SNSの匿名性を利用した誹謗中傷で傷ついている人がいます。「表現の自由」は「何を言ってもいい」ということではなく、権利にはかならず責任が伴います。法整備が進む中で、SNS上での過ちを犯さないために、繰り返さないために、上谷さくら弁護士の著書『新おとめ六法』(KADOKAWA)より一部抜粋して、具体的なSNS上の被害の例と対処法について解説します。
事例1:芸能人への誹謗中傷…休業に追い込む結果に
CASE:ある芸能人が嫌いでSNSで誹謗中傷していたら、休業してしまった。
ANSWER:意見を持つことは自由ですが、ネット上の発言は、それを直接本人の前で告げるのと同様の効果があります。「死ね」などという言葉は、言ったのが一人でも深く傷つき、恐怖を覚えるのは当然です。それを1万人から言われたら、耐えられずに精神を病んだり、自死を選んでしまったりすることは容易に想像できます。そのような社会的背景もあり、刑法の侮辱罪が改正され、刑罰が一気に重くなりました。
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解説:「表現の自由」とそれに伴う責任
インターネットは100%自由な場ではない現在、インターネット上では、匿名性を悪用した誹謗中傷などの問題が多数生じており、大きな社会問題となっています。インターネットは手軽に誰でも意見を発信できるという利点があり、時に社会的議論を巻き起こすこともあり、非常に有意義なツールです。したがって、プロバイダは「表現の自由」という重要な憲法上の権利の実現を担っているといえます。しかし、個人がなにを言ってもよいということではありません。そのため、プロバイダが責任を負う場面を制限して明確化する一方で、誹謗中傷などの権利侵害を行った者に責任追及しやすいように、プロバイダ責任法が改正されました。