることができる貴重な時間ともいえるでしょう。

それ以外にも見落としがちなメリットがあります。職場復帰をする時に子どもを保育所に預けることになりますが、夫婦で育休を取得することで、その保育料が安くなることに繋がります。無償化となる前の3歳未満の保育料は収入によって異なるからです。

前年1月~12月の収入が当年9月~翌8月までの保育料を計算する元になります。正確には、収入を元に算出される「市町村民税の所得割」の額が基準となり保育料が決まります。この所得割は夫婦の分を合算する必要があり、下表のようになっています。

【例)福岡市の保育料(令和6年度)】

図表:福岡市「令和6年度 保育料表」を参照し一部筆者加工

夫婦で育休を取得することで課税対象となる収入(給与等)が減り、区分が下がることによって保育料の負担を抑えられます。例えば、区分D8から区分D7に代わると4万4600円から3万9300円となり、毎月5300円安くなるということです。

いつどのタイミングで育休に入るかによって年収が代わりますが、場合によっては区分Bの保育料ゼロが適用になるケースもあるでしょう。育児休業給付金が非課税であることを見落としていたという夫婦はもう一度確認しておきましょう。

市町村民税の所得割は、毎年6月頃に職場から受け取る「給与所得等に係る市町村民税・都道府県民税 特別徴収額の決定・変更通知書」という横長の書類で確認できます。下記図表の赤枠部分です。

【市町村民税の通知書(見本)】

市町村民税の通知書見本を参照し一部筆者加工

※政令指定都市の場合市町村民税所得割×6/8で保育料を確認します
※ふるさと納税や住宅ローン控除などの税額控除は考慮されないため、その分保育料計算の区分は変わる可能性があります

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夫婦で1年間育休するための生活費はいくらが目安?

ここまで見てきたように、育児休業給付金の支給や税金・社会保険料の負担がないという措置から、手取りは2割減程度に留めることができます。とはいえ、夫婦で1年間育休を取るとなれば、生活費に不安を感じる人も少なくないはずです。そこで、生活費の考え方や注意点を見ていくことにしましょう。

最初に今後の生活設計を立てるためには、今の生活費を知ることが大切です。どういったものにいくら使っているのか費目ごとに書き出してみましょう。これまで家計簿を付けたことがない場合は、家計簿アプリなどあまり負担を感じない方法で確認します。その上で、「子どもの誕生前後で支出がどう変化しそうか」を考えます。

まずは、毎月の支出としておむつ代やミルク代ですね。また部屋で過ごす時間が中心となることや、赤ちゃんが誕生して部屋の温度管理に気を配ったり、細目に着替えさせたりして洗濯物が増えることも想定されます。

例えば、「おむつ代とミルク代がそれぞれ月に1万円かかりそう」とか「光熱水費がこれまで2万円かかっているなら1.5倍の3万円くらいかかるかも」というように費目ごとに試算します。それ以外にも、赤ちゃんの衣類やグッズを月平均1万円分購入するとするなら出産後は月額4万円の負担増ということです。

一方で、夫婦で育休を取ることで減る費目もあります。例えば、昼食代として1日1000円使っていたら、夫婦で月4万円(1000円×20日×2人分)の支出減です。職場の飲み会などの交際費も大きく減るのではないでしょうか。月平均4回分の飲み会が減るなら2万円減(1回5000円×4回)となります。これだけでも合計6万円の支出減ですので、先ほどの育休後負担増の4万円からおつりがくる計算です。

もちろん、自宅での食費は増えますのでその分は考慮しなければなりません。その他には、費用がかさみがちな仕事用の衣類を買うこともなくなりそうです。しばらくは家族での外食も減るでしょうから、子ども中心となることで家計の構成はかなり変わります。夫婦で育休をとっても意外と何とかなるものです。

注意したいのは、育児休業給付金は育休を開始してから申請するため、初回は手続きから2~3カ月後、その後は2カ月ごとに支給されるという点です。つまり、後払いになるため支給されるまでは貯金を取り崩しながら生活しなければなりません。

慌てなくて良いように貯蓄をしておくなど事前に準備しておきましょう。また、手続きは2カ月ごとが原則ですが、毎月申請することも可能です。職場に手間をかけることになり遠慮してしまいがちですが、必要な場合は相談してみましょう。