Ukrainian Presidential Press Office via AP

 ウクライナのウラジーミル・ゼレンスキー大統領は24日、独立記念日の演説で、国産の新型ドローン「パリャヌィツィア」を使用した初の対ロシア攻撃を実施したと発表した。射程は640キロにおよび、ロシアの20ヶ所以上の軍事空港を射程内に収めるという。

◆高速かつ高い機動性

 英テレグラフ紙(8月24日)によるとゼレンスキー氏は、パリャヌィツィアミサイルを「全く新しいクラスの兵器」と表現している。ロシアがウクライナから撤退するまで、ロシア国内の目標を攻撃し続けるとも述べた。

 新ドローン兵器のパリャヌィツィアは、高速かつ高機動性が特徴だという。米ビジネス・インサイダー(8月25日)は、ターボジェットエンジンを搭載し、地上プラットフォームから発射されると報じている。ゼレンスキー氏は、「パリャヌィツィアの生産量は増加し続けるだろう」と述べ、ウクライナの長距離攻撃ドローンの効率性が証明されつつあると強調した。

 ウクライナ英字紙のキーウ・インディペンデント(8月25日)は、開発はわずか1年半で完了したと報じている。製造コストもほかの同類の武器に比べ、大幅に低いとみられる。

◆ロシアの攻撃能力を損なう

 パリャヌィツィアの目的は、ロシアの軍事空港を攻撃し、敵の攻撃能力を損なうことにある。ビジネス・インサイダーによると、ゼレンスキー氏は独立記念日の演説で、「敵の攻撃能力を破壊するために設計された」と述べている。

 テレグラフ紙は、非常に高速で静かに飛行することができるため、ロシアの防空システムを突破する能力があるとの見方を報じている。ロシアの航空機を標的とすることで、ロシアの攻撃能力を削ぐ意図がある模様だ。ゼレンスキー氏は、「これは侵略者に対する新しい報復手段だ」と述べ、開発者たちに感謝の意を表したという。

 パリャヌィツィアは、ロシアのサヴァスレイカ空軍基地やソルツィ空軍基地など、ウクライナ国境から約400マイル(約640キロ)離れた目標を攻撃できるとされている。

 ウクライナ側が公開した動画において、パリャヌィツィアが「2ダース(およそ24ヶ所)のロシア軍用飛行場を攻撃範囲に収めている」と述べられている。

◆自前兵器で越境攻撃を容易に

 テレグラフ紙によるとウクライナ戦略産業省のオレクサンドル・カミシン大臣は、パリャヌィツィアミサイルが初めて使用されたことを認めた。カミシン氏は、「その効果を敵に示す瞬間を待ち望んでいた。ついにその瞬間が訪れた」と述べている。

 ウクライナは、西側から供給された武器を使用してロシアへの越境攻撃を行うことを禁止されている。キーウ・インディペンデント紙は、このような背景から、自国で長距離攻撃ドローンを開発する必要があったと解説する。

 ゼレンスキー大統領は、「ロシアの攻撃を止めるためには、兵器の運搬手段であるロシアの航空機を攻撃することが最も効果的だ」と述べている。ウクライナが自国の防衛力を強化し、ロシアの攻撃を効果的に阻止するため、独自の兵器を開発する必要性があると強調する内容だ。

 これまでウクライナは、西側の兵器を越境攻撃に用いることができず、ほぼ防戦一方だった。自前のドローン兵器の投入で、ロシアの軍事施設への直接攻撃がより容易になるとみられる。